乗用車シェア56.2%! 圧勝トヨタの「隙」を探せ!

乗用車シェア56.2%! 圧勝トヨタの「隙」を探せ!

2016年1〜12月の、乗用車(輸入車・軽自動車除く)販売シェアなんと56.2%。新車試乗で圧倒的な強さを誇るトヨタ。そんなトヨタに弱点はないのか? このままでいいのか? 日本市場はずっと「乗用車の半数以上はトヨタ車」ということなのか? 以下、有識者たちにトヨタ独走の理由と、そんなトヨタに(国内市場で)弱点や付けいる隙はないのか、聞いてみた。

文:渡辺陽一郎、石川真禧照、片岡英明
ベストカー2017年3月10日号



トヨタのひとり勝ちが続けば国内市場の競争力が薄れる


TEXT/渡辺陽一郎


2016年に日本で売られた新車の内、レクサスを含むトヨタ車の割合は32%であった。それが軽自動車と輸入車を除いた国産乗用車に限ると56%を超える。

要は近年ではホンダや日産が軽自動車に力を入れて登録車が弱まり、トヨタ比率が圧倒的に増加した。

トヨタの店舗数はトヨタブランドが約4900店舗、レクサスは約170店舗だ。約2100店舗の日産、約2200店舗のホンダよりかなり多いが、だからといってトヨタ車が登録車の約半数を占める理由にはならない。

そうなると商品力の違いが考えられるが、トヨタは特別に優れたクルマは開発していない。プリウスは現行型でよくなったが、先代型の欠点を改善しただけだ。

さらにリーマンショック直後の2010年に発売された先代パッソと現行ヴィッツは、内外装と乗り心地に不満があった。現行パッソでは、開発を担当したダイハツ自らが「先代型は基本性能が低かったので、新型は軽自動車を手本に開発した」と述べている。ヴィッツも2010年に発売された後、2012年に質感を改め、2014年と2017年には溶接箇所を増やした。改善の余地が多かったからだ。

トヨタの2016年における世界生産台数は約897万台だが、国内で売られた台数は約153万台。国内比率は約17%で商売的にはオマケの市場だ。日本で重要なコンパクトカーの魅力低下も含め、トヨタが国内市場に対して優しいわけではない。

■シェア急落の原因は手抜き

ではなぜトヨタが登録車市場でこれほどのシェアを確保したのか。それはほかのメーカーが、トヨタ以上に日本で手抜きをしているからだ。

例えば日産は、かつてアンチ・トヨタ派の砦であった。1967年に発売された3代目の510型ブルーバードは、後輪にセミトレーリングアーム式サスペンションを採用して4輪独立懸架を成立させ、クルマ好きから高く評価された。「ケンメリ」の4代目スカイラインは1973年に約16万台を登録。今のアクア並みの売れゆきで、現行スカイラインの38倍に達した。

1975年の国内販売台数は、トヨタが約144万台、日産が約118万台だ。日産はすでに販売面で負けていたが、今のトヨタの35%に甘んじる状態ではなかった。

日産が没落したのは、経営危機のあとに再建を図って主力市場を完全に海外へ移したからだ。2016年に売られた日産車のうち、国内比率は10%弱と国内が弱い。

そして2016年に発売された現行セレナは、国内では2年半ぶりの新型車だったから販売が低調なのも当然だ。国内の販売順位はトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに抜かれて日産は5位になる。

ほかのメーカーも新型車の投入が滞り、マツダは日本の売れ筋ジャンルとされるミニバンから撤退。コンパクトカーもデミオのみだ。2016年の対前年比は約18%の大幅な落ち込みで、国内は見放された印象を受ける。2016年の世界生産台数の内、国内の販売比率は13%だった。

ホンダは新型車を比較的綿密に投入するが、発売時期に偏りがあり、過密になったり時間が空いたりする。過密になると販売現場も多忙になり、高価格車は手薄になる。ステップワゴンやオデッセイの販売不振は、フロントマスクなども災いしたが、同時期に発売された軽自動車などの間に埋もれた。

■国内市場の活性化が必要  

トヨタのひとり勝ちが続くと国内市場全体の競争力が薄れる。トヨタ自身も緊張感が削がれて悪影響が生じる。

他メーカーが改善すべきは新型車の増加だ。予算を費やせないなら、スバルXVのような既存の車種をSUVに発展させたり、ハイウェイスターのようなエアロ仕様でもよい。新型車を発売すれば相乗効果が生まれる。新型車を目当てに来店しながら希望に合わず諦めた顧客が、ライバル車を購入することもある。

国内向けの商品開発を怠けると、海外向けでも次第に日本車らしさが薄れ、世界戦略に悪影響をおよぼす。開発に携わる優秀な人材が集まらないという事態も起こりうる。


トヨタはディーラーの数、質で強みがある。しかしそれでも圧倒的なシェアを握る理由は、やはり製品にあるのではないか

次ページ:では具体的なトヨタの弱点&隙を探してみよう!



ハイブリッド車に力を割いているため……


TEXT/石川真禧照


これはスキではありませんが、まずトヨタの販売台数が多いということの理由に関してです。これは単純に考えてディーラーやセールスマンの数が多いからといえます。レクサスも含めて、5チャンネルもあり、日本全国どこに行っても、トヨタのディーラーがある。セールスマンが親戚に1台売っただけでも、そのほかのメーカーと比べて圧倒的に売れてしまう。販売力があるので、クルマのいい悪いだけではない部分ですね。

スキ いついては、これがなかなか難しい。最近のトヨタ、もっといえば豊田章男社長は、大企業病と言われた過去の悪い部分を、カンパニー制をとるなどして潰し、克服しています。このことも含めて、どんどんトヨタの弱点がなくなってきているんです。

以前は、社長が試乗するテストコースに合わせてクルマを作っていたせいで、サーキット試乗会ではよかったのに、公道試乗の時には乗り心地が悪くて閉口したこともありました。ただそれも最近ニュルやラリーといった道の悪い環境でのデータが豊富になったためか改善してきています。

たくさんあった弱点に対して、的確に手当をしているように感じる。ということで、なかなかスキを見つけるのは難しいですね。

現状で課題があるとすれば、ハイブリッド車の開発に力を割いていたため、EVなどの電動化技術が後れをとっていることでしょうか。ヨーロッパメーカーがこの分野では先行しています。

アンダークラスの質感と安全装備の標準化


TEXT/片岡英明


スキというか、弱い点はありますね。まずコンパクトカーはバリエーションは多いけれど、アクア、シエンタ以外はそれほど勢いがない。ランキングでは上位のアクア、先日ハイブリッドを投入したヴィッツがモデル末期で息切れ気味。ヴィッツのハイブリッドは、爆発的に売れるほどの力はないでしょう。どのクルマも、トヨタの販売力で保っている状態です。


コンパクトカーは、次期型にはTNGAを投入すると思いますが、根本的な底上げが必要になっていますね。


ヨーロッパの同じクラスは、プジョー、VW、ルノーなど面白い(楽しい)クルマが多い。トヨタのハイブリッドは燃費はいいけれど、実用性ばかりを追い求めていて、感性に訴えかけるような走る面白さがない。内装は樹脂打ちっ放しで質感が低く、正直レンタカーのイメージが抜けません。


下のクラスは革も痛みやすい、シートなどは手触りが悪いなど課題も多い。しかし、このクラスをよくしていかないと、ヨーロッパ車にユーザーを持っていかれてしまうでしょう。一度ヨーロッパ車に流れたユーザーは、なかなか戻ってこない。この層のユーザーを離さないための策を打たなければいけません。


上のクラスの上質感についはヨーロッパ車と肩を並べるくらいまでやっと来たかなと思う。しかし、オーリスはライバルをVW ゴルフと設定しているものの、その実力は及ばないなどまだ課題が残っています。


あと最近ニーズが高まっている先進安全装備もオプションではなく、全車標準装備にしなければいけませんね。スバルがインプレッサでアイサイトと歩行者エアバッグを全車標準装備にしてきたが、本当ならば業界トップのトヨタが最初にやるべきこと。そういった動きが遅い。


最近は商売優先で、RAV4やIQ、カリーナEDなどのような、スキマを狙った面白いクルマがない。量を生むのも大切だけど、質を上げていくことも重要です。日本市場はこれからそんなに販売台数は伸びないので、次の一手を打たないと飽きられてしまうでしょう。


ハイブリッド&PHVに関しては販売・技術力ともに国内トップを走り続ける。しかしその優位が多方面の技術進化にかげりをもたらしている?

次ページ:国産他メーカーがトヨタに勝っているところは?



それぞれの得意分野なら勝ってる?


TEXT/石川真禧照


クルマ作りの視点で見てみると、トヨタがハイブリッド車開発に力を入れていたのは、日本の市場を見ていたから。電気自動車の開発に乗り遅れたのは、それが原因でもあります。


で、それと違ったのが日産。日産は海外市場を見据えたグローバルな見方をしていて、これは経営再建時にゴーンさんがCEOに就任したことが要因と言えます。


トヨタは日本を中心(もちろん海外も考慮しているが)にラインアップを揃えたのに対して、日産は海外市場偏重で、国内市場を軽視していると怒られることもあったが、一貫してグローバルを見ていた。そのおかげで現在北米など海外市場での業績が好調となっている。  それとは違うがマツダ、スバル、スズキといったシェアは低いが、会社として小回りの利くメーカーは、独自の新しいクルマ作りを行っている。マツダはミニバンを捨てて、ディーゼルエンジンとSUVなどに力を入れた。


スバルやスズキは、大幅に刷新したプラットフォームを採用して、今までよりもレベルを上げてきた。


トヨタもカンパニー制をとって、以前よりも多少小回りが利くようにはなっているが、この3社に比べると、まだそこまでには達していないというのが率直な見解だ。これは、3社がトヨタに勝っているといえるだろう。

小さい車の楽しさとデザイン


TEXT/片岡英明


スバルAWDと、アイサイトというアイテムを軸に、燃費性能では劣るものの、クルマ好きの人を取り込んでいるのがスバル。マニア向けともいえますが、トヨタには少ない走る面白さを追求したモデルを多く揃えています。


あとスズキは、長年の軽自動車の開発のノウハウを持ち、スイフトなど走る楽しさを乗り手に感じさせるクルマを作ることができるメーカーだと思います。発展途上国など海外でも人気が高いですね。


最近スズキは軽自動車だけでなく、イグニスやバレーノといった登録車にも力を入れていますが、以前のように大ハズレをしなくなったのは、地力がついてきたということでしょう。


スズキやダイハツなど軽自動車を得意とする会社のクルマで驚くのは、アイドリングストップ機能と軽量化技術。この2つは、軽自動車のほうがより進んでいます。最近は外装に樹脂部品を積極的に採用したり、ムダなものを徹底的に省くなど、トヨタよりもかなり攻めています。小さいクルマを作り慣れているメーカーならではのノウハウが注ぎ込まれています。


あと軽自動車を得意とするメーカーでいえるのは、デザイナーが好きな顔をデザインできることが強みでしょう。私は軽自動車というのは、それぞれ独自の顔を持っているから売れているんだと思います。


トヨタや日産のように、小さいクルマから大きいクルマまで、その時代のファミリーフェイスを無理矢理採用するスタイルはダメだと思います。最近ホンダもこの傾向が強く、みんな同じ顔に見えてしまいます。


トヨタ、日産、ホンダも昔はいいデザインが多かったんです。しかし、5ナンバー枠に収めるというこだわりを捨てた時から、一気に洗練度が下がりました。かぎられた枠のなかでやるから磨かれていたものもあるということです。


デザインは個人的な好みも影響しますが、トヨタはキーンルックをコンパクトカーにまで採用するのはダメだと思います。バランスを崩してしまっています。


スズキのハスラーやスペーシア、ダイハツのタントにキャンバスなど、どれも同じ顔がないから売れているんです。これはトヨタにはないもので、この2社が勝っているものといえるでしょう。


他メーカーも個々の得意分野ではトヨタに勝てる技術力や品質、商品力を持っている! 頑張れ日本メーカー!! 切磋琢磨してほしい!!

 

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