■市販車のEJ20は見えないところの進化が凄い
市販用のEJ20は、WRCでも市販車でも真っ向勝負を展開していたランサーエボリューションという宿敵がいなくなってから、スペック面などでは目立った進化を遂げていないようにも見える。
しかし公式に発表されていない部分では、世代ごとにかなりの改良が加えられている。
たとえば現行型WRX STIに搭載れるEJ20は、先代GRB型と比べルト、インタークーラーの冷却効率が劇的に向上。
圧力損失は大幅に減少し、タービンを少し大きくしたのと同様の効果が得られている。ECUの学習機能も新世代のFA/FB型に近いレベルになっており、学習結果を優先して走るほどに最適な状態を探る仕様となっているところにも注目だ。
さらには、性能の個体差バラツキや、熱ダレによる出力の低下幅もかなり少なくなっている。
例えば、シャシダイでのパワー計測を行うと、ほとんどの個体でカタログ数値の308馬力を若干上回る数字となり、計測テストの後半になっても熱ダレによる出力低下があまり見られない。
1世代前のWRX時代と比べると性能と品質の安定感が非常に高いレベルにある。また、かつてはEJ系エンジンの定番トラブルだったエンジンオイル漏れは、GRB(3代目WRX)やBP/BL(4代目レガシィ)の頃から劇的に減少。
ガスケットの質など細部はもかなり改善されているのだ。現状でEJ20が積まれるのはWRX STIのみとなり、生産台数も減っていることから、アプライドD型以降は手組みに近い生産が行われているので、性能と品質の安定感はさらに増している。
レース用は今後もEJ20が使い続けられる見込みながら、市販車ではエミッションの問題をクリアするもの難しく、次世代のWRXには新世代のターボエンジンが搭載される可能性が高い。
いよいよ市販のEJ20は現行型WRX STIで最後となる可能性が高いので、本当の意味で完熟を極めたEJ20を新車で手に入れられるチャンスは残り少なくなった。
市販用のEJ20の退役が近いのは寂しい反面、EJ20は古い個体でもその魅力が存分に味わえる点にも注目だ。
30年に渡り改良を重ねられた結果、昔と今とではほとんど別物というべきものになってはいる。
しかし、たとえば手組みバランス取りが実施されたSTIの限定車では、古い個体でも完調ならいまだに感動レベルのエンジンフィールが味わる。
程度の良い中古車を買ってコンディションを良くすることにお金と時間を費やす価値は高いといえる。
蛇足ながら、筆者が所有する初代WRXの初期A型は25年と20万kmを経た今もエンジン本体は調子がよく、EJ20の美点を味わい続けられている。
EJ20そのものは大量に世に出ているので、近い将来に新車では買えなくなるからといって、まったく悲観しないでも良いだろう。
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