「代替燃料」にするための酵母まで作るトヨタ
池田:トウモロコシから誕生するバイオエタノールで、いまひとつ問題になっているのは食物との競合の部分です。世界には飢えてる人がいるのに、先進国は金の力で穀物(トウモロコシなど)を買いあさって燃料にしちゃうなんて、けしからんじゃないかと。まずは飢餓をなくしてからだ、という声が実際にあります。でも、アメリカで作っているトウモロコシは、人間が食べる用じゃないんですよ、もともと。
司会(角田):え、そうなんですか。
池田:人が食べる用もあるかもしれませんけど、大量に作ってるのは飼料用だったりするんです。だから人間が食べても美味しくないんですよ。もちろん、飢餓状態のところでは、美味しい/美味しくないの価値基準を語る状況ではないと思いますが、アメリカ人からすると「だってこれ人間用じゃないんだから燃料作ってもいいでしょ」と考えて、バイオエタノールを作っている。
ここまで話をして、日本では作れないのか? という日本の技術力も気になりますよね。日本の場合は、トヨタが実験農場を作り、いわゆるソルガム(雑穀)からバイオエタノール開発の実験をしています。いろんな品種改良までやってまして、トウモロコシもそのひとつですね。
司会(角田):え、トヨタって酵母まで作ってるんですか?
池田:そう。で、トウモロコシは食べた後、芯が残るじゃないですか。また、茎や葉っぱも食べられない。でもトヨタは、そういう捨てる部分を発酵させて、アルコールにするための新しい「トヨタ酵母」というのを作ったんですよ。
司会(角田):そこまでやる! ゴミとなる部分も有効活用し、発酵させられる酵母を作ったんですね。
池田:そうなんです。トウモロコシの茎や葉などの農業廃棄物を、トヨタ酵母を使って、エネルギーの原料にできるようにしたという凄い話なんですね。
でもアメリカも、もちろん日本も、ブラジル以外の国では他国へ普及させるほどのバイオエタノールの量が作れていません。投資にかかる費用をどれぐらい見込むかという話もありますし。各国いろんな迷い方をしているんですけど、とりあえず始めないことには意味がない。じゃあ「ドロップイン」という考え方をしましょう、というのがいま世の中で出てきています。
司会(角田):ドロップイン?
池田:つまり、既存のガソリンに何パーセントかエタノールを混ぜちゃおう、というものです。
司会(角田):さっきのブラジルの話と繋がりますね!
池田:で、今ですね、2030年に向けて、日本の経済産業省が「E10」、つまりガソリンにエタノールを10%混ぜて提供しようとしています。仮にこれが完成したとします。いま日本全国で乗用車保有台数が6200万台あり、そのうちの(使うガソリンの)10%がカーボンニュートラル燃料になったとすると、620万台のEVが売れたのと同じことになるじゃないですか。いま日本では年間6万台しかEVが売れてないので、ざっとその100倍分のCO2削減効果となるわけです。
司会(角田):こりゃ凄いな。
池田:まぁもちろん、その6200万台の10%というのは累積の話だから、単年度の6万台と比べるのはフェアじゃない話です。でも、1980年代以降に生産されたクルマであれば、まったくの無加工でそのまま10%入れてもたいてい大丈夫だと言われています。それが20%の配合(「E20」)になると、燃料系の配管のゴムなどが劣化してしまうのでゴム管を代えなきゃいけない。でも、例えば車検時のゴム管代えはたぶん数万円くらいですむので、そこに補助金を出して対応してもらう、とか。
司会:(角田): おお。確かに敷居は高くないですね。
池田:そうしちゃえば20%までいけるわけです。そうすると、単純計算ですが、BEV1240万台分の脱炭素効果になるわけです。凄い話じゃないですか。
もっと言うと、そのE10から始まって、段階的にエタノールの比率を増やしていって、E100まで順番に刻んでいけば、2050年のカーボンニュートラル社会ができちゃうと思いますよ。
司会(角田):それが可能であれば、今まで乗ってきた内燃機関(純ガソリン車)も、買い替えずに乗り続けることができますね。
池田:ただ、ひとつのものに寄りかかるのは危険です。例えばこの先、トウモロコシの世界的な病気。牛でいえば狂牛病があったじゃないですか。トウモロコシにああいうことが起こらないとは限らないので、サトウキビもあったほうがいいし、電力で走るEVもあったほうがいいし、あるいは場合によっては少し化石燃料も生かしておいたほうがいいかもしれない。
だから、準備ができるまで少しずつ石油の使用量を減らしながら、準備を整えていって、代替的な素材をきちんと探し出していくという時間を、やっぱり我々は無視しちゃいけないなと。
司会(角田):エタノールの配合割合を10、20、30と増やしていくというのは、希望が持てますね。
池田:先ほど話に出たブラジルのフレックス・フューエル・ビークル(FFV)。これはどんな比率でも大丈夫なんですが、ガソリン専用に設計されたエンジンではどうなのか、具体的に配合具合を説明すると、E10(10%)、E20(20%)、E25(25%)でも大丈夫。でも、26%以上になると、車種によってちょっと対策が必要という状況があります。
司会(角田):簡単に全部OKとはいきませんよね。例えば低温始動、燃焼対策などはちょっとコストがかかりそうな感じですね、車両側にも。
池田:従来のガソリン専用のエンジンに適合させるのは大変かもしれませんが、前述のように、ブラジルではもうFFVが一般的に走っていますので。そうしたバイオエタノー前提設計のエンジンを積んだ新車のFFVならなんの問題もない。
司会(角田):改めてブラジル、進んでいることが再認識できました。続く第3部は「カーボンニュートラル社会への実現に向けて日本の自動車産業はどう動くのか!?」を話していただきます。
(第3部に続く)












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