■リアルワールドでの100%安全のために必要な要件とは?
話を変えます。今回の発表会で飯島さんが見せてくれたのは、複雑な事故パターンで車両を緊急回避させるという技術。考えて欲しい。今までたくさんの安全技術を見てきたけれど、基本的には「危険を感知してブレーキをかけて止まる」という内容。ボルボなど回避操作(路地から出てきた車両を避ける)を取り入れているメーカーもあるけれど、避けた途端に子供が飛び出したら厳しい。
もっと言えば、現在の技術レベルだと斜め前方から飛び込んでくるタイヤや、前方に落ちている障害物(例えば木片など)を避けることだってできない。こういったことをひとつずつクリアしていかないと自動運転は無理ということになります。「レベル3を前提とするのでなく、安全性を高めるため少しずつ進化させていくことが重要」だと飯島さんは言う。そのとおりかもしれない。
今回のデモは複雑な事故パターンの回避能力を見せてくれた。文頭で紹介した「タイヤ転がり」と「路地から出てきたクルマを避けたら子供が出てきた」というパターン。どちらも最初の回避操作でひと安心したところに次の危機がやってくるのだけれど、しっかり停止して事故を回避した。こういった危機が次々と出てきても対応できるという。助手席に座っていると手品を見ているようだ。
以前から私が書いているとおり、手品は「自分でもできるよ」と感じられたら意味なし。まったくわからないうちに事象が進行していることをもって「凄い!」と思う。素晴らしい技術は人間の対応速度より早くないとダメだと私は考えている。今回の日産の技術、手品級に達してます。自分では想定できないし、おそらく対応もできない可能性高い。安全技術、確実にワンステップ進む。
■新世代高性能LiDARの採用で実現できた日産の運転支援技術
日産が一歩進んだ対応ができるのは、世界トップの技術を持つ『ルミナー』社という企業と共同開発している新世代の高性能ライダー(LiDAR)を採用しているためだという。
ライダーの技術を説明しようとすると、「テレビがなぜ写るのか」という説明のごとく長くなる。効能でいえば、レーダーより目標物の形状をしっかり認識できて、カメラより正確な距離を測れるというもの。複数の目標の形状と正確な距離がわかるのだった。
現在実用化されているLiDARより圧倒的に広い探知性能を持っており(左右だけでなく、上下方向もカメラと同等レベル)、前方にひとつ付けるだけで圧倒的な情報量を供給するそうな。
しかもライダーだけでなく、複数のレーダーと複数のカメラも組み合わせ、周囲の空間や物体の形状を正確に把握させている。となれば気になるのがたくさんの情報を処理する制御ユニットの能力だ。
飯島さんに聞いたら、「トランクを開けてみてください」。開けてびっくり! 一部は記憶装置だというが、写真のようにほぼギッシリ。これだけじゃ足りず、リアシートにも! 加えてハイブリッド車の大容量DC=DCコンバーターが供給できる電力だけで足りず、電源まで搭載している! このくらいの計算能力がないと複雑な事故パターンに対応できないのだった。
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