日本車、輸入車に限らず熱狂的なファンから支持されているクルマがある。そのようなクルマは往々にして月販平均で2ケタよくて3ケタということも少なくないが、熱狂的な支持に支えられているトヨタハイエースはレジアスエースと合わせて月販平均4000台をオーバーする。
まさに『ハイエース信仰』とでも言いたくなるほど引く手あまただ。
ラージミニバンとしては同じトヨタのアルファード/ヴェルファイアも同じくらい売れるモンスターではあるが、ハイエースの魅力はどこにあるのか? 昔からのライバルである日産NV350キャラバンではなくハイエースを選ぶ理由は?
ハイエースの魅力について、渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA
ワゴンはあるが、別用途のクルマ
ハイエースは商用車の人気車だ。ハイエースバンの2018年における売れ行きは、姉妹車のレジアスエースを含めると、1カ月平均で4800~4900台に達した。これはアルファード(ヴェルファイアは含まない)の登録台数と同等だ。商用車としては絶好調に売れている。
開発者によると「グレードの内訳は、最上級のスーパーGLが約40%を占める。バンではあるが、ホテルが荷物の運搬と併せて、お客様の送迎に使うこともある。
またマリンスポーツなどを楽しむお客様が、仕事ではなく、趣味のアイテムを運ぶ空間としてハイエースを選ぶことも多い」という。
ハイエースで注意したいのはグレード構成だ。ハイエースにもバンと併せて「ワゴン」があるが、アルファード&ヴェルファイアとかヴォクシー/ノア/エスクァイアのようなミニバンとは機能が異なる。
ハイエースワゴンのシート配列は、ミニバンのような3列(乗車定員は7~8名)ではなく、4列(乗車定員は10名)になる。コミューターと呼ばれる5列シート仕様もあり、これは乗車定員が14名だから、中型運転免許が必要だ。
そしてワゴンのGLであれば4列目を左右に跳ね上げられるが、6名が乗車できる座席は残る。つまりハイエースワゴンは、大勢の乗員を乗せるマイクロバス的な用途を想定しており、ミニバンとは車内の造りが異なる。
そしてハイエースワゴンの全幅は、すべて1880mmとワイドだ。エンジンは2.7Lのガソリンで、価格はベーシックなDXが281万4480円、GLは304万8840円に達する。そのために一般ユーザーのワゴンに対する需要はさほど多くない。
アルファード/ヴェルファイアでは役不足
そうなると売れ筋は圧倒的にバンになる。冒頭で挙げた充実装備のスーパーGLは、後席を畳むと荷室長が2mを超える。後席を備えない1列目のみの3人乗りなら荷室長は3mだ。
床面はフラットで、荷室高もスーパーGLが1320mmだから、自転車やサーフボードのような大きな荷物も簡単に積める。車内で休憩したり就寝する時も使いやすい。
いっぽう、アルファード&ヴェルファイアは、車内の広いミニバンでも、高級セダンの居住空間を拡大したようなリムジンに近い発想で開発されている。
そのために上質な内装、オットマンの装着された豪華な2列目シート、音質のいいオーディオなどが備わるが、ハイエースのユーザーが求めるのは車内が「がらんどう」の動く箱だ。収納設備などは必要に応じて自分で装着する。
ハイエースはキャンピングカーのベース車両にも使われるが、実用性が高いのは、しっかりした常設ベッドを置いたシンプルな内装だったりする。
キャンピングカーを手掛けるメーカーのスタッフにも、「豪華なキャンピングカーでは、2畳くらいの小さな部屋に、ギャレー(流し)、コンロ、シャワールームまで備える。本当は装備を小さくシンプルに造り、寝る場所を広く確保すると使いやすいが、それを素直に造ったら利益が出ない。だから装備が増えてしまう」と自嘲気味に言っていた。
アルファード&ヴェルファイアでも、3列目シートを畳めば自転車などを積める。ただし荷室の奥行寸法は、3列目を畳み前方までスライドさせても1.7m前後だ。ハイエースなら2mを超えるから就寝しやすく、アルファード&ヴェルファイアと違って左右に跳ね上げた3列目シートが荷室側に張り出す使いにくさもない。
こういった実用的なメリットがあるから、クルマを趣味のツールとして使いたいユーザーは、アルファード&ヴェルファイアではなくハイエースを選ぶ。
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