横断歩道で止まる「貴族」と止まらない「野蛮人」の割合は45対55【清水草一の道路ニュース】

横断歩道で止まる「貴族」と止まらない「野蛮人」の割合は45対55【清水草一の道路ニュース】

■積極的な取り締まりで状況が一変!

 JAFの調査によると、信号機のない横断歩道で歩行者を優先するために一時停止した車両の割合は、2018年までは10%を切っていた。状況が変わり始めたのは2019年からだ。

・2016年/7.6%
・2017年/8.5%
・2018年/8.6%
・2019年/17.1%
・2020年/21.3%
・2021年/30.6%
・2022年/39.8%
・2023年/45.1%
JAFによる2023年の全国調査より)

 この急上昇は、警察による積極的な取り締まりの開始時期とほぼ一致する。

 信号のない横断歩道での歩行者優先は、先進国のしるしでもある。昔パリで、信号のない横断歩道に立っていたらクルマが止まってくれた。

 私は「これが先進国か!」と衝撃を受けた。クルマが途切れるのを待つつもりだった自分は、後進国から来た野蛮人のようで恥ずかしく感じた。

 先進国の中でもイタリアはあまり止まらないといった濃淡はあるが、それが純粋に民度の高さを表しているわけでもない。

筆者が2014年に訪れたモナコのモンテカルロ市街地コースにあるローズヘアピンにも信号のない横断歩道が。手前にはブレーキを促すような模様も記されていた(写真右奥
筆者が2014年に訪れたモナコのモンテカルロ市街地コースにあるローズヘアピンにも信号のない横断歩道が。手前にはブレーキを促すような模様も記されていた(写真右奥

 取り締まりがなければ、誰だってズルズルになる。自分だけルールを守るとかえって危険にもなる。かつてブラジルでは、クルマが信号を守るのは非常識で、日本人ドライバーが赤信号で止まったら、イライラしたパトカーが追い越していったという。

 かつてスピード超過が野放しだったイタリアでも、自動取り締まり装置が多数設置されたことで、現在はほぼ全員が制限速度の5%オーバー以内で走っている。取り締まりがあるからルールは守られるのだ。

 スピード超過や進路変更禁止違反の取り締まりは、どちらかと言えばクルマ対クルマの事故防止策だが、信号機のない横断歩道での取り締まりは歩行者保護策。現状、人命を守るうえでどちらの重要度が高いかと言えば、後者ではないだろうか。

■社会にとっての「善」を考える

 近年、私は、住宅街を走る際、横断歩道に歩行者がいないかどうかに最も注意している。いればもちろん停止する。数年前は、こちらが停止するとかえって戸惑う歩行者が多かったが、最近は当然という雰囲気で渡ってくれる。なかにはお辞儀をしてくれる歩行者もいて、大変気分がいい。

 以前は、そんなことをするとイライラする後続車もいたが、最近はほぼなくなった。一度でも取り締まり現場を見ると、人の意識はガラッと変わるのである。

 取り締まりの線引きが微妙なので、不満も噴出している。「歩行者が先に行けと合図したから行ったのに捕まった」といったものがその典型だ。

なかにはこのような複合的な横断歩道だって存在する。右奥からきた車両は向かって左側から渡ろうとする歩行者の姿を確かめるために最徐行する必要がある
なかにはこのような複合的な横断歩道だって存在する。右奥からきた車両は向かって左側から渡ろうとする歩行者の姿を確かめるために最徐行する必要がある

 しかし、何事も100%はない。摘発された当人が納得できない場合もあろうが、横断歩道でクルマが止まるようになりつつあるのは、社会にとって「善」ではないだろうか。

 まだ止まっていない半数強のドライバーは、自分が「後進国の田舎者」のままだと認識することを薦めたい。横断歩道で歩行者を優先するのは、「ノブレス・オブリージュ(貴族の義務)」だと思えば、積極的になれるかもしれない。

 なお、信号機のない横断歩道に関して、「自転車は歩行者に含まれるのか?」という論争があるが、警察は明快に「含まれない」としている。

 しかし、「自分は歩行者だ」と思っている自転車(電動キックボードも!)が多いので、現状は止まったほうがいいと考えている。

 こちらに関しても、自転車の取り締まりが強化されないかぎり、進展はないだろう。住宅街では横断歩道に限らず、クルマはひたすら譲りまくるのが吉だ。

【画像ギャラリー】信号のない横断歩道での一時停止に関する写真を見る!(3枚)画像ギャラリー

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