クルマの命綱! 知ってますかブレーキの異常を知らせる前兆と整備方法

 クルマにとって最も大事な装備はブレーキだ。エンジンや変速機、モーターが壊れれば立ち往生する程度(それでも地域によっては凍死する可能性もあるが)で済むが、ブレーキが利かなくなれば、止まれない、曲がらないクルマとなって、命に関わる事故を起こしてしまう可能性もある。

 最新の安全装備も基本となるブレーキがキチンと機能して、初めて効果を発揮してくれる。

 そこで、ブレーキの整備がクルマにとって、どれほど重要なのか? ブレーキの異常時の見分け方や整備の目安、交換にはどんな手間(費用)がかかるのか? モータージャーナリストの高根英幸氏がなるべくわかりやすく解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock


■ディスクブレーキとドラムブレーキの2種類

ディスクブレーキは、車輪とともに回転するディスクローターを、ブレーキキャリパーに組み込まれたブレーキパッドで両側からはさみ、ブレーキパッドをローターに押しつけることによって自動車を制動する(減速・静止させる)ブレーキシステム

ディスクブレーキが作動する仕組みだが、まず足元のブレーキペダルを踏んだ力は、ブレーキブースター(倍力装置)で力を増し、マスターシリンダーによって液圧(油圧)に変換。その圧力はブレーキオイル(ブレーキフルード)で満たされている配管を通って伝わり、4つの車輪に装着されたブレーキ内のピストンを押す力となる。ピストンは摩擦材であるブレーキパッドを、車輪とともに回転するディスクローターに押しつけ、パッドがローターを両側から挟み、ローターに押しつけられることによって、車輪の回転が止まり、クルマが減速、停止する

 乗用車のブレーキにはディスクブレーキとドラムブレーキがあるが、どちらもブレーキフルードを用いた液圧式のブレーキとなっている。

 液圧式とは、ドライバーがブレーキペダルを踏み込んだ力(踏力)を4輪にブレーキフルードを介して伝えるもの。ダイレクト感が高く、ドライバーが自在に制動力をコントロールできるブレーキとしては最適の構造であることから、長年使われ続けている。

 先進安全装備の採用により電子制御化されて、ドライバーの操作と関係なくブレーキを作動させる状況も生まれているが、制動力を発生させる構造自体はほぼそのままだ。それくらい、ブレーキシステムは完成度が高く、信頼性の高いメカニズムなのである。

ドラムブレーキは、ブレーキライニング(摩擦材)を張ったブレーキシューを車輪とともに回転するブレーキドラム(回転体)の内側にピストン(押しつけ機構)で押しつけることによって、ブレーキドラムの回転を止め、クルマを減速、停止

ドラムブレーキでは、足元のブレーキペダルを踏んだ力はブレーキブースター(倍力装置)で力を増し、マスターシリンダーによって液圧(油圧)に変換。その圧力は、ブレーキオイル(ブレーキフルード)で満たされている配管を通って伝わり、4つの車輪に装着されたブレーキ内のピストンを押す力となる。ピストンは、摩擦材であるブレーキライニングを車輪とともに回転するブレーキドラムの内側に押しつける。回転するドラムの内側にライニングが押しつけられることによって車輪の回転が止まり、クルマが減速、停止

■ブレーキトラブルの前兆は?

少しでも踏みごたえに異常を感じたらディーラーや整備工場に持ち込もう

 ブレーキは使い続けていると、機能性能が低下していく。いきなりブレーキのフィーリングが変わることはあまりないため、トラブルに気付かずに乗り続けていることも多い。

 けれども前述のように壊れたら一番ヤバいブレーキは当然、壊れる前にちょっとでも異常を感じたら点検整備してもらうに限る。トラブルの前兆は振動と異音、踏み応えや利き具合の変化に現れる。ブレーキが冷えた状態でも、温まった状態でも、これまでとは違うと違和感を感じたら、プロの診断を仰ぐべきなのだ。

 また異常が無くてもブレーキには、定期的な点検が必要だ。それは構成部品に経年劣化が大きいブレーキフルードが含まれているからだ。

 ブレーキフルードは化学的に安定した素材で、極低温でも凍結せず高温下でも沸騰しないことにより、幅広い環境下で制動力を発揮できるようになっている。

 しかし吸湿性があり、作動により温度上昇と冷却を繰り返ることで劣化するため、定期的に交換することが求められるのだ。

 水分を吸収しても、急にブレーキが利かなくなる訳ではないが、ペダルタッチがフワフワとして踏み込む量が増えてしまう。

 さらに山道などでブレーキを多用することになると、水分が蒸発して急にブレーキが利かなくなるベーパーロックを引き起こす危険性が高まる。

 フルードを交換するとペダルタッチがしっかりとして、よりダイレクト感を感じられるようになる。ペダルフィーリングにこだわるオーナーには毎年、そうでないオーナーにも2年に1度はフルードを交換することをお勧めしたい。

■キーキー鳴ったら交換時期、放置するのは厳禁

ブレーキの整備を怠ると、いざというとき困るのはユーザー自身なのでしっかりとした整備が必要だ

 もちろんフルード以外もブレーキの各部は作動することで摩耗、消耗していく。代表的な部品はブレーキパッドだ。

 交差点などで減速、停止する際にキーキー鳴っているクルマを見かけることはないだろうか。あれはブレーキパッドが交換目安を迎えて、薄い鉄板製のセンサー(ウェアインジケーター)がディスクローターに接触して音を発して交換時期を知らせているのだ。

 それ以外にもパッドの内部に配線を仕込んで、パッドの摩耗により配線とローターが接触して通電することにより、摩耗限界を知らせるセンサーを採用しているクルマもある。

 それ以外にもメンテナンスを怠るとブレーキ鳴きを起こすこともある。ブレーキを掛けた時に鳴くのは、ブレーキパッドが振動しているからで、キャリパーとの密着やローターとの接触が悪くなると起こりやすい。キャリパーの掃除やローターの研磨によって解消されることが多い。

 ドラムブレーキのドラム内側にライニング(摩耗材)を押し付けて制動力を発生させる部品がブレーキシューだ。FF車のリアに採用されていることが多く、ブレーキパッドと比べると減りにくいが、車検毎の点検は必要だし、摩耗限界近くなっていれば交換する必要がある。

■ブレーキパッドは一般的な使い方では4年、車検2回分は使える

ブレーキパッドは車検や点検時と同時に交換するのが工賃が安くなるのでベスト

 乗り方や走る環境によっても変わってくるが、摩耗材であるブレーキパッドやシューは4万〜5万km程度の耐久性を持っているから、一般的な使い方では4年、つまり車検2回分は使える。車検毎にパッド残量やブレーキフルードを点検し、この先1年以内に交換時期を迎えるのであれば同時に交換してしまった方が経済的だ。

 というのもブレーキのメンテナンスは、車検毎にしっかりとしたディーラーや整備工場で車検整備と同時に行なってもらうのが、最も効率良く、結局はコスパのいい手段だからだ。車検整備とは別の機会に点検と整備を行なってもらうと、工賃がダブる。

 ブレーキフルードやパッドの交換は、点検と同時であれば部品代+αで済むが、ディーラーで単独の整備を依頼すれば工賃だけで2、3万円(車格によってはさらに高額に)はかかるし、カー用品量販店などでも1.5~2万円の工賃がかかる。

 最近の高級車はブレーキパッドの交換もディーラーの診断機を使って作業する必要があるので、車種によっては整備できる環境が限られることも増えてきた。

■ブレーキホースの劣化も見逃すな!

100km/hで走るクルマが急ブレーキをかけると、0℃の水2Lが3秒で100℃に沸騰するほどの熱が放出される。ブレーキフルード(オイル)が通るブレーキホースもいかに大切かがわかるだろうか?

 また一般的には消耗品にはあたらないが、長年の使用で交換が必要な部品も出てくる。エンジンルームと室内の壁(バルクヘッド)に取り付けられたマスターシリンダーやEBS(電子制御ブレーキシステム)ユニットから、4輪へと制動力を伝えるのはブレーキパイプと呼ばれる細い金属製の管だ。

 しかしサスペンションによってブレーキは上下に動くし、前輪は操舵のためにブレーキキャリパーとシャーシとの位置関係ブレーキシステム)が変わる。

 それを調整するのがブレーキホースの役割だ。純正のブレーキホースは耐薬品性を備えたゴムに繊維を織り込んでブレーキの圧力に対して剛性を確保している。

 しかし経年劣化でゴムがヒビ割れ、柔軟性を失って剛性も低下する。それによってブレーキのタッチがフワフワとしたり、最悪の場合はフルードが漏れて制動力を失うことになりかねない。

 安い中古車を購入したら、このあたりまではしっかりとチェックして劣化していれば交換したほうが安心だ。高価なステンレスメッシュ製のホースでなくても、純正の新品であればブレーキ性能やフィールも充分に確保できる。お金をかけるなら定期的なフルード交換に費やすべきだ。

■ブレーキキャリパーの不具合を生じることはほとんどなくなった

R35GT-Rの純正ブレンボ製キャリパー

 ブレーキパッドをディスクローターに押し付けるブレーキキャリパーも、昔は定期的に分解整備が必要だったが、最近のクルマはパーツの精度も高いので10年10万kmくらいまで、不具合を生じることはほとんどなくなった。

 普通のクルマはキャリパーの片側にピストンをもち、キャリパー全体が動くことで左右のブレーキパッドで制動力を生じさせる。

 しかしキャリパーの動きが渋くなると、左右のブレーキパッドにかかる力に差が出て片減りしやすくなる。ディスクローターを交換するタイミングなどでキャリパー回りの清掃や潤滑をしておくといい。

■ブレーキマスターシリンダーも侮れない

足元のブレーキペダルを踏んだ力は、ブレーキブースター(倍力装置)で力を増し、上写真のマスターシリンダーによって液圧(油圧)に変換される。その圧力はブレーキオイル(ブレーキフルード)で満たされている配管を通って伝わり、車輪に装着されたブレーキに届く

 ブレーキペダルの踏力を、液圧に変えるのはマスターシリンダーという部品。この内部のピストンに使われているシールなども摩耗するが、シリンダー内壁の精度が向上したことで、10万kmくらいはフルード交換だけで問題なく走行できてしまうことが多くなった。

 ドラムブレーキの内部で、向かい合ったブレーキシューの間で突っ張り棒のように伸び縮みして、ドラムにシューを押し付けるのがホイールシリンダーの役割だ。内部にはオイル室があり、ペダルからの液圧によってオイル室が拡大することで両端のピストンが押し出されて伸びるのだ。

 このブレーキの作動によってブレーキフルード内の水分が上昇、ホイールシリンダーの内壁を腐食させて表面が虫食い状態になってしまうことがある。

 最悪の場合、フルードの液漏れを生じさせる。その時点で即、ブレーキが作動不能になることはないが、ブレーキフルードが徐々に流失してしまい、マスターシリンダーから空気がブレーキラインに入ってしまうと、即座にブレーキの機能は消失してしまう。

 そのためには、日常的にリザーバータンクでブレーキフルードの減り具合(ブレーキパッドが減ることでキャリパーのピストンが突き出てフルードの残量は減る)をチェックすることが必要だ。国産車はホイールシリンダーの耐久性が向上したが、輸入車のドラムブレーキではまだホイールシリンダーは要点検の部品だ。

■ジャダーが発生したらディスクローターを疑え!

ジャダーが起きたらローターの偏摩耗を疑ったほうがいい

 ブレーキを掛けた時にステアリングが揺すられる、クルマに振動が伝わってくる場合、ディスクブレーキのローターが偏摩耗している可能性が高い。

 ジャダーと呼ばれるこの症状は、ディスクローターが歪んでいることでブレーキング時にキャリパーがローターの歪みに合わせて動くことでステアリング系が揺すられてしまうのだ。

 国産車であればローターは減りにくく、ブレーキパッドの交換だけでかなりの期間走行できるが、欧州車はパッドとローターの両方を摩耗させることで、高いブレーキ性能と絶妙なブレーキペダルのタッチを実現している。

 そのためブレーキパッド交換2回に対してローターを1回交換するのが一般的だ。国産車はローターが減りにくいといっても、偏摩耗した場合は研磨か交換が必要になる。

 ドラムブレーキでは最近のクルマではブレーキドラムが摩耗限界になるまで走行することは少ない。しかし点検でドラムを外すのだから、同時にドラムの摩耗をチェックしてもらうようにしてもらえばいい。

■手動のサイドブレーキはワイヤーが伸びてくる

電子式のサイドブレーキが増えてきたが、ワイヤー式のサイドブレーキもまだまだ多い。サイドブレーキの効きが甘く、ワイヤーが緩んできたら交換

 サイドブレーキは、停車中にクルマが不用意に動かないようにするための装備だ。もともと、運転席の側面にあったためこの名称が付いたが、現在は足踏み式が主流になり電動パーキングブレーキも増えてきた。手動のサイドブレーキは引き過ぎるとワイヤーがどんどん伸びてくる。

 ある程度は調整が利くが、伸びるということは、いずれ切れて交換修理が必要になる。電動パーキングブレーキを採用している車種でも、モーターがワイヤーを引っ張って作動させている車種では、ワイヤーが伸びて交換が必要になることも考えられる。

■信頼できるディーラーや整備工場とつきあうことが必要

 クルマを乗りっぱなしにはできない理由の1つが、このブレーキのメンテナンスであり、たとえEVになってもブレーキはなくならないから、エンジンオイルの交換が必要なくなっても、定期的なメンテナンスの必要性は残る。

 であれば得策は、メンテナンスを信頼できる関係を築くことだ。メカのことが分からない素人と見くびられて、ボラれていると思う人は、ディーラーや整備工場、あるいはメカニック個人と信頼関係を作ることだ。人間誰だって、自分を頼って信頼してくれる人間には、特別な配慮をしてあげたいと思うもの。

 クルマは、購入したら壊れるまで乗り換えるまで、なるべくお金を掛けたくない、と思うオーナーが大半ではないだろうか。

 しかしブレーキだけは安全に直結するので、絶対に点検整備を怠るべきではない。そしてエンジンなどパワートレーンもメンテナンスや乗り方でコンディションや寿命は大きく変わる。

 単に運転するだけでなくメンテナンスにも手をかけて好調を維持する、そしてその乗り味にも喜びを感じられる、そんな愛車とオーナーの関係を目指してほしいものだ。

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