ガラパゴス化した50ccエンジン版に次期排ガス規制のリミットが迫る
電動ビジネスバイクは今後も順調そうだが、心配なのはガソリンエンジン版の去就と、一般ユーザー向けのコミューターだ。前述のとおり、ガソリンエンジンの原付1種は減少の一途。また大手メーカーによる原1相当の電動バイクで、個人が購入できる製品はヤマハ・Eビーノしかない(2021年11月末現在 リース販売除く)。今後の展望は不透明だ。
まずビジバイを含め、ガソリンエンジンの原1は「生産終了」の可能性があるだろう。その理由の一つとして挙げられるのが2025年に適用予定の次期排ガス規制だ。
規制値が厳しく、重量、搭載スペース、コストなどの兼ね合いで、小排気量車ほど求められる技術レベルが高い。加えて エンジンやマフラーなどの劣化を検知するOBD II(車載式故障診断システム)が義務化されるが、機器は高額。そのため、価格は最低でも「20万円超」になる言われている。
したがって原1へのOBD II導入は国土交通省で再検討中だが、現在、最も安い価格帯の原1スクーターで税込16万円台。導入が決まれば大幅値上げは避けられない。
ネコも杓子も原付スクーターに乗っていた20~30年前に比べ、原付が売れなくなったのは、そもそも1990年代末から激化した排ガス規制対応による高額化が原因。2006年の駐車違反厳罰化と駐車スペース不足のダブルパンチも追い打ちをかけ、販売不振が続く。
また、50ccという排気量はほぼ日本国内独自の規格だ。アジアや欧州、南米では110~125ccが主流で、グローバル展開が可能のため、メーカーとしても大量生産のスケールメリットを出しやすい。一方、日本でガラパゴス化した50ccを継続するメリットが薄くなっている。そんな中、次期規制でさらに値段がアップすれば、エンジンの「原付1種消滅」という事態もありえるだろう。
ラストワンマイルを担うのは電動ボード? 米大手も参入へ
その代替となるコミューターはどうなるのか? 現状では電動キックボードが有力候補の一つだろう。
原1のような「自転車ではツラい数kmの移動」というチョイ乗りのニーズに合致しており、スクーターより駐車スペースを取らない。ただし立ち乗りのため、不安定になりやすいのはデメリットだ(運転には原付免許が必要)。
2021年6月から特定の地域でヘルメット不要のシェアリングサービスに関する実証実験を行っているが、新たに米国のシェア型電動キックボード大手“バード・ライズ”社が日本に参入する。同社は28か国300都市で7万台を提供し、登録者数は1000万人。2021年内にも東京都でサービスを開始し、2025年までに20都市で展開する予定という。
また、ヤマハが3輪(前2+後1輪)立ち乗り電動コミューターの量産化を検討中だ。
電動スクーターは高性能バッテリーなど明るい材料も
もう一つの本命と言える原付相当の個人向け電動スクーターに関しては、海外で普及しているものの、国内ではまだまだ。「航続距離が短い」「インフラが未整備」「充電時間が長い」と課題が多い。
ただし、電動キックボードに比べて走りに安定感があり、さらに長距離向きなのは電動スクーターのメリットだ。
明るい材料としては二つ。まず一つはジャイロキャノピーeで採用されたバッテリー容量のアップだ。従来比で航続距離を1.2倍に伸ばしたした着脱式バッテリーを2個搭載し、1充電当たりの走行距離は時速30km/h走行で65→77kmにアップした。
このバッテリーは、既存のホンダ製電動ビジバイに使用可能なのもメリットだ。
二つ目は、電動バイクに関する社会実験が終了したことだ。自工会では2020年9月から1年間、大阪府および大阪大学と共同で電動バイクの実証実験「eやん OSAKA」を実施。国内バイク4メーカーが2019年に設立した「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」も連携し、大学やコンビニにバッテリー交換ステーションを設置した。シェアリング式の充電済みバッテリーに関する利便性や問題点を洗い出すのが目的だ。
その成果が近々何らかの形で活用されることだろう。
電動キックボードの普及に加え、インフラの整備、魅力的な個人向け電動スクーターの発売が実現されれば、例えガソリンエンジンの原チャリが消滅したとしても、庶民の気軽な足は確保できそう。とはいえ、ラストワンマイルの未来がどうなるのか、もう少し状勢を見守るほかない。
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