■テスラに生じるメリットとは? アダプターを介せばどんな規格も共用可能だが…
テスラのNACS方式は日本でもスーパーチャージャーとして使われているが、テスラ車はスーパーチャージャーしか利用できない訳ではない。
CHAdeMOの充電器もアダプターを間に装着することで利用できる。これはCHAdeMOの情報が公開されているからだ。
急速充電器は接続するEVと通信して、何Vの電圧で何Aの電流を送るか調整しながら送電している。
充電器側で充電の電力自体は自由に増減できるので、そのためのデータのやり取りとソケットの形状だけの問題なので、アダプターを介せばいいのである。これはCCSでも同様だ。
そのアダプターを開発するためにはソケットの形状だけでなく、通信プロトコルなどのデータの情報も必要となる。
GMやフォード、ボルボが相次いでNACS方式を採用し始めたのは、テスラがスーパーチャージャーを他社製EVにも開放するために情報を公開したからだ。
これは米国内のスーパーチャージャーを他社製EVでも利用可能にするようホワイトハウスが要請し、それに応えたものとしているが、それは単に他社製EVの利便性を高めるための措置ではない。
イーロン・マスクはそんなお人好しではなく、したたかであることは周知のことだ。
これまでテスラはEVの開発費を投資家や購入希望者からの予約金、炭素クレジットなどで賄ってきたが、EVの生産台数が十分に増え、急速充電器の設置数も増やしてはいるが、車両の数に対して間に合わなくなってきた。
そのためビジネスは次のステージに入ったのだ。それはテスラの急速充電器、スーパーチャージャーを他社製EVにも開放すること。
自社だけで急速充電器のネットワークを負担していくのは難しくなってくるし、他社もNACSを採用し急速充電器メーカーも対応することになれば、その権利関係もビジネスとして成り立つようになる。
つまり一石三鳥くらいのメリットがテスラ側に生じるのだ。すでにSAE(米国自動車技術会)はNACSを米国での充電規格の標準仕様として認めている。
今後は北米市場ではNACSが主流になっていくことは明らかで、欧州や日本市場にも影響が出てくるだろう。
■日本主流のCHAdeMOはどうなる? これからはEVと充電器の両方に新たな対策が必要なワケ
世界中で普及しており、日本では主流のCHAdeMOは廃れてしまうのか、と心配になるEVユーザーもいるだろう。しかし、これはあまり心配することではないと思われる。
なぜなら急速充電器はその使用環境にかかわらず、およそ10年で寿命となって交換されていくものであることがまず一つの理由だ。交換によって、規格が変わってもアダプターを介せば従来のEVも使えるから、問題はない。
そんな作業は面倒だ、というのであれば、充電規格が変わったら新しいEVに乗り換えればいい。EVはエンジン車以上に「使い捨て」となるモビリティだ。それはパーツの点数が少なく、リサイクルにも適しているからだ。
もちろんバッテリーを交換して乗り続けられるケースもあるが、それ以上の大掛かりな修理となると、新しいEVに乗り換えた方が性能もいいので、乗り続けるユーザーは極めて少ないだろう。
そしてテスラの急速充電は充電器側のシステムが非常に優れたモノであるだけでなく、車両側の仕様も最適化していることにも注目すべきだ。
車載電池に円筒形を使っていることを逆手にとって、各電池の間に冷却経路のチューブを回すことで、すべての電池の温度を均一にすることを可能にしている。これが急速充電でも電池を長持ちさせる秘訣なのだ。
単にCHAdeMOかNACSか、にするだけでなく、大電流の急速充電に対する安定性や電源の確保、さらには猛暑も含めた熱対策をしていくことが、これからのEVや充電器に求められる重要な要素だ。
【画像ギャラリー】テスラの勢いは止まらない!! モデル3(2023年モデル)やモデルY そしてモデルSをイッキ見する!!(43枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方NACSが事実上北米での勝者なのでしょう。トヨタも採用決定したようなので、安全かつ最適なものなのは間違いないと思います。まずはトヨタの英断に拍手を!
どんな規格でもいいが余剰電力のプール先(v2h)の機能を提供できるなら、再生可能エネルギーの補完機能として共に存在意義を高める存在になる。