スバルの名機中の名機 死ぬまでに一度は乗りたい 「EJ20」の凄さとは!?


■スーパーGTでも生かされたWRCの経験

 2008年に撤退したWRCと入れ替わるようにして2009年から本格参戦が始まったスーパーGTでは、WRCで使っていたEJ20をレガシィB4のボディに載せたマシンでGT300クラスに参戦。

市販車のイメージからはやや乖離していたが心臓部はれっきとしたEJ20。セダンボディではあったが速さは持っていた

 ラリーでは中低速重視だったのを、レース用では高回転域でのピークパワー重視タイプに調整し直しているなど、もちろんWRC用とは細部はかなり異なる。

 焼き入れの仕方は異なるが、シリンダーブロックは基本的に市販のEJ20と同じだ。スーパーGTでは、2010年には鈴鹿で初優勝、2011年にはシーズン2勝を挙げるなど、レースでもEJ20を搭載するマシンの優位性を実証。

レガシィのドライバーはベストカーでもおなじみの山野哲也選手、そして佐々木孝太選手。2選手のセッティング能力の高さがこの後のBRZに繋がる

 現在のBRZ GT300でも同様、EJ20を搭載するJAF-GTマシンはハンドリング性能の高さを最大の武器としており、コーナリングスピードは常にトップクラス。

 しかし、性能調整が課せられるようになったこともあり、2017年の後半からエンジントラブルでのリタイヤが目立つようになるなど、レース用EJ20は、かつては絶大に高かった信頼性が大幅に低下。

 改良を重ねてきたとはいえ、30年近く前の基本設計ということで、いよいよEJ20も限界説が囁かれるようになっている。

 現状では4kgにもおよぶ異常に高いブースト圧を掛けざるを得ない状況がエンジンブローの原因とされており、それ以外にもEJ20にとって厳しい状況で戦うことが余儀なくされている。

 今のスーパーGTでもエンジンの開発はSTI側が担当しているが、若手ながら優秀でドライバーからの信頼も厚いエンジニアの創意工夫により、エンジンの耐久性低下の問題は徐々に克服されつつある。

ファンからも「EJ20をやめろ」なんていう言葉も飛び交っていた最近のスーパーGTでのスバル。EJ20自体の問題というよりは、ハンディウェイトなどでよりパワーを絞り出すのに苦しんだのが要因だ

 第6戦SUGOでは圧倒的な勝利を納め、EJ20復活を印象づけた。

 ファンとしては、そろそろ新世代の競技用エンジンや6気筒の投入などの対策に期待してしまうところながら、最近のスーパーGTでのエンジン不調は、設計年次の古さというより、性能調整やその他の環境によるところが大きく、STIをはじめチーム内では新世代のFA/FB型への移行が望まれている雰囲気ではない。

 もちろん、次世代の戦うエンジンの開発をやっていないわけではないが、費用的にもマンパワー的にもレース参戦と同時進行で行うのは難しく、まだしばらくは実績のあるEJ20を磨き続けることを重視する方針に変わりはない。

■市販車のEJ20は見えないところの進化が凄い

 市販用のEJ20は、WRCでも市販車でも真っ向勝負を展開していたランサーエボリューションという宿敵がいなくなってから、スペック面などでは目立った進化を遂げていないようにも見える。

 しかし公式に発表されていない部分では、世代ごとにかなりの改良が加えられている。

限定車などの開発も続いており、すぐにEJ20が消える心配はないだろう。しかし新車で買えるチャンスはそう長く残っていないかもしれない

 たとえば現行型WRX STIに搭載れるEJ20は、先代GRB型と比べルト、インタークーラーの冷却効率が劇的に向上。

 圧力損失は大幅に減少し、タービンを少し大きくしたのと同様の効果が得られている。ECUの学習機能も新世代のFA/FB型に近いレベルになっており、学習結果を優先して走るほどに最適な状態を探る仕様となっているところにも注目だ。

 さらには、性能の個体差バラツキや、熱ダレによる出力の低下幅もかなり少なくなっている。

 例えば、シャシダイでのパワー計測を行うと、ほとんどの個体でカタログ数値の308馬力を若干上回る数字となり、計測テストの後半になっても熱ダレによる出力低下があまり見られない。

 1世代前のWRX時代と比べると性能と品質の安定感が非常に高いレベルにある。また、かつてはEJ系エンジンの定番トラブルだったエンジンオイル漏れは、GRB(3代目WRX)やBP/BL(4代目レガシィ)の頃から劇的に減少。

 ガスケットの質など細部はもかなり改善されているのだ。現状でEJ20が積まれるのはWRX STIのみとなり、生産台数も減っていることから、アプライドD型以降は手組みに近い生産が行われているので、性能と品質の安定感はさらに増している。

 レース用は今後もEJ20が使い続けられる見込みながら、市販車ではエミッションの問題をクリアするもの難しく、次世代のWRXには新世代のターボエンジンが搭載される可能性が高い。

 いよいよ市販のEJ20は現行型WRX STIで最後となる可能性が高いので、本当の意味で完熟を極めたEJ20を新車で手に入れられるチャンスは残り少なくなった。

 市販用のEJ20の退役が近いのは寂しい反面、EJ20は古い個体でもその魅力が存分に味わえる点にも注目だ。

 30年に渡り改良を重ねられた結果、昔と今とではほとんど別物というべきものになってはいる。

ニュル24時間レースなど、市販車をベースにしたマシンでの活動も続けている。EJ20の進化がいつまで続くのか楽しみだ

 しかし、たとえば手組みバランス取りが実施されたSTIの限定車では、古い個体でも完調ならいまだに感動レベルのエンジンフィールが味わる。

 程度の良い中古車を買ってコンディションを良くすることにお金と時間を費やす価値は高いといえる。

 蛇足ながら、筆者が所有する初代WRXの初期A型は25年と20万kmを経た今もエンジン本体は調子がよく、EJ20の美点を味わい続けられている。

 EJ20そのものは大量に世に出ているので、近い将来に新車では買えなくなるからといって、まったく悲観しないでも良いだろう。

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