■もはやセダンは絶滅危惧種なのか?
トヨタのHPの全車種ラインアップを見られるページで「セダン」を選択すると、カムリ、カローラ、カローラアクシオ、クラウン、センチュリー、プリウス、プリウスPHV、MIRAIの8車種が出てくる。
このなかでさらに「伝統的なセダンらしいセダン」といえば、現実的にはカムリ、カローラ、クラウンの3択。クラウンがSUVになってしまえばカムリ、カローラだけの2車種になってしまう。
セダンは車両全体に対する開口部の割合が小さいことによる剛性の高さと、それによる振動や騒音の少なさなどメリットも多く、クルマの基本のキだと考える人も少なくない。トヨタのセダンはいずれ滅びる絶滅危惧種なのだろうか。
実はそうではないのではないか、というのが筆者の見立てだ。
アメリカでの自動車販売台数トップの座は、1931年以来90年間GMが独占してきたが、2021年は全米で約230万台を販売したトヨタが約220万台を販売したGMに代わってトップの座についた。
コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱と半導体不足という特殊要因があったことは割り引いて考えなければならないものの、GMの販売台数は前年比マイナス12.9%と落ち込んだのに対し、トヨタはプラスの10.4%となった。
トヨタUSAの営業責任者のボブ・カーター氏によると、トヨタのアメリカでのシェア躍進の原動力の要因としては、他社よりも半導体の確保が上手くいった部分も大きいが、少なからぬ部分は、カローラとカムリ、つまりトヨタのセダンに対する人気の高まりによる、という。
アメリカの自動車市場全体がここ数年でSUVやピックアップトラックに大きくシフトし、競合他社がセダンのモデルを廃止・縮小するなか、慣れ親しんで比較的手に入れやすいセダンに対する人気は特にアジア人・黒人・ヒスパニックの消費者の間で根強く、その需要がトヨタに流れ、トヨタの躍進につながったと分析している。
他社とは違い、トヨタはセダンに「逆張り」しようとしている、とも述べている。
半導体不足のせいで新車が作れず、「クルマがあれば何でも売れる」という状況が解消した後もこの傾向が続くとすると、カムリよりもやや高級だがSUVほど割高ではなく、積載能力も高く室内空間も広い「セダンプラスアルファ」に対するニーズはアメリカ中心に長続きすると考えられる。
国内専売のセダン、というのは絶滅危惧種かもしれないが、海外でも売れるパッケージングに進化したセダンであれば、トヨタほどの生産量を誇るメーカーであればカローラとカムリに加えてもう1車種、セダンプラスアルファ、だけどSUV以下、という利益率の高いクルマを用意しておきたい、と考えてもおかしくない。
新型クラウンのコンセプトの変化に関しては、このような海外の動きもあるのでは、と筆者は勝手ながら深読みしている。
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