エンジンは永久に不滅です! 現代の主流「排気量をアップして燃費向上」のカラクリに迫る

■VWが+100ccの余裕、1.5TSIエボを発表!

VWはこれまでの主力エンジンであった1.4L直4、ターボエンジンに代えて、ライトサイジング化した2種類の1.5L、直4ターボエンジンを採用している。日本には2019年導入予定

2005年に1.4TSIのダウンサイジングターボエンジンを世界に先駆けて発表したVWは、これまで主力だった従来の1.4L直噴ターボエンジンに代えて、100cc排気量アップした2種類の新世代1.5L直噴ターボを発表、2017年にマイナーチェンジしたゴルフから搭載している。日本へは2019年の導入予定だ。

具体的には気筒休止システムを備えた2種類の直噴1.5L、直4ターボエンジンの1.5TSIエボがそれだ。気筒休止システムを備えた150ps仕様と、ミラーサイクルに加えて量産車として初の可変ジオメトリーターボ(VTG)、アクセルをオフにした時にエンジンとトランスミッションを切り離して惰力走行を行うエココースティング機能が付いている。

排気量100ccアップしたのにもかかわらず、燃費は10%向上し、欧州複合モード燃費は150psの1.5TSIエボが20km/Lで、130psの1.5TSIエボブルーモーションが21.7km/Lを達成。

■可変バルブタイミング機構で燃費も改善

初期の可変バルブタイミング機構であるホンダのVTECやトヨタのVVT、三菱のMIVECなどは、エンジン回転数によって最適なタイミングが異なるバルブの開閉時期を調整して低回転域のトルクと高回転域のパワーを両立させていたが、その機能を燃費改善にも活用しているのである。

厳密には本来のアトキンソンサイクルは圧縮比と膨張比を機構で違いを生むエンジンだが、可変バルブタイミング機構で同様の効果を得ようとするのが、今日のエンジンテクノロジーなのだ。

今や吸気バルブの遅閉じ(早めに閉じるエンジンもある)は、どこの自動車メーカーも普通に使っている技術だ。

マツダのSKYACTIV-Gは、かなり積極的にアトキンソンサイクルを利用している。高圧縮比である基本構造を利用して、軽負荷時には吸気量を落としても実質的な圧縮圧力を保てるため、かなり吸気行程を少なくしても実用トルクを得ることができるからだ。

CX−3のSKYACTIV−Dも1.5Lから1.8Lに拡大されているが、ディーゼルの場合燃料を吹いた分しか空気中の酸素は燃焼しないので、筒内の空気をほとんど燃焼させるガソリンエンジンとは、排気量という同じくくりで判断することは意味がない。

■欧米では燃費や車重で税金が決まる!

実はエンジンの排気量というのは、シリンダーのボア×ストロークと気筒数によって求められる、寸法上の容積のことでしかない。

日本ではこの排気量によって自動車税が決まってくるから、走行性能以外にも排気量を愛車購入時の条件に含めるユーザーは少なくないだろう。欧米では燃費やCO2排出量、車重によって税金が決まり、その税額も日本よりグンと少ない。

本来、マフラーから排出される排気ガスの量こそが実際の排気量だとするなら、今や様々な要因で寸法上の排気量とは異なることになる。それだけ自動車メーカーは燃費を向上させるために、いろいろな工夫をエンジンに盛り込んでいる、ということなのだ。

■ターボやEGRも実質的に排気量を可変させる機構

マツダCX-5のクールドEGRのイメージ図。排気ガスの一部を取り出して冷やし、再度吸気させるシステムがクールドEGR。燃焼温度を低減してノッキングの発生を防止。また冷却のための燃料噴射量を抑えることで燃費性能の向上にも貢献。(1)排気ガスとなる一部を取り出す(2)EGRクーラーで冷やす(3)もう一度吸気させる

例えばターボチャージャー。排気ガスのエネルギーを使って空気を圧縮してエンジンに押し込むのは、寸法以上の排気量を実現する手段でもあるといえるのだ。

しかも過給圧によって、エンジンに押し込まれる空気量も変わってくる。排気量を自在に変化できるのがターボの強みだ。

スイフトスポーツが1.6LのNAから1.4Lターボになったのも、環境性能と走行性能を両立させ、さらにワンランク上のスポーツ性能を与えるためだった。

さらにEGRは排気ガスを再びエンジンが吸い込んで、ディーゼルの燃焼温度を下げてNOxの低減を図ったり、ガソリンエンジンの新気の吸気量を抑えて燃費を向上させるために使われている。

あまりシリンダー内にEGRを取り込み過ぎると新気と燃料が上手く混ざらずにキレイな燃焼が難しくなってしまうので、このあたりはアトキンソンサイクルと組み合せて、EGRの量も調整される。

排気系から取り出された排気ガスは、EGRクーラーと呼ばれる熱交換器に入り、エンジンのクーラントで冷やされてから吸気系に導入される。これにより燃焼温度の上昇を抑えるのだ。だから外部EGRは別名クールドEGRとも呼ばれる。

ターボや触媒を一度通過した排気ガスでも、再びエンジンに取り込まれるのだから、マフラーから排出される排気ガスは、その分少なくなる。

冷間時には排気バルブを吸気行程でも開いておき、エンジンの燃焼室だけで排気ガスを再び吸い込む内部EGRも、マフラーからの排気ガスを減少させる要素だ。

ディーゼルの場合は燃焼室の温度を上昇させて燃焼を安定させることに役立てているし、ガソリンエンジンも暖機運転を早く終了させたり、早く触媒を温めるために利用されている。

EGRは排気ガスを不活性ガスとして再利用するだけでなく、全開加速などの高負荷時にはEGRバルブを閉じて新気だけで燃焼することによりエンジン本来の大きなパワーを引き出すこともできる。

可変バルブタイミング機構も同様で、低負荷な状態では吸気行程を少なくして燃費を向上させ、高負荷時にはその回転数に応じた最適なバルブタイミングでパワーを引き出す。

最近のガソリンエンジンは燃費性能ばかり注目されがちだけど、スポーツ性能としても十分に高く、走っても楽しいエンジンに仕上がっているのは、このEGRと可変バルブタイミング機構、ターボなどをフルに活用しているからなのだ。

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