熱効率48%――「レンジエクステンダー」エンジンの衝撃
草鹿:もう一点、中国の奇瑞(Chery)とヨーロッパのエンジニアリング会社AVLが発表した「高膨張比火花点火エンジン」も見逃せません。ホンダのEXlinkや日産の可変圧縮比機構も参考にしていて、圧縮比16〜17に対して膨張比25.5。ピストンのストロークを可変にして大きく膨張させることで、熱効率がなんと48%に達します。
BC:燃効率48%まで行くんですか。これは発電用のエンジンですか?
草鹿:そうです。レンジエクステンダー用エンジンで、スイートスポットで48%に達するエンジンです。これからは、46%から50%を超えるエンジンが、ハイブリッドの熱効率の肝になっていくと思います。

BC:充電用にエンジンを回して、モーター駆動で走らせる、いわゆるシリーズハイブリッド車が増えてゆくということですね。
草鹿:そうですね。一方、アウトバーンのような高速走行が多い場合には、フォルクスワーゲンの新しい「オールニューハイブリッド」のようなタイプが出てきます。直噴3気筒ターボのダウンサイジングエンジンで、熱効率自体は最高38%とそこまで高くないんですが、高速走行時にエンジンとタイヤを直結できるので、その38%を余すことなく高速で使えます。通常、街中ではシリーズハイブリッドとして使う。今、世界最先端の研究領域は、ハイブリッドシステムの競争と、その根幹をなすエンジンの高効率化の2つです。
BC:燃料の面ではどうなっていきますか?
草鹿:エタノール比率は20%ぐらいがマックスだと思います。その先は、グリーン水素と大気中から回収したCO2で合成する「e-fuel」に置き換わっていきます。ディーゼルのほうは、アウディ・メルセデスとも2段階過給(通常のターボチャージャーと電動コンプレッサー)を採用していて、圧力比は最大1.7ほど。アウディはV6の3L、メルセデスは直6の3Lで、コンセプトの近いディーゼルエンジンが出てきています。これが「HVO」対応で、欧州における乗用車の大きいサイズの最先端ということになります。
BC:すくなくとも欧州では、「乗用車のほぼ全域」が、カーボンニュートラル燃料への置き換えへの目処が立っている…ということですか?
草鹿:立っていると思います。小さいクラスの一部にはBEVが入ってくると思いますが、残りは、ガソリンエンジンはストロングハイブリッド、それとディーゼル(こちらは48Vのマイルドハイブリッドと組み合わせ)が中心になるでしょう。
純ガソリン車は消える。2030年代の車重別「棲み分け」地図
BC:草鹿先生が予測する、2030年代以降の駆動ユニット別の自動車の割合ってどんな感じなんでしょうか?
草鹿:グローバルで、ということであれば、まず純粋なエンジン車(ICE)はなくなっていきます。軽自動車から1.9tまでの乗用車はストロングハイブリッド(プラグイン含む)が中心になり、それより車重が上がるとディーゼルエンジンになっていくでしょう。
BC:ええと……、日本政府は2035年までに新車販売の100%を電動車化、2050年にカーボンニュートラル化する目標を掲げています。草鹿先生は、この目標、達成可能だとお考えですか?
草鹿:日本の場合、「電動車」にはハイブリッドも含まれるので、達成できると思います。ガソリンの乗用車はストロングハイブリッド化が非常に重要になります。ただ、燃料対応は欧州と比較すると日本のほうが遅れているので、そこをどうするかですね。
BC:軽自動車もストロングハイブリッドになっていくんですか?
草鹿:軽自動車にもいくつか階層がありますが、まず営業車のようなビジネスユース、いわゆる廉価モデルは、当面ガソリンエンジンのままでいくでしょう。車重が650kgクラスは、2030年の燃費規制をクリアできれば純ガソリンエンジンのまましばらく残ると思います。いっぽう850kg〜1t近い、いわゆる「贅沢な軽自動車」は現在の軽市場ではボリュームゾーンですね、こちらはオールインワンの使い方をされる方が多いので、ストロングハイブリッドで燃費を改善していくのが重要と思います。
BC:いわゆるスーパーハイトワゴン、N-BOXやスペーシア、タント、ルークス/デリカミニなどのクラスですね。
草鹿:ダイハツが昨年(2025年)のジャパンモビリティショーで(参考出品のかたちで軽自動車サイズのシリーズハイブリッド車を)出したのを見て、できるんだなと分かりました。軽自動車枠はストロングハイブリッド、それに日産SAKURAのようなBEVも増えてくるでしょう。

BC:コンパクトカーはどうですか?
草鹿:そのクラスはハイブリッド化しないと燃費規制をクリアできないと思います。ヤリスぐらいのストロングハイブリッドだと結構いけるでしょう。ある外国メーカーのエンジンが熱効率48%に到達していて、日本メーカーがそこに届いていないとなると、燃費で差が出てきます。それをやらないと、結構苦戦するのではないかと思います。
後編では、商用車や水素の現実解、そして日本メーカーへの率直な提言、これからのクルマ選びのポイントを聞く。
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