チャイルドシートの使用時はエアバッグに注意【クルマの達人になる】

 ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数480回を数える人気の連載だ。

 今回はチャイルドシート使用時の乳幼児の危険性に迫ります。

文:国沢光宏
写真:shutterstock
初出:ベストカー2016年8月10日号『クルマの達人になる』より再録


運転席よりも「危険」な助手席エアバッグ、更新時に講習を!

 過去に助手席にいた3歳のお子さんが、エアバッグの展開により亡くなったというニュースが報ぜられた(編註:2016年2月に発生した、母親が覚醒剤影響下で交通事故を起こし、同乗していた女児が亡くなった事故)。

 その後、運転していた母親から覚醒剤反応出たこともあり、エアバッグの件はうやむやになってしまったのだが、お子さんに目立った外傷はなく、胸部圧迫の痕跡を残していたそうな。

 やはり死因は助手席エアバッグによるものだと考える。亡くなった貴重な命に報いるためにも、再発防止の観点から検証してみたい。

 まず助手席エアバッグの特徴だが、運転席と比べはるかに大きくてパワフルだ。運転席エアバッグはハンドル上面で展開するため、腕の長さの3分の2くらいの距離しかストロークせず、展開速度も助手席より遅い。

 いっぽう、助手席はたいていダッシュボードの上面で展開し、助手席の乗員の胸部と顔面のあたりまで瞬時に到達する。

 ストロークが長いだけでなく、展開する速度も速い。当然ながら運転席用より強力なインフレーター(炸薬)を使う。ものすごいエネルギー量です。

 亡くなった3歳児が、仮に助手席に座っていた場合、シートベルトをしていなかったとしても、市街地で電柱に衝突した程度の速度域なら助手席側エアバッグの下側が、おそらく顔面と接触。無事では済まないと思うけれど、擦過傷などのケガ程度で済んだと思う。

 なぜ胸部に亡くなるような衝撃を受けたのか? 普通なら考えられないが、ひとつしか考えられない。エアバッグの前に立っていたような状況です。

 この乗り方、休日などたまに見かける。お子さんとしては助手席に座っていたら景色が見えないけれど、フロアに立てば視界よくなる。助手席の上に立ち、手をダッシュボードに置くような乗り方も同じ。

 その状態で衝突し、長いストローク持つ助手席エアバッグが展開したら、幼児の胸のあたり強く長く押すことになるだろう。大きくてパワフルな助手席エアバッグを胸部で受けてしまう。

 大人が本気で蹴ったサッカーボールを胸で受けるような衝撃である。

 肋骨の強度も充分確保できていない3歳児なら、心臓そのものを強く押す。今回亡くなった幼児は、前述のとおりほとんど外傷なかったという。

 こんな子供の乗せ方をしているベストカー読者はいないだろうけれど、クルマに関心のない人だと気にしないのかもしれません。

 助手席エアバッグから1mの距離は、幼児は立ち入り禁止というイメージでよい。本来なら自動車ディーラーなどで教えればいいが、中古車で買った人などはフォローできない。痛ましい事故を減らすにはどうすべきか?

 これはもう免許の更新時に新しい技術をキッチリ教えるしかなかろう。私が受けた前回の免許の更新も、その前の更新も、エアバッグについての説明などなし。

 「乳幼児はチャイルドシートに座らせること」とだけ。今回の事故も基本的にはチャイルドシートに座らせてなかったことに起因するのだけれど、エアバッグの危険性を認識しない限り「ホンの少しの距離だから」と助手席に立たせるようなケースはなくならないと思う。

一部の輸入車などでは、チャイルドシート使用時にはエアバッグのスイッチを切る旨の説明書きがある車種も

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