2025年の日本市場のEV販売台数は、全新型車販売台数の約1.6%。本連載「第1回」で、「BEVが普及していくためにはまだまだ多くの課題があり、時間がかかる」ということが分かった。いっぽう日本政府は「2050年のカーボンニュートラル社会達成」という目標を掲げ続けている。脱炭素社会達成は必須、でもBEV普及は困難。タイムリミットはあと24年間。いったいどうすれば達成できるのか? 他に切り札はないのか? 「あります」と語るのは、自動車経済ジャーナリストの池田直渡氏。本稿では、池田氏を編集部へお招きし『EV急進派は負けたのか?』を題材に氏に語っていただいた。第1部「なぜBEV急進論は急激に盛り上がり、急速に勢いを失ったのか」に続く第2部のテーマは、「マルチパスウェイの本命に『代替燃料』が名乗り出る」。本稿は「第2部」となります(全3部でお届けします)。
文:ベストカーWeb編集部、池田直渡/画像:池田直渡、ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
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司会: (ベストカーWeb編集部・角田伸幸、以下、角田):今回は、「マルチパスウェイの本命に代替燃料が名乗り出る」というテーマで、合成燃料、条件付きの現実解としてのエタノール含有燃料の可能性と直近の動きを、池田直渡さんに紹介していただきたいと思います。
自動車経済ジャーナリスト・池田直渡氏(以下、池田): はい、よろしくお願いします。
司会(角田):池田さんは2025年10月、単行本『EV手のひら返しと日本の勝ち筋』を上梓されました。この本では世界的なEVシフトとその後に起きた「手のひら返し」を読み解きつつ、日本の自動車産業が持っている「隠された伝家の宝刀」について光を当てています。今回お話しいただくテーマとも関わりが深いので、気になる方はぜひお読みいただきたいと思います。それでは池田さん、よろしくお願いします。
池田:はい、ここからは、現在マルチパスウェイの本命とされている代替燃料についてお話しします。この話をする前に、今のヨーロッパのBEV普及率を紹介します。ヨーロッパでは多い国では約20%までEVの比率が伸びてきました。で、この先1.5倍の30%になったとしても、残り70%をどうするのか、と解決策を練らなきゃいけないわけです。
脱炭素化へのエース的存在と目されていたBEVが30%しか取れないとすると、これから出てくる「何か新しいもの」にいきなり70%を任せる……って、なかなか考えにくいですよね。
司会(角田):そうですね。今まだわからないものが突然パンと出てきて、7割取っていくというのはなかなかないと思います。
池田: そうすると、やはり従来の内燃機関の延長線上にある「低炭素技術」を使うしかない、というのがベースラインにあります。EVは走行中CO2を排出しません。これ「ゼロカーボン」と言われていますが、実際にEVを作って廃棄するところまでのライフサイクルアセスメント(LCA)のなかでは、ゼロカーボンとは言えないんですね。まずバッテリーを作る時に結構大量のCO2が出る。
司会(角田):たしかに。
池田:EVをリサイクルしたり廃棄したりする時にもCO2が出る。それから発電も、よほどの国じゃない限り、CO2が出る発電方法が結構混じっている。例えば火力発電とか。
つまり、EVは走行中はCO2排出ゼロだけれど、そのEVのライフサイクルで見た時には、結構CO2を出しているじゃないかとなる。そうするとゼロカーボンというのは、実は「ある瞬間」を切り取って「ゼロだね」と言ってるだけだと。
司会(角田):なるほど。言ってるだけ、の話ですね。
池田:例えていうと、ダイエットするために今日一日絶食しました。でも、昨日ドカ食いしています……みたいな話ってあるわけじゃないですか。
司会(角田):意味ないですね。
池田:そう、意味ないわけです。本当はちゃんとライフサイクルで見なきゃいけない。だから「カーボンニュートラル」という概念が出てきたのです。CO2などの温室効果ガスを出す量と、木や森などが吸収する量を同じにすることで、地球全体で見た時に「差し引きゼロ」、「実質ゼロ」にする、という考え方ですね。
その概念のひとつとして、植物を原材料にして燃料を作るという方法があり、これが代替燃料ですね。「ゼロカーボン」というのはそもそもフィクションだよということなんですけども、現時点では「2050年にカーボンニュートラルの社会を実現」という話は、世界中で撤廃されてないんですよ。
司会(角田):それはしっかり生きているんですね。
池田:ええ。ここにきてトランプ大統領だけ「地球温暖化なんてまやかしだ」など、ちょっと怪しいこと言ってるんですけど、世界全体のコンセンサスとしては(2050年のカーボンニュートラル社会達成は)まだ生きています。
実際、今のモータースポーツの世界ではe-fuel(イー・フューエル)という100%化学合成の燃料で走っています。モータースポーツはわりとコストがかかってもいい世界なので、スーパー耐久でもカーボンニュートラル燃料を使うチームがあるし、2026年のF1も「持続可能燃料の使用」が義務化され、WRCも変わっていく。……という背景があり、今カーボンニュートラル燃料については新しい期待がすごく盛り上がっているところですね。
【参考記事】サステナブル燃料の地産地消が始まる!? てかサステナブル燃料ってなによ
司会(角田):冒頭で紹介した並んでいるドラム缶の画像がe-fuelなんですね。これが燃料……と。
池田:そうです。それで、化学合成燃料には、何十という種類があるんです。そのなかでいま最も現実的なものだと言われているのが「バイオエタノール」(再生可能エネルギー燃料)です。要はアルコールですね。例えば、日本だったら米から日本酒作るじゃないですか。で、イギリスなどでは麦からビール作ってますよね。それからブドウだったらワインができるし。
司会(角田):ふむふむ。
池田:人類はありとあらゆるデンプンを発酵させて、酒を作る技術を6000年以上にわたって磨いてきたわけですよ。それで、もっというと、農耕の歴史は1万年以上と言われていますから。この長い間に人類が取り組んできた農作物を作る技術と、発酵させる醸造技術。この2つが組み合わされるとバイオエタノールができるので、人類にとって未知の技術じゃないんですよね。
司会(角田):かなり前から人間って酔っ払ってきたんですね。













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