ポルシェ911GT3 究極の”合わせ込み” 水野和敏が斬る!

 究極のポルシェ911ともいえるGT3を水野和敏はどのように評価するのだろうか!?

試乗した点数は98点!!

 現場や限界の走りを知っているエンジニアと、極限を知っているドライバーがタッグを組んで、言葉のやりとりはなく感性の響きあいで合わせ込んでいかなくてはこういうクルマを作ることはできない。ボク自身、このGT3には勉強させられた。

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究極の〝合わせ込み〟を感じる911GT3

 しかし凄いタイヤを履いています。ミシュランのパイロットスポーツカップ。これはほとんどサーキット用タイヤのようなもので、溝が浅くてスリックタイヤのコンパウンド。12月早朝の箱根の路面温度は0℃近くで半濡れ、タイヤが温まらないし、陽の当たらない路面にはうっすらと霜すら降りています。

 このタイヤは、こんなコンディションでは乗ってはいけないのでは? ポルシェの取説には、そういった趣旨のことが書かれているはずです……。

 いよいよGT3も2ペダルになりました。私がGT-Rで3ペダルをまったく考えなかったのは、より素早い、そしてミスのないギアシフトを追求すれば、自ずと2ペダル・デュアルクラッチ式に行き着いたからです。あわせて、コーナリングやブレーキングの楽しさが倍増する……。きっとポルシェも同じ考えでしょう。

 いつものようにゆっくりと走り出します。ステアセンター付近でほんのちょっと無反応領域がある。でも、これはポルシェのセッティングの妙味なのです。

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 つまり、GT3というクルマはサーキットでスリックタイヤを履くことが多いわけです。すると、通常のロード用タイヤとは異なり、トレッド面の溝部の撓みによる『逃げ』がない。スリックタイヤでステアのセンター付近をキチキチにアソビなく詰めてしまうと、神経質になりすぎてしまうのです。

 このためにショックアブソーバーの極微少入力領域、0・02〜0・03m/sec……、アブソーバーが動かないか動き出すかという領域を抜いてやるのです。タイヤ溝の変形、撓みの部分をショックアブソーバーの動きでカバーしてやるのです。これをしないと、またタイヤがしっかりと接地することもできない。スリックタイヤの特性を知っているから、こういうセッティングができるのです。

 グリップ荷重があるリアはトラクションしますが、相対的に軽いフロントはグリップが弱く簡単に押し出されてアウトに出て行ってしまう。それでも滑り出しの感覚は伝わりやすく、その後のコントロールが容易なのは、先ほど言ったスリックタイヤ用のショックアブソーバーセッティングのたまものです。

 極微少入力でダンパーがしなやかに動くので、タイヤのグリップが自然に回復する。これが一般的な突っ張るような足だとスバッと流れてコントロールする余裕がなかったでしょう。タイヤのグリップ力を引き出すセッティングです。ポルシェというメーカーがいろいろなタイヤを使い慣れている証拠ですね。

すべてのパーツがガッチリと高い精度で作り上げられている

 911GT3というと、ガチガチの印象を持つ人が多いでしょうが、実際に乗ると、ガッチリ作られたソリッドなボディやサスペンションのなかに、意図的に計算されたダルな部分がちゃんと設けられているのが特徴的。なので、GT3はとても扱いやすく仕上がっています。

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 RRなので後ろが重たく前が軽いという基本的な重量バランスの特徴がはっきりと出ています。それがポルシェ911というクルマの原点。エンジニアリング的に見れば短所です、これは。だからポルシェは知っていてミドシップのボクスターやケイマンを作った。

 パッケージング的には理想的だし、実際に運転していても素直なハンドリングで911よりも速い。でもポルシェはRRの911を諦めることはせず、進化をさせてきた。

 フロントの荷重が小さく、グリップが乗せにくいから、あえてフロントをガチガチのピーキーにしないで適度なゲインのアソビを持たせてバランスさせている。ここが合わせ込みの妙味。開発ドライバーのレベルの高さを感じます。普通の911とはまったく違います。

 普通の911シリーズはブッシュなどの撓みやアソビを使ってバランスさせていますが、GT3はブッシュ類のアソビはいっさいなくソリッドに作っていて、先ほど言ったショックアブソーバーの超微少入力域を抜くことで一瞬のタメを作りタイヤの性能を引き出しています。

 ブレーキが素晴らしい。911シリーズ全般に言えることですが、特にGT3はいい。リアブレーキを積極的に効かせて、4輪全体でグッと沈み込むようにブレーキが効く。これはRRの重量配分によるところが大きいのです。

 速度を落とす「制動」のためのブレーキングと、コーナリングの初めにタイヤ荷重をコントロールするためのブレーキを、連続したブレーキング操作のなかで簡単にできてしまうということです。

 わざとハンドルを切ってABSが作動するほどのブレーキングをしても挙動を乱すことがない。普通のクルマだとリアの荷重が抜けて挙動を乱す場面でも、安心してブレーキをかけることができるのはポルシェ911シリーズならでは。グググと後ろから引っ張られるような制動感、しかもコントローラブル。

 大径ローターに大きなパッドを組み合わせて、あえてマスターバックの効きを弱くしてジワリとドライバーの踏力に応じた〝あたり〟を出しているからこのフィールを出せるのです。小さいローターでマスターバックの倍力に頼って強くパッドを押しつけるブレーキでは絶対に出すことのできないコントロール性なのです。

普通の道も走ることができるレーシングマシン

 エンジンは5000rpmを超えると豹変する。音も一段と大きくなるし、アクセルに対するレスポンスもシャープになります。でも、今日のようなコンディションの箱根の山道でレッドゾーンの9000rpmまで回すのはちょっと難しいですね。

 いっぽうで2000〜3000rpmあたりの回転域でもトルクの段付きがあるわけでもなく、スムーズなので街乗りでもストレスを感じることはありません。

 これはもう、自動車メーカーが作るクルマではありません。レースや予選アタックを知っているエンジニアと、限界領域でクルマと対話のできるドライバー、私がよく言う『感性エンジニアリング』の領域です。そんな人がいなければ、このクルマは作ることはできません。

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