【黒船来航!! 衝突軽減ブレーキ国際基準決定!!】日本車はいつから全車義務付けか!??

【黒船来航!! 衝突軽減ブレーキ国際基準決定!!】日本車はいつから全車義務付けか!??

 国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第178回会合(2019年6月24~28日)で、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の国際基準が決まり、約半年後の2020年1月から発効されることになった。

 決定した主な要件は、おおまかにいうと、静止車両、走行車両、歩行者に対して試験し、所定の制動要件を満たすこととする。

 エンジン始動のたびに、システムは自動的に起動してスタンバイすることとする。緊急制動の0.8秒前(対歩行者の場合、緊急制動開始)までに警報すること。

 国土交通省では、今回成立した国際基準の発効を受け、緊急対策に基づき、国内基準を策定するとともに、2019年内を目途に新車を対象にAEBSの義務付けを決定する予定。

 さて、この衝突軽減ブレーキの国際基準となったことで、何が変わるのか? 日本車のすべての新車に衝突軽減ブレーキが義務化されるのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ 独立行政法人 自動車事故対策機構 (NASVA) EURO NCAP


日本では国交省の衝突軽減ブレーキ認定制度やサポカー制度があるが……

 50㎞/hからの衝突被害軽減ブレーキをテストし、静止した状態(プリウス)<br>
 50㎞/hからの衝突被害軽減ブレーキをテストし、静止した状態(プリウス)

 以前から参加国間で合意を得ていた国連WP29での衝突被害軽減ブレーキの装着義務化が、2019年6月24~28日に開催されたスイス・ジュネーブの会合で正式に決定した。

 一斉義務化は2020年初頭に実施される予定。国土交通省は、2019年内にも義務化へ向けた国内基準の策定を行なうという。

 ちなみにWP29とは自動車基準調和世界フォーラムのこと。国連欧州経済委員会(UN-ECE)の下部組織としてクルマの安全性、排気ガスや燃費、ブレーキと走行装置、騒音、灯火類などの各要素の基準を参加国間で統一しようという枠組みだ。

 自動車メーカーによる最近のクルマの開発がプラットフォーム化して、効率良く優れたクルマの開発を行なっているのと同じように、クルマの安全基準や環境性能も先進国で規格の共通化を図れば、開発や生産の効率が上がり、ユーザーに安くて優れたクルマを提供しやすくなる。

 日本は英国とともに議長国として自動運転分科会を取りまとめているほか、ブレーキと走行装置についても副議長として英国とともに取りまとめを行なっている。

 つまり自動運転へとつながる制動や操舵関連の技術について、日本は先進国でもリーダーシップを発揮しているのだ。

 AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)とは走行中に前方の障害物と衝突する危険が生じたらドライバーに警告し、ドライバーが対応できない、あるいは操作が不十分な場合はクルマの方で急制動を実施し、衝突による被害を軽減させるものだ。

 車種によって対応できる速度の範囲も異なるし、歩行者も検知するのか、また昼間は認識できても夜間は認識できない車種もある。

 これまで衝突軽減ブレーキに関しては、国交省が認定制度を設けていたし、安全装備の充実具合を示すセーフティ・サポートカー(通称サポカー)という制度も設けたが、結局サポカー/サポカーS/サポカーS+/サポカーSワイドといったように細分化され、ユーザーにとって分かりにくいものになっている。

 厳密に評価しているJNCAPでさえも、メーカーの宣伝に利用されているのが大半であり、なかなか認知度が高まっていかない印象だ。

政府は高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、被害軽減(自動)ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載したクルマ(安全運転サポート車)に「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけ、被害軽減(自動)ブレーキを搭載したクルマ「セーフティ・サポートカー(サポカー)」とともに、官民連携で普及啓発に取り組んでいる
政府は高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、被害軽減(自動)ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載したクルマ(安全運転サポート車)に「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけ、被害軽減(自動)ブレーキを搭載したクルマ「セーフティ・サポートカー(サポカー)」とともに、官民連携で普及啓発に取り組んでいる
 国土交通省が認定する衝突被害軽減ブレーキのロゴマーク。AEBSは衝突被害軽減ブレーキの英名であるAdvanced Emergency Braking Systemの略称 <br>
国土交通省が認定する衝突被害軽減ブレーキのロゴマーク。AEBSは衝突被害軽減ブレーキの英名であるAdvanced Emergency Braking Systemの略称

 ここで改めて国土交通省が実施している衝突被害軽減ブレーキの認定制度について解説していきたい。

 国土交通省は2018年4月1日、乗用車の衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を有していることを国が認定する制度を創設している。

1:静止している前方車両に対して、50km/hで接近した際に衝突被害軽減ブレーキによる制動制御により、衝突しないまたは衝突時の速度が20km/h以下となること

2:20km/hで同一方向に走行する前方車両に対して、50km/hで接近した際に衝突被害軽減ブレーキによる制動制御により、衝突しないこと

3:1および2の衝突被害軽減ブレーキによる制動制御の少なくとも0.8秒前までに、衝突のおそれがある前方車両の存在を運転者に知らせるための警報が作動すること

 同制度の創設は、高齢運転者による交通事故を防止するために設置された「安全運転サポート車」の普及啓発に関する関係省庁副大臣等会議における2017年3月の中間取りまとめを踏まえたもの。

 対象となる自動車は、お固い言い回しになるが「道路運送車両法第75条第1項の規定に基づく型式の指定または輸入自動車特別取扱自動車の取扱いを受けた専ら乗用の用に供する乗車定員10人未満の自動車」で、自動車メーカーなどから同制度に係る申請があったもの。

 国土交通省は2019年4月23日現在、2018年3月に創設した衝突被害軽減ブレーキの性能認定制度において、2018年中に申請のあった自動車の認定結果を公表、国内自動車メーカー8社の67車種152型式について性能を認定している。

次ページは : 各自動車メーカーのAEBSに対する取り組み、搭載状況

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