なぜこんなにも美しいのか!!! 外国人デザイナーが手がけた美しい日本車6選

■初代ヴィッツ/ソリティス・コヴォス

1999年1月に発売された初代ヴィッツ(欧州名:ヤリス)。新世代のコンパクトカーとして衝撃を与えた

初代ヴィッツは、当時トヨタに在籍していたギリシャ人デザイナー、ソティリス・コヴォスの作品。

初代ヴィッツが登場した時は、「これはトヨタの革命だ!」と打ち震えた。コロンとしたワンモーションのフォルムは、シンプルでいながら斬新で美しかった。インテリアも同じテイストで仕上げられ、安っぽさを逆に魅力に変えるセンスが光っていた。

こんな先進的なデザインを持つコンパクトカーが、カローラに迫るほど多く売れたのは、日本市場の革命だった。

それまで日本では、「カッコいい大衆車はあまり売れない」というジンクスがあった。理由は「目立ちすぎるから」。が、ヴィッツの大ヒットは、日本でもカッコいい大衆車が主流になれる良き前例となった。

コボス氏はその後、最終型ソアラ(レクサスSC430)のデザイン原案も手掛けた。ヴィッツと同じくワンモーションフォルムで、サイドラインにヴィッツとの共通点を見ることもできる。

北米では概して好評だったが、日本人にはどこか大味に見え、鳴かず飛ばずで終わった。あんこは少量なら甘くておいしいが、デカすぎるとくどく感じる……みたいなことだろうか。
いずれにせよ、デザインの好みには、国民性も大いに関係するのである。

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ヴィッツの前身、コンセプトカー段階のファンタイム。ヴィッツの市販される2年前、1997年10月の東京モーターショーで公開

ソティリス・コヴォス氏による初代ヴィッツのスケッチ。ほぼ市販型に近いイメージ

ソリティス・コヴォス(1965年、ギリシャ・アテネ・イリオン生まれ)。子供時代は船乗りになることが夢だったが、1981年にアテネのパティオン大学で社会学を学びながら、夜はクルマのデザインをスケッチしていた。最初にスケッチしたのはアクロポリスラリーを見た時からだったという。その後、ロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アート入学し、卒業後、ブリュッセルでトヨタヨーロッパにデザイナーとして就職。その後、トヨタとレクサスのヨーロッパデザイン部門のチーフデザイナーに就任、ヤリスやSC430などを手がける。その後、アウディのチーフエクステリアデザイナーとなり、個人デザイン事務所を設立。フランスの電気自動車バスや路面電車をはじめ、2002年にはニッポニアというスクーターやボート、自転車、家具など多方面にわたってデザインおよび設計を手がけている

■スバルR1、R2/アンドレアス・ザパティナス

■スバルR2

航空機をモチーフにしたスプレットウイングスグリルを採用したR2は2003年12月発売。マイナーチェンジでこのスプリットウイングスグリスは廃止された。4輪独立懸架を採用し、走りも定評があったが当時は軽ハイトワゴンブーム、販売はふるわなかった

■スバルR1

2004年12月に発表されたR1。2+2の4シーターだが後席はミニマム。乗り味は軽とは思えないほど上質でデザイン含め今でもファンが多い

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スバルの問題作、R1、R2。販売的には目を覆うばかりの大失敗だったが、デザイン的には大変な意欲作で、特にR1に関して、故・前澤義雄氏(元日産チーフデザイナー)が絶賛したことは忘れられない。

この2台をデザインした人物こそ、アンドレアス・ザパティナス氏(1957年、ギリシャ・アテネ生まれ)である。

ザパティナス氏は、フィアットでバルケッタのデザインにかかわったのち、師であるクリス・バングルを追ってBMWへ。その後フィアットに復帰。そして2002年、スバルのチーフデザイナーにヘッドハンティングされた。

彼が真っ先にやったことは、「スプレッドウイングスグリル」の採用だったと言われる。ブランドには統一イメージが必要だというのは、当時徐々に常識になりつつあった。

2003年にR2が、2004年にはR1が発売。どちらも欧州車的な凝縮感が強いフォルムを持ち、フロントにはスプレッドウインググリルが輝いていたが、室内はライバルに比べるとケタはずれに狭く、軽としては驚くべきデザイン優先。

諸説あるが、実際に描いたのはチーフデザイナーの田中明彦氏で、ザパティナス氏がスバルに来た時には、R2のデザインがほぼ出来上がっていて、登場時期が遅いR1も含め、ザパティナス氏は監修した、とも言われている。

「今後はこういう軽を求める客も増えるはず」との目算だったが、非常に少数派に過ぎなかった。結局大惨敗を喫して、ともに2010年、生産中止となった。

ザパティナス氏は、北米で販売された「トライベッカ」のデザインも行ったが、その鮮烈なフォルムは、スバルに落ちてきた隕石のような異質さで、R1/R2同様、根付くことはなかった。
また、B9スクランブラーという意欲的な作品も発表するも市販化することはなく、トライベッカも販売不振……。2006年にスバルを退社し、のちにスプレッドウインググリルも廃止されたのでした。諸行無常……。

■スバルB11スクランブラー

2003年東京モーターショーで公開された2シータースポーツのB9スクランブラーはザパティナスの作品。市販化されることはなかった

アンドレアス・ザパティナス(1957年、ギリシャ・アテネ生まれ)。著名なカーデザイナーを多く輩出しているアメリカ・パサデナのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインを卒業後、1988〜1994年までフィアット・チェントロスティーレで働き、フィアット・バルケッタのチーフエクステリアデザイナーを務め、クーペ・フィアットやアルファロメオ145のデザインにも参画。1994年にはフィアットからBMWへ移ったクリス・バングルの後を追ってBMWへ移籍。1998年にはアルファロメオへ移籍し、チーフデザイナーを務めた後、2002年にスバルへ移籍。アドバンスデザイン担当チーフデザイナーに就任。B9トライベッカをはじめとするB9シリーズやR1(R1-e含む)のほか、スプレットウイングスグリルをスバル車に浸透させた。2006年7月にスバルを退社後、フリーとなり、現在は長安汽車のヨーロッパ・アドバンスドデザインオペレーションディレクター

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