絶滅寸前からセレブの証に? 実は日本が「リアウイング王国」である理由!


 すっかり姿を見なくなったクルマの装備といえば、リアウイングが挙げられる。「暴走族っぽい」とか「オタクっぽい」と、クルマに興味のない層からは嫌われていたリアウイングだったが、はたして本当に今も嫌われているのだろうか。

 最近は風向きが変わり、もしかしたら老若男女にウケているのではないかと、微かな希望を抱いた自動車評論家の清水草一が、現代におけるリアウイングの捉われ方を調査。つい最近、リアウイング付きのBRZを購入した自動車ライター・マリオ高野の証言を交えて、その実情をレポートする。

文/清水草一 写真/清水草一、フォッケウルフ

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■現在吊り下げ式リアウイングを装着する国産車は?

 近年、「リアウイング」を装着したクルマを見かける機会が、めっきり減っている。トランクリッドにボディ一体型のフィンを付けた「リアスポイラー」ならそれほど珍しくないが、ボディから浮き上がった形状の「リアウイング」は、かなりレアな存在だ。

 1990年代の国産スポーツ全盛時代には、スカイラインGT-R、スープラ、GTO、ランエボ、インプレッサWRX、シルビア、インテグラタイプR、シビックタイプRなどなど、ド派手なリアウイングを装着したモデルが豊富だったし、販売台数も今よりはるかに多かった。

立派なリアウイングを装着したR34型スカイラインGT-R。現在の中古車相場は1300万円から3000万円超えの物件もある!

 ただ、初日の出暴走的な違法改造の巨大なリアウイングも目立ち、それによってリアウイングに対する世間一般のイメージは悪化。90年代も後半になると、リアウイングに対する世の中のイメージは、「暴走族っぽい」「オタクっぽい」など、はっきりネガティブなものになった。スポーツカーそのものが、「室内が狭くて不便なクルマ」という評価になってしまったのだ。

 スポーツカーがモテない乗り物になった影響もあり、スポーツモデルの数は徐々に減少。また、ボディ(特に下面)の空力形状の進化によって、スポーツカーにも巨大なリアウイングを装着する必要性が減少。結果的に、リアウイングは激減してしまっている。現在でも生き残っているリアウイング付きの国産車は、以下の通りだ。

■日産 GT-R

 GT-Rはリアウイングの牙城。国産スポーツにおけるリアウイングの象徴的存在と言ってもいい。ただ、現行GT-Rは、R34スカイラインGT-Rのソレに比べると、形状は控え目。洗練されていて、威圧感はほどほどだ。GT-R NISMOは、翼端板を持つレーシィなリアウイングになるが、予約販売台数に達したため、現在はオーダーできない。

■レクサス RC F

 自動格納式の「アクティブリアウイング」が標準装備される。せり出した状態でもボディとの隙間は小さく、リアウング感はいまひとつだが、「格納式」そのものに萌えるカーマニアも多いので、充分価値はある。

 また、「カーボンエクステリアパッケージ」を選択すると、格納式リアウイングがカーボン製になり、さらに「パフォーマンスパッケージ」を選ぶと、いかにも羽根らしく、トランクから支柱で支えられた形の、固定式カーボン製リアウイング(翼端板付き)になる。

■レクサス LC

「Sパッケージ」を選ぶと、RC F同様、トランクの一部がせりあがってウイングになる「アクティブリアウイング」が装備される。

■スバル BRZ

 メーカーオプションにリアウイングはないが、STIパーツには、スワンネック型のドライカーボン製リアスポイラーが用意されている。姉妹車のGR86は「GRトランクスポイラー」までで、リアウイングはナシ。

 なんと、たったのこれだけ! わずか4モデルとは! しかもGT-Rは、来年中の生産終了が噂されている。そうなると3モデルになってしまうし、レクサスの2台は非常にレアで、街で見る機会はほとんどない。

■リアウイングを搭載する新車の今後は?

現行型シビックタイプRにはかなり大型で抑揚のついた動物的デザインのリアウイングが装着されている

 ただし現在、スバル WRXとシビックタイプRが、モデルチェンジの端境期にある。スクープ写真によると、シビックRは確実にリアウイングあり。WRXには、標準では付かないようだが、恐らくオプションでは設定されるだろう。

 8月にアメリカで公開された新型フェアレディZには、リアウイングではなく、リップ型のリアスポイラーが装着されていたが、国内発売後は、NISMO製のリアウイングが登場する可能性はあると見る。

 スープラは、今のところオプションでも「GRトランクスポイラー」が最も派手で、リアウイングはナシ。

 ムキムキマッチョなボディスタイルには、先代80型スープラのようなリアウイングがいかにも似合いそうだが、北米トヨタは、GRスープラ・ヘリテイジエディションに大型リアウイングを取り入れている。今後日本でも設定される可能性があるのではないだろうか。

 ということで、今後4モデルにリアウイングがつく可能性があり、GT-Rを含めれば、瞬間的には合計8モデルになる……かもしれない。

 一方、輸入車はどうかというと、リアウイング装着モデルが非常に希少なことに驚かされる。

■マクラーレン セナ
■ランボルギーニ ウラカンSTO
■ロータス エヴォーラ/エキシージ/3-イレブン
■マスタング シェルビーGT500

■ポルシェ 718ケイマンGT4/911GT3

 典型的なでっかいリアウイングが付くのは、この8車種だけ。フェラーリには現在なし。かつてF40とF50は立派なリアウイングを備えていたが、近年はスペチアーレ(スペシャル限定モデル)のラ フェラーリにもリアウイングは付かなかった。

 あとはコルベット、カマロSS、アウディR8、アウディTT RSに、ボディからわずかに浮いた控え目なリアウイングがあるくらいだ。その他、超少量生産の超高級スーパーカーには存在するが、それらを除くと、海外にはわずか12車種しかない。

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