電気自動車(以下EV)の充電環境の整備が要する昨今。日本ではCHAdeMOが主流になっている。そのいっぽうで、欧米ではテスラ方式に統一されそうな動きを見せている。これからのEVの充電環境はどうなっていくのか?
文/高根英幸、写真/teslaジャパン、Adobe Stock
■CHAdeMOやテスラといったEV充電の勢力争いどうなる?
この10年ほどの間に米国や欧州でEVが普及していく中で、充電規格についてはこれまでいくつもの陣営が標準化を巡って争ってきた。
元々最初にEVの充電規格を開発したのは、日本発のCHAdeMOだった。電力会社や日本の自動車メーカーによってCHAdeMO協議会が2010年に発足され、急速充電の国際規格として2014年には承認されている。
しかしこういう規格は完全に定着するまではさまざまな規格が乱立することが多い。
欧州と北米ではCCS(通称コンボ)という規格が立ち上げられたが、最終的には微妙に異なるCCS1(主に北米)とCCS2(主に欧州)になって、今一つ国際規格としては統一感が薄らいでいる。
CCSはCHAdeMOと違って普通充電のソケット(CHAdeMO車と同形状)で急速充電も直流も交流も対応し、電気料金の支払いも充電器と車両の通信によって行われるからスマートだ。
そしてテスラが立ち上げたのが、NACS(別名テスラ方式)と呼ばれる独自規格。
コンパクトなプラグで普通充電も急速充電も対応し、やはり料金の支払いも車両と充電器の通信で自動的に行われる。
充電のための作業もスマートで大電流に対応しているなど、ベンチャーらしい革新性をアピールする内容だ。
■なぜ1つの充電規格を採用しないのか?
なんで1つの規格をどこのメーカーも採用しないのか、と疑問に思っている人もいるだろう。
すでに開発された規格、充電器をそのまま使えれば、開発コストはかからないし、開発のスピードもアップできる。しかし、ライバル社の製品と差別化を図るには、充電環境は重要な要素なのだ。
ましてや自社で採用している充電規格が全国に標準規格として採用されるとなれば、ユーザーの利便性が高まり、セールスポイントとしても武器になる。なんでも規格をモノにして有利に運ぼうとするのが欧米企業のやり方だ。
それに対してCHAdeMOを開発した日本はそんな欧米の思惑とは違って、利用者の安全や確実性を重視しすぎるほど重視してきた。だから、使い勝手や充電スピードよりも安全性を優先した構造になっている。
こういうところで日本は慎重過ぎる部分もあるが、だからこそEVの発火事故は少なかった。
こうした一般家庭に例えるなら、日本と海外ではコンセントの形状や電圧が異なっているため、海外仕様の家電製品は利用できないことに近い。
そんな大昔に確立された家庭用電流は今更全国規模で変更するのは現実的じゃないから、日本国内だけでも関東と関西では交流の周波数が違うままなのだ。
EVの充電規格はまだ登場して日が浅いから、こうした標準仕様化への競争が繰り広げられているのである。
そんななか、欧州と米国ではテスラのNACSを採用する動きが目立ってきた。GM、フォードとボルボが相次いでCCSからNACSへの変更を発表したのだ。
コメント
コメントの使い方NACSが事実上北米での勝者なのでしょう。トヨタも採用決定したようなので、安全かつ最適なものなのは間違いないと思います。まずはトヨタの英断に拍手を!
どんな規格でもいいが余剰電力のプール先(v2h)の機能を提供できるなら、再生可能エネルギーの補完機能として共に存在意義を高める存在になる。