【伝統の名機が30年の歴史に幕】なぜスバルは同じエンジンを長年使い続けるのか

なぜ長年使われた名機がいま生産終了に?

WRX STIと多くの部分を共用しながら、より設計が新しいエンジンを採用するWRX S4。同車の登場は、長年使い続けた名機に「引退」の二文字が迫っていることを予感させた出来事でもあった

 車の開発に関わる環境は、ここ10年で大きく変化しています。

 温室効果ガス削減と、それに関連した化石エネルギー問題、自動運転化技術の向上など、自動車メーカーは次々に誕生する技術や安全基準への対応をしつつ、独自性と商品力を向上させなければなりません。

 スバルも、優れた環境性能を持つFB型水平対向エンジンを2010年にリリースし、インプレッサスポーツやレヴォーグといった基幹車種に搭載しています。

 こうした動きの背景には、経済産業省が新しく取り入れることにした燃費基準「CAFE(企業別平均燃費基準)」も関係していています。

 これはすでにアメリカやヨーロッパが取り入れている自動車の燃費基準ですが、車種別ではなく、メーカー全体での平均燃費を算出し、一定の基準に達していなければ巨額のクレジットを支払わなければならないという制度です。

 この制度では、一つのモデルが燃費基準に達していなくても、燃費の良い他のモデルでカバーできるというメリットもありますが、全体の規制値が厳しければ、燃費の悪いモデルは足を引っ張ることになってしまいます。

 EJ20生産終了の決定の背景には、このユニットがこれまでかなり改良されてきたとはいえ、燃焼効率や環境性能よりもパフォーマンス優先に設計されていることもあり、さすがに改良だけで対応していくのは厳しい、と判断されたことにあると考えられます。

◆  ◆  ◆

 世界屈指のパフォーマンスを発揮するマシンを支えてきた名機EJ20。生産終了により一つの歴史が幕を閉じることになりましたが、水平対向エンジンの独自性によるスバルの挑戦はこれからも続きます。

 社会における車のあり方が変化する時代を迎えつつありますが、今後もスバリストを魅了する素晴らしい技術と車が誕生することを願っています。

◆「名機」EJ20型エンジンを積むWRX STI最後の限定車

 先述のように、EJ20型エンジンを搭載する最後の限定車として、「WRX STI EJ20ファイナルエディション」が発売されることとなった。同車はまもなく10月24日から11月10日まで予約を受け付け、限定555台を販売。

 応募多数の場合は、抽選となり結果は11月14日に発表。翌2020年1月から生産を開始する見込みとなっている。

【画像ギャラリー】伝統の名機搭載!! EJ20を積んだ名スバル車たち

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