ポルシェ911GT3 究極の”合わせ込み” 水野和敏が斬る!

すべてのパーツがガッチリと高い精度で作り上げられている

 911GT3というと、ガチガチの印象を持つ人が多いでしょうが、実際に乗ると、ガッチリ作られたソリッドなボディやサスペンションのなかに、意図的に計算されたダルな部分がちゃんと設けられているのが特徴的。なので、GT3はとても扱いやすく仕上がっています。

 RRなので後ろが重たく前が軽いという基本的な重量バランスの特徴がはっきりと出ています。それがポルシェ911というクルマの原点。エンジニアリング的に見れば短所です、これは。だからポルシェは知っていてミドシップのボクスターやケイマンを作った。

 パッケージング的には理想的だし、実際に運転していても素直なハンドリングで911よりも速い。でもポルシェはRRの911を諦めることはせず、進化をさせてきた。

 フロントの荷重が小さく、グリップが乗せにくいから、あえてフロントをガチガチのピーキーにしないで適度なゲインのアソビを持たせてバランスさせている。ここが合わせ込みの妙味。開発ドライバーのレベルの高さを感じます。普通の911とはまったく違います。

 普通の911シリーズはブッシュなどの撓みやアソビを使ってバランスさせていますが、GT3はブッシュ類のアソビはいっさいなくソリッドに作っていて、先ほど言ったショックアブソーバーの超微少入力域を抜くことで一瞬のタメを作りタイヤの性能を引き出しています。

 ブレーキが素晴らしい。911シリーズ全般に言えることですが、特にGT3はいい。リアブレーキを積極的に効かせて、4輪全体でグッと沈み込むようにブレーキが効く。これはRRの重量配分によるところが大きいのです。

 速度を落とす「制動」のためのブレーキングと、コーナリングの初めにタイヤ荷重をコントロールするためのブレーキを、連続したブレーキング操作のなかで簡単にできてしまうということです。

 わざとハンドルを切ってABSが作動するほどのブレーキングをしても挙動を乱すことがない。普通のクルマだとリアの荷重が抜けて挙動を乱す場面でも、安心してブレーキをかけることができるのはポルシェ911シリーズならでは。グググと後ろから引っ張られるような制動感、しかもコントローラブル。

 大径ローターに大きなパッドを組み合わせて、あえてマスターバックの効きを弱くしてジワリとドライバーの踏力に応じた〝あたり〟を出しているからこのフィールを出せるのです。小さいローターでマスターバックの倍力に頼って強くパッドを押しつけるブレーキでは絶対に出すことのできないコントロール性なのです。

普通の道も走ることができるレーシングマシン

 エンジンは5000rpmを超えると豹変する。音も一段と大きくなるし、アクセルに対するレスポンスもシャープになります。でも、今日のようなコンディションの箱根の山道でレッドゾーンの9000rpmまで回すのはちょっと難しいですね。

 いっぽうで2000〜3000rpmあたりの回転域でもトルクの段付きがあるわけでもなく、スムーズなので街乗りでもストレスを感じることはありません。

 これはもう、自動車メーカーが作るクルマではありません。レースや予選アタックを知っているエンジニアと、限界領域でクルマと対話のできるドライバー、私がよく言う『感性エンジニアリング』の領域です。そんな人がいなければ、このクルマは作ることはできません。

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