20km/h未満の電動ボードは、自転車と原付の中間的存在
なぜ、警察庁はこれらの方針を推し進めるのか。その根拠を探ってみた。
まず前提として、電動キックボードの実証実験と今後予定される法改正は、電動キックボードのシェアリング事業者が経済産業省に要望したことがきっかけ。従来の原付に必要な免許やヘルメットといったハードルを緩和し、経済の振興を狙うもので、これに関係省庁が連携した格好だ。
「免許なし」の根拠は、低速の電動ボードを「自転車」に近い乗り物として見ていることが根拠のようだ。
前述の報告書によると、警察庁では「最高速度に着目」。電動ボードら新モビリティは、定格出力が一般的な原付(0.6kW以下)に近いとは言え、最高速はより低いモデルが多い。そこで「最高速度」に着目して車両区分を定めるのが適当とのこと。今まで「原付」のカテゴリーに無理やり新モビリティを全てを押し込めていたが、これを区別する意味合いがある。
小型低速車は、最高速度が低く制限され、運転操作も一般的な原付と比較して容易と警察庁は分析。免許が必要とは言えないものの、「危険性が必ずしも自転車と同程度であるとは言えず」、自転車のように全く制限を加えないのも「不適当」。海外でも年齢制限を設けている。
そこで出てきたのが「16歳以上」という制限。原付免許は16歳以上から取得できるが、これは「一定の精神的な成熟性を必要としているから」で、電動キックボードほか「小型低速車も同様とすべきである」としている。
実はまだノーヘルは決定事項ではない?
ノーヘルについても、自転車と同等の最高速だから「ヘルメットは不要」と考えられているようだ。
自転車の場合、13歳未満の児童等を保護する努力義務としてヘルメットの着用が定められているが、ご存知のとおり一般への義務付けはナシ。小型低速車が自転車と同等の速度で、同様の場所を通行するなら不要という考えだ。
ただし、報告書では「(有識者会議で)法的に着用することを義務付ける必要まではないのではという意見もあった」との表現に留め、「着用促進を図っていくために、法的義務や啓発の在り方について検討することが求められる」と、ノーヘルが決定事項ではないことを窺わせる。
また、電動ボードの公道実証実験では、「これまでのところ頭部を負傷した事故は自損事故1件のみ」と安全性を強調する。免許のない人は当然、交通ルールを理解していないと思われるが、シェアリング事業者や販売業者がユーザーに対して交通安全教育の実施を求めるという。
電動ならではの速度リミッターで歩道走行が可能に?
さらに、通行帯についても課題が残る。前述のとおり、車道をはじめ、自転車専用通行帯や路側帯、歩道まで通行可能なのだ。
歩道の通行は、有識者検討会でも賛否両論があったが「歩行者の通行の安全を確保するための空間であり、車両は高速で通行してはならない」という点では一致。また、電動ボードに係る海外の法制度を見ても、多くの国において歩道における通行は禁止されている。
その一方で、モーターを電子制御する電動モデルは速度制限が簡単だ。この特性を活かし、速度を制限できるのであれば「歩道の通行を認める余地はある」という。
これを実現するのが、歩道を走る際の最高速リミッターとそれに連動する表示機能。速度を6-10km/hに制限し、切り替え機能は走行中ではなく、停止時に行う。また、昼夜問わず他の交通者から状態がわかるような表示を検討している。詳細は不明だが、ランプの点灯などで状態を示すのもかもしれない。
コメント
コメントの使い方