■充放電可能回数3000回。1回の充電で300kmなら90万km
そもそも決定的なのが電気自動車の中核となる電池。私は以前からリン酸鉄電池を高く評価している。
正極にコバルトやニッケル使う3元系リチウム電池と違って燃えない(熱に強いだけでなく釘を刺しても大丈夫)。
そして充放電可能回数3000回を超える。1回の充電で300km走れるなら90万kmということになる。
材料のリン酸鉄は稀少金属じゃないため安価。電気自動車用の電池として考えたら申し分ない。
今まで日本の技術者にリン酸鉄リチウム電池の話を聞くと、皆さん一笑に付す。伝家の宝刀である全固体電池を振りかざせば、すべて切り倒せると思っているようだ。
リン酸鉄リチウム電池を使うBYD車は、20万km走っても電池容量は新車に限りなく近い状況だと思っていいだろう。
もちろん熱に強いため、急速充電を繰り返した時の耐久性だって高い。長い寿命を持っていれば、リセールバリューだって期待できる。
■今回のBYDの発表は日本にとって「けっこう深刻」
今回BYDが発表した内容、中国の自動車産業を見てきた私からすると、日本にとって「けっこう深刻な状況」のように思う。
BYDは中国の政府系自動車メーカーじゃないため、経営難=破綻。昨今の中国の政情を考えたら中国一本足打法は危うい。
日本と言えば、世界3位の自動車販売台数というだけでなく、ユーザーのレベルだって高い。日本でクルマを売れれば世界で通用する品質や性能と言ってよかろう。
BYDとて、日本で簡単に売れるとは思ってない。それだけに本気で勝負に来ているのだった。
日本の自動車メーカーにとって当面の心配事は価格。仮にヤリスクラスの『ドルフィン』が250万円くらいだったとしよう。
今年の補助金を考えると200万円切り。東京都なんか150万円だ。90万km使えるクルマが150万円! 供給台数に余裕あったら、補助金の予算を使い切ってしまう。
補助金なくなったら日本製の電気自動車なんか高くて買えない。海外市場だけじゃなく鎖国を続けてきた我が国でも猛威を振るう可能性大だ。
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