「すべてにLOVEがほしい」「定年は…」超貴重&独占インビュー! トヨタ自動車社長 豊田章男が本音で語った60分

■ソニー・ホンダモビリティには ぜひ自工会に入ってもらいたい

BC/ソニー・ホンダモビリティが2025年からEVを受注しはじめ、2026年からデリバリーすると発表しました。テスラが2021年に世界で93万6000台販売するなど、EV専門メーカーが伸長するなか、ソニー・ホンダモビリティはトヨタの大きなライバルとなりますか?

ソニー・ホンダモビリティが開発を進める「VISION-S01」。インテリアにもソニーの得意とするエンターテイメント空間が広がる。モリゾウさんは「自工会にどうぞいらしてください」と呼びかける
ソニー・ホンダモビリティが開発を進める「VISION-S01」。インテリアにもソニーの得意とするエンターテイメント空間が広がる。モリゾウさんは「自工会にどうぞいらしてください」と呼びかける

モリゾウ/トヨタ自動車の社長としても自工会会長としても新しいモビリティの会社が生まれることは歓迎すべきことです。ライバルということではなく、仲間として一緒にやっていきませんか? 自工会会長としてお願いするならば、自工会にどうぞいらしてください。そういう気持ちです。

 ただ、ITメーカーの作るソフトウェアでは、不具合が出た時に「バージョンアップ」の対策を取りますが、我々自動車メーカーでは、「リコール」の対策を取ります。不具合が出た時にしっかりとした安全対策を施すという意味でのリコール制度は大変重要で、お客様に安心感を与えるという意味でも大事です。

 ITメーカーが「バージョンアップ」でよくて、自動車メーカーが「リコール」というのは、フェアじゃない気がします。

BC/仲間作りということなら、ソニー・ホンダモビリティがスーパー耐久に参戦してEVを開発すると面白いですね?

モリゾウ/水素エンジンカローラと一緒にST-Qクラスを走る!? それともBEVクラスを新設する!? どちらも面白いと思いますね。

■ウーブンシティにあえて豊田章男は出ていかない

BC/ウーブンシティは今後どのように発展していくのでしょうか? 少し発信が足りないような気がします。

トヨタが進めるウーブンシティ構想。自動運転車の実証実験をするテストコースだけではなく、ENEOSや日清食品、リンナイといったさまざまなメーカーと、人中心のよりよい社会のために実証実験を行っており、今後どんどん発信が増えるはずだ
トヨタが進めるウーブンシティ構想。自動運転車の実証実験をするテストコースだけではなく、ENEOSや日清食品、リンナイといったさまざまなメーカーと、人中心のよりよい社会のために実証実験を行っており、今後どんどん発信が増えるはずだ

モリゾウ/元々「人中心で、ずっと未完成の未来のモビリティのテストコース」をコンセプトとしてやっていますから、わかりにくいのだと思います。

 仲間を作るためのプラットフォームがあり、そこでいろいろな実証実験をやっていますが、機械に動かされるのではなく、人がありがたいと思えるものにこだわりたいと思っています。だから人中心なのです。

 トヨタ自動車東日本の東富士工場を東北地方に移管する時、この地で未来の実証実験をしたいという想いからウーブンシティは始まりました。でも、ウーブンシティに豊田章男は出ていきません。私が前面に出ていくと、私ひとりの話になってしまいます。

 クルマも未来もひとりのヒーローでは作れません。トヨタの商品もウーブンシティもたくさんの人が関わっています。今、ウーブンシティは実務を進めている段階です。関わる人みんながヒーロー、たくさんのヒーローが生まれる熟成期にあると思っていただければと思います。

BC/これからいろいろなことがウーブンシティから発信されていくのですね。

モリゾウ/これは蛇足ですが、トヨタは未来への投資を自前の土地とお金を使ってスピード感をもってやっていることを理解していただきたい。本来は国がやってもいいプロジェクトですが、国の予算を使うとなると、お願いや報告の書類だけで何百ページも必要な世界です。

 ウーブンシティは5年でここまで来ましたが、国がやると何十年もかかってしまうでしょう。民間に任せるものを、もっと増やさないと、日本の競争力はますます落ちていくと思います。

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