■保安基準としての厳密な定義
ここで流れるウインカーを含む方向指示器の保安基準の概略、といっても当然ながら細部まで解釈が必要とはいえ、その定義を辿ってみよう。
方向指示器とこれと兼用となる非常点滅表示灯(ハザードランプ)では、各光源のLEDの流れ方については、国土交通省の定義による必要要件とは、
■「光源である各LEDは、点灯後にすべてのLEDが点灯するまで作動し続けること」
■「すべてのLEDは同時に消灯すること」
■「LEDは垂直(縦)方向に反復して点灯しないこと」
■「LEDの点灯は最内縁(内側)から最外縁(外側)に向かって、または中心から放射状に広がって均一的かつ連続的に点灯すること」
■「照明部に外接する長方形で、長辺部が進行方向に対して垂直な面(H面)に平行であり、長短の比率が1.7:1以上であること」
と規定されている。
むろん、ウインカーの基本的規定として、色と明るさが橙色であること、ほかの交通を妨げないこと、前後から100m、左右から30mの距離で点灯の確認ができるようにすること、点滅周期は毎分60回以上120回以下の一定の周期で点滅すること、他のすべてのウインカーの点滅周期と同じであることなどが保安基準として存在する。
このなかで微妙な規定は、“長辺”部分が横(水平)方向であることが前提とされ、全体に縦に移動したりカーブすることを禁じていると解釈すべきなのかという点だ。
「詳細は法律の規定を確認してください」と担当者から返されたので、これはグレー部分としておくしかない。いずれにせよ、カーブすれば点灯部分の長短の比率は小さくなっていくから、採用は難しくなることになる。
特にLED仕様のヘッドライトでは地面と平行に“長い”ウインカーのデザインは意外と少ないことが見えてきて、アウディやトヨタのフロントの流れるウインカーは、前述の保安基準をクリアしていることが見てとれる。
加えて、定義のなかで「光源中心から放射状に広がって」とあるのは、将来的に円形ランプに採用されることを念頭に置いた規定と想像できる。
■日本車ではトヨタが圧倒的に多い!
現状として日本車で流れるウインカーの採用を積極的に進めているのはトヨタであり、基本的に高級車もしくは上級グレードに設定されているケースが多い。まずはトヨタが手がける「LEDシーケンシャルターンランプ」の採用例を順に追っていこう。
レクサスブランドで「LEDシーケンシャルターンシグナルランプ」を最も早く採用したのは2015年8月に発売されたLXだ。
続いて発売されたRXやLS(ともに前後)にも採用された。ESでも標準仕様を除いてフロントで採用されている。なお、GSやCT、UXでは現状では採用されていない。
トヨタブランドでは2016年12月に発売されたC-HRで初搭載。アルファード/ヴェルファイア、マイナーチェンジ後のハリアー、現行クラウンなどが装備する。
細かく見ていくと、流れるウインカー装着車はアル/ヴェルは最上級グレード、クラウンではRSグレードのみの設定。ハリアーはフロントのみ(廉価グレードを除く。ターボ車には設定)。
C-HRでは廉価グレードを除いてフロントに装備する。ちなみに、先進性を謳うプリウスではマイナーチェンジでも未採用なのは、縦基調の前後ランプ類のデザインに適応しなかったゆえかもしれない。
いっぽう、ホンダでは2017年に2代目となるN-BOXカスタムに軽自動車初として、「9灯式フルLEDヘッドライト」とともに採用されたが、ホンダ車では唯一の設定になる。
いまのところ、ほかの日本メーカーは静観を決めているようだが、LEDランプのコストを含めて上級グレードなどで採用するにしても、現状でブランディングを絡めたファンション的な要素もあることを考えれば、二の足を踏むこともわかる。
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