日産・三菱の足下が慌ただしい。
同じくアライアンス(提携関係)を結ぶルノーへFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が統合を持ちかけたのが2019年5月27日。しかしそれからわずか10日足らずの6月6日には、FCA自らがその統合案を撤回するに至った。
しかし日本のクルマファンからしてみれば、そうしたゴタゴタ云々よりかは「日産と三菱(とそのクルマたち)はどうなるんだよ!」といったところではないだろうか。
日産にとっては少々耳の痛い話になるかもしれないが、仮にルノーとの提携を解消したとしても、クルマファンからしてみると「で? 日産だけでいい車出せるの?」というのが大方の反応かもしれない。
しかしながら、それは日本のクルマファンの、日産・三菱への熱い、そして変わらぬ期待の表れだと表現しても決して間違いにはならないだろう。
ここまでベストカーが集めた日産・三菱のアライアンスの深化具合について、またそこから生み出されるであろうクルマたちの情報を整理してみた。
まだまだ予測の域を出ないが、秋の東京モーターショー2019では、次世代型e-POWERの出現もあるかもしれない。
果たして2社の未来は明るいだろうか?
※本稿は2019年5月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月10日号
■「2020年大攻勢」の準備が着々と進んでいる?
これまでにも幾度となくお伝えしてきた通り、日産の日本国内ニューモデル投入は停滞している。
海外に向けてはインフィニティブランドのニューモデルを積極的に投入したり、北米をはじめ中国やロシアなどに向けた日産ブランドのニューモデルを投入。
4月16日より開催されていた上海モーターショーには新型シルフィを世界初公開したし、それに先立つ4月12日には北米向けのコンパクトサイズの4ドアモデルVersa(日本では以前ラティオとして販売されていたモデルの後継車)が発表されているなど、新車開発そのものが停滞しているわけではないのだ。

しかし……日本国内はというと………、3月28日にデイズが発表されたが、これは2017年9月のリーフ発表以来、約1年半ぶりの純粋なるニューモデルの投入だった。
これまでベストカーでは、新型ジュークが開発最終段階で、昨年秋から冬にはモデルチェンジする、とお伝えしてきたが、その後開発に時間がかかり延期。
●2020年登場の新型ジュークは次期型RVRとプラットフォームを共用


今年の前半にもやっと開発完了のメドが立ったともお伝えしたが、それもどうやら再度延期となった模様で、日産の今年のニューモデルはデイズのみ、という。ジュークのモデルチェンジは来年、2020年の前半に決定したという。
この背景には日産自動車のグローバル企業としての戦略があることは当然ながら、三菱自動車とのアライアンスによる開発工程の見直し、日本市場に向けた商品展開ロードマップの見直しなどがある。
●ノートe-POWERの次期モデルも2020年登場

■「アライアンスの理想的な方向性」とは?
3月28日、eKシリーズ発表の場で三菱自動車の益子修会長は「日産と三菱、それぞれが得意な分野を活かして、お互いに共有して魅力的な商品を作り上げることがアライアンスのあるべき姿。進むべき方向性だ」と語った。
今回のデイズ/eKは先代型の三菱主導の開発から日産主導の開発へとなった。この背景には例の燃費不正問題が無関係だとは思えないが、一方で「あの問題以前から、次のモデルは日産が開発を主導することで決まっていた」と益子会長は言う。
●デイズ/eK EV

開発初期から運転支援システム「プロパイロット」を搭載することが必須とされていたこともあり、シャシーも含めてパワートレーンなど日産が開発するほうが理にかなっているというのがその理由。さらにピュアEV仕様も念頭に置いていることも日産主導の理由だと益子会長は言う。
今後の展開としてEV及びe-POWERは日産の技術、知見を最大限に活かす一方、PHEVは三菱の持つ技術を活用し、日産が独自に進めていた開発と一体化されることを明言している。
こうしたアライアンスによる開発体制の集大成となるのがミッドサイズプラットフォームだ。
具体的には日産では次期型エクストレイルに使用されるプラットフォームで、三菱では次期型アウトランダーになる。さらに日産ではこれをベースにCセグメントスポーツハッチバックが開発されることは既に別のところでお伝えしてきた。
●次期型エクストレイルはe-POWERでNISMOアリ!

パワートレーンはe-POWERが採用されるが、エクストレイルでは、ジュネーブショーに出展されたコンセプトカー「IMQ」に搭載されるとされた1.5Lターボe-POWERの搭載が有力視される。
車重が重く、4WDが求められるSUVには前後2モーターの4WDとなるこのe-POWERシステムがベストマッチ。
4WD制御技術は三菱の持つ、PHEV・S-AWC技術が盛り込まれることで悪路走破性、操縦性などに大きな進化が期待できる。よりハイパワー化したNISMOモデルの開発も同時並行で行われる。
●e-POWER搭載Cセグカー、三菱では次期型アウトランダー開発


基本プラットフォームを共用しながら三菱バージョンとして次期型アウトランダーが開発されるのだが、さらにここから発展するかたちで、前回の東京モーターショーに出展された三菱e-EVOLUTIONが市販モデルとして具現化することになる。
もちろんコンセプトカーがそのまま市販モデルになると言うのではなく、e-EVOLUTIONで示されたモーター駆動技術やデザインコンセプトが盛り込まれたスポーツSUVということ。
イメージとしてはまさに“ランエボSUV”とも言うべき三菱のフラッグシップイメージリーダーカーとなるモデルだ。
●ランエボSUVには e-EVOLUTIONの技術を投入


■2019年秋からの胎動を、ファンは楽しみにしていていい?
日産自動車の星野朝子専務執行役員は「日本市場を軽視しているということはない。日本市場に向けて、よりマッチさせたニューモデルを投入していく」と言っている。
開発に向けて動き始めたとの情報を得た「日本に向けたスカイライン」(このあと2019年5月16日に「プロパイロット2.0」の発表とともに2019年秋の登場を示唆)なども含め、日産三菱のアライアンスで生み出される日本のユーザーが待ち望んでいるニューモデルに期待したい。
●スカイラインは日本に向けて開発!!

■東京モーターショー2019に次世代のハイパワーe-POWER出現?
日産は3月のジュネーブショーでSUVのコンセプトカー「IMQ」を初公開した。全長4556×全幅1940mmのミドルクラスで、全高1560mmとSUVでは背の低いクーペタイプのSUV。
パワートレーンに海外ではコンセプトカーでも初となるe-POWERを搭載していて、今後は日本以外でもe-POWERを積極的に採用することを示したモデルともいえる。


日産は国内市場では今、e-POWERを拡販のカギと捉えている。そこで今年の東京モーターショーでは、e-POWERを搭載するこのIMQを実用面で進化させた新コンセプトSUVが日産ブースの主役となる見通しだ。
e-POWERはガソリンエンジンを発電用だけに使い、その電気でモーターを駆動して走るシリーズハイブリッド。
これまで採用されているノートとセレナは1.2Lエンジンと79~84psのモーターの組み合わせだが、IMQでは1.5Lガソリンターボエンジンと340hpを発生するモーターの組み合わせで、前後にモーターを配した4WDを搭載。
新コンセプトSUVもIMQの新型e-POWERターボユニットをベースに開発が進んでいるという情報がある。ハイパワー&先進4WDで、e-POWERは第2世代へと生まれ変わるわけだ。
デビューは2021年と予想。期待大だ。
●1.5Lターボ e-POWER

●次世代Zコンセプトの公開もある?
