「ミライ」FCV発売前夜 安倍首相も水素ステーションを視察!

■プリウス発売時に補助金はあったか?

 ’97年当時、現在のFCVに負けず劣らず次世代車として期待された初代プリウスは215万円からという信じられないほど安い価格で登場した。しかし、補助金はなかった。

 一時、カローラ(約150万円)との価格差の約半分にあたる35万円の補助金が受けられるという情報が流れたが、予算額は80億円と少なく、しかもEVや天然ガス車、メタノール車と幅広いクルマが対象で、結局ハイブリッドを買う一般ユーザーへの補助金は見送られたという経緯がある。

 さらに自動車雑誌など一部のマスコミ以外のプリウスへの関心は低く、ジャーナリストのなかには「売れっこないよ」といっていた人も多かった。FCVのようなインフラへの不安はなかったが、そのぶん、モーターやバッテリーの耐久性に不安が囁かれたのだ。

 実際、初代プリウス発売の翌年’98年1年間の販売台数は1万7653台、’99年は1万5243台、’00年は1万2511台と月間1000台ペースとたいして売れていない。発売した時の一般的な知名度からいえば、天然ガス車と同じくらいだったかもしれない。

 10型と呼ばれるベストカー編集部も所有する初期型のバッテリーは永久保証で無償交換となっている。ちなみに新品バッテリーは32万8000円で工賃1万7000円、合わせて34万5000円ほどかかるところが、タダで、編集部のプリウスは2度も交換してもらっている。そうやってさまざまなケアをしながら、トヨタはハイブリッドの信頼性を築き上げてきたのだ。

■水素はいったいいくら?

 政府は東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏を中心に’15年度中に100カ所程度の水素ステーションを建設、整備するとしているが、現在20カ所程度しかなく、40カ所あまりが現在建設中とはいえ、首都圏と愛知県に集中しており、地方の人たちには恩恵が少ない。

排ガスを出さないFCVが排出する水はこのようにフロア下からしたたるように落ちる
排ガスを出さないFCVが排出する水はこのようにフロア下からしたたるように落ちる  

 一般的に水素ステーションの建設には約5億円かかるとされ、ガソリンスタンドの約5倍だ。政府は水素ステーションの整備のため1カ所あたり最大2億8000万円を補助しているが、岩谷産業やJX日鉱日石エネルギーなど水素ステーションを手がける企業は水素ステーションの整備を進めるが、採算の見通しが立っていないというのが本音だ。

 ちなみに水素の値段は1立方メートルあたり約150円で、だいたい1立方メートルで10㎞走るという。つまり1000㎞走るのに1万5000円かかる。これは2ℓクラスのガソリン車とかわらない燃費性能だ。政府は水素の値段を’20年頃をメドに1立方メートル80円くらい(つまりハイブリッドと同じくらい)にしたい考えだ。

 さらにʼ25年には車格の同じハイブリットモデルと同程度まで車両価格を下げることを目標としている。そうなれば、エコカーとしての競争力も生まれてくる。

 自民党に「FCVを中心とした水素社会実現を目指す研究会」(小池百合子会長)があるが、初期のFCVの需要喚起策として’15〜’17年に購入した個人と企業は「水素を無料で充填できるよう検討する」としたほか、’25年度までには価格をハイブリッド車(プリウス)と同等の200万円台まで引き下げると、具体的な数字目標を出している。

 さらに’15年〜’20年のFCVの高速道路無料化も謳っており、どこまで政策に生かされるかわからないが、注目に値する。

■そんなにうまく燃料電池車の価格が下がるものか?

 燃料電池の価格が量産効果でどれくらい下がるかの参考として家庭用燃料電池であるエネファームを見てみよう。右の図でわかるように世界に先駆け、’09年の発売当初は300万〜350万円だったが、4年後の’13年には200万円を切り、ほぼ半額の水準まで落ちている。

 現在エネファームは1台あたり200万円ほどするが、政府から38万〜43万円の補助金のほかに自治体からも数万円〜15万円ほどの補助金が出されている。このまま普及が進めば、’16年には1台あたり70万〜80万円まで下がり、さらに’20年頃には補助金なしでも普及する自立化を実現化することが政府の目標となっている。

 これをそのままFCVに当てはめるわけにはいかないが、’25年頃、つまり10年後には200万台が普及し、量産効果でハイブリッドと同じような価格帯になり、補助金がなくても普及が進む自立状態になるという見通しに根拠がないわけではないことがわかる。

次ページは : ■普及はFCVの走りの魅力しだいだ

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