今後の焦点—定着度を測る物差し
再発防止への打ち手の全項目が「実施中」となったことで、次の段階では“効いているか”を測る物差しが重要になる。例えば、節目会議での計画変更のリードタイム、試験の手戻り件数とその削減率、設備稼働の改善度合い、記録不備の減少、人材育成に関する資格取得率や現場での指導回数——こうした指標を継続的に確認・共有できると、社内外の納得感は一段と高まるはずだ。
あわせて、今回の枠組みは現場の負担を増やすこと自体を目的とするものではなく、必要な人・設備・時間を「正しく確保する権利」を仕組みとして明文化する取り組みだ、というメッセージも読み取れる。迷ったら節目で立ち止まり、異常は遠慮なく上げる——その挙動を後押しするのが経営の役割であり、三つの監督線の意味合いといえる。
トヨタは“改善を日常にする力”を自社の強みとしてきた。認証領域での取り組みも、地道な改善の積み重ねによって、製品の信頼と現場の働きやすさを同時に底上げすることが目標とされる。
前述の宮本本部長によると、「国交省への報告だけでなく、メディアの皆さまを通して一般の皆さまへも、定期的にこうした改善の報告をしてまいりたい」とのこと。マジか。
トヨタは2024年2月より、豊田章男会長が中心となって全グループ会社に呼び掛け、法規認証TPS自主研をスタートさせた。佐藤恒治社長からも「改善に終わりなし」、「認証問題の学びを風化させない」というメッセージが繰り返し出されている。今回の報告書はその「終わりなき改善への道筋」の途中経過のひとつといえる。
認証不正問題から1年半、「硬直化しない組織・制度づくりのため、常に見直し、報告し、チェックする体制を仕組み化する」という、なんともトヨタらしい改善策の成果に期待します。
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