■新型スープラは相当敏捷性を重視した性格
つまりスープラも基本的には相当敏捷性を重視した性格に躾けられているとみて間違いはない。気になったのはテールスライドのポイントが掴みづらく、滑り始めからの動きがややピーキーなところだ。
路面状況を鑑みればお尻が滑り出すポイントは深いところにありそうだが、そこからの挙動変化は思いのほか早い。短いホイールベースに広いトレッドと、極端なディメンジョンを採るがゆえの致し方ないところでもあるが、いろいろなスロットルワークを試してみると電子制御LSDのコントロール性にも時折不安定さが感じられる。
このあたりはシビアコンディションがゆえの挙動の可能性もあって断じることはできないが、新型スープラの現状の印象としては、ドライビングプレジャーのひとつとしてちょっとテールスライドを意識しすぎているようにも窺える。
■開発のベンチマーク、ポルシェケイマンSより上か?
■ポルシェ718ケイマンSの主要スペック
全長4378×全幅1801×全高1284mm
ホイールベース/2475mm
車両重量/1355kg(6速MT)、1385kg(7速PDK)
2.5Lフラット4ターボ
350ps/6500rpm
42.8kgm/1900〜4500rpm
0〜100km/h、4.6秒(6速MT)、4.4秒(7速PDK)
価格/862万円(6速MT)、909万2000円(7速PDK)
新型スープラにとって一番のライバルであり、開発のベンチマークにもなったと目されるのはポルシェケイマンSだ。2.5Lフラット4の直噴ターボユニットを搭載するケイマンSのパワーは350ps、0〜100km/hは4.6秒(6速MT)と、判明しているZ4のスペック(M40iは4.6秒、sDrive30iは5.4秒、sDrive20iは6.6秒)に照らしても動力性能は互角に近い。
ケイマンSの価格、862万円まで近づけてもらっては困るが、それよりも圧倒的に安いということも考えづらそうだ。
普通に乗っている限り、ケイマンSの走りはスープラに比べると明らかに穏やかでおっとりしているように思える。
意外に思われるかもしれないが、これはいかにもポルシェ流のセットアップだ。操舵ゲインをマイルドに立ち上げて、切り込むほどにじわじわ鋭さを増していくように仕向けるのは、トリッキーなスピンモードに陥りやすいミッド〜リアエンジンの挙動を手下に置くためのもの。
同じくスロットルの開き方や制動力の立ち上げ方も穏やかに躾けてあるのは挙動の不安定要素を少しでも排除しようという思惑からのものだ。
最近は911GT3系などユーザーの目的用途が見切れるモデルにはキレッキレのセットアップをするようになってきたが、大半のポルシェのスポーツモデルは驚くほど優しく振る舞ってくれる。
そしてこのキャラクターが、普段乗りにおいても癒やしすら感じる安心感に繋がっているわけだ。スープラのポテンシャルは計りかねるが、ケイマンの境地に至っているかと問われればそれは疑問だ。
なにより、両車の優劣が明確なのはエンジンだろう。ピークパワーというよりも、サウンドや回転フィールといった感覚的な項目において、直6を積むスープラの気持ちよさはケイマンSを確実に凌ぐ。
ケイマンSのフラット4もポルシェらしく高回転域まで鋭く吹け上がり、きっちりパワーもついてくる見事なセットアップだが、それでも両車を比べてエンジンだけでスープラを選ぶという人がいても個人的には不思議はない。
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