エアバックメーカー「タカタ」は何をして何が起こったのか?負債総額1兆7000億円!?  

■中国企業傘下の会社に譲渡……

 タカタが民事再生法の適用を申請したことで、同社の事業と資産は約1750億円で中国の寧波均勝電子傘下となる米国「キー・セイフティー・システムズ」(KSS)に譲渡されることになった。気になる国内の自動車メーカーへの影響はどうなのか。

 自動車評論家の国沢光宏氏は、「タカタの破綻で最も影響を受けるメーカーは当然ホンダだろう。タカタの株主にもなっているワケだし、取りっぱぐれる可能性はある。

 ただし、ホンダとタカタとの間でどのような契約内容だったかまではわからないが、保険にだって入っていただろうからホンダの業績までには深く影響は及ぼさないとは思う」と分析している。

 ちなみにスバルとマツダは、タカタが民事再生手続きを開始した6月26日、ともに「タカタは事業を継続しながら再生手続きを進めるため、部品供給は継続される見込みで、当社への影響は限定的」との声明を発表している。

 公表されている各自動車メーカーのリコール費用はホンダが約5560億円、トヨタが約5700億円、日産は約900億円、スバルは約735億円、マツダは約407億円。すでに各社ともこのリコール費用は引き当てずみとしており、これが各社が経営への影響については限定的としている理由だ。

 自動車評論家の鈴木直也氏は次のように語る。

 「もちろん影響が一番大きいのはホンダだけど、(タカタは)ホンダが育てた企業のようなものだから、取引を切って最終的には破綻してしまったことは断腸の思いだったと思う。

 家電ではシャープが台湾の鴻海精密工業傘下となった際、海外への日本の技術流出が叫ばれたけど、もはやタカタのエアバッグ技術は今となってはコモディティ化してしまった。こうなってしまう前に幾度も手を打てたと思うんだけど……」

■「車」という商品の特性と対応の問題

 タカタがエアバッグのインフレーターに使っていたのは、相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)だが、これがなぜエアバッグの破裂をもたらした原因になっているのか、詳細なメカニズムは今なお解明されていない。

 では、今回の問題はなぜ起きたのか? 国沢光宏氏は次のように持論を語った。

 「最初に問題が明るみに出たのが2008年で、以後ズルズルとあまりにタカタが情報を出さず、ダラダラと引っ張り続けたことが原因。ユーザーに対して誠実さがまったく感じられないということをタカタ自ら示してしまった。

 つまり、100%タカタ自身の〝身から出た錆〟と言わざるを得ない。車という商品の特性もさることながら、タカタが市場から淘汰されてしまうのは致し方ないこと。何度か立ち直るためのチャンスはあったと思うけどね」

 タカタのエアバッグ問題がクローズアップされたのは2008年以降だが、実はそれ以前からエアバッグに欠陥の兆候がタカタ社内にはあったという。2000~02年頃、タカタの米国工場及びメキシコ工場製のエアバッグは、高温多湿地域での長時間使用が続くと破裂する恐れがあるとの報告があった。

 また、2004年にはエアバッグのテストでインフレーターに亀裂が入るのを見たタカタ社員が上司に報告したものの、その結果を握りつぶす隠蔽工作があったとして内部告発が一部の米国メディアに寄せられている。

■エアバッグの火薬は10年後にどうなっているのか

 続いて鈴木直也氏はタカタの一連の対応について「危機対応策の典型的失敗例」として、次のように述べている。

 「タカタはもともとホンダ側からエアバッグの生産を持ちかけられた経緯があったんだけど、(ホンダは)あくまで取引企業であってタカタに対して支配的だったワケじゃない。タカタは独立したオーナー企業であって、問題はその体質にあったことに尽きる。

 米国市場はユーザー目線での安全に関するまなざしはひと際厳しい。そんな市場で米国当局からすれば、『隠蔽』ととられてもしかたない対応をタカタは続けてしまった。ユーザーに情報を開示しない、不誠実な会社だと。

 少しだけタカタを擁護するならエアバッグのインフレーターは非常にデリケートな部品であり、取り上げられる硝酸アンモニウムにしてもタカタ自身はその原因がなんであったのか解明できていない。

 そもそも火薬を積んだエアバッグは『10年経過したら廃棄すべき』というのがボクの考え。通常、火薬を積むものといえば軍事製品であり、つまるところ爆発物と認識しなければいけないと思う。

 火薬の扱いってすごくシビアで、かなり厳格な管理がなされるもの。それなのにクルマのエアバッグだけ永久保証というのはいかがなものか。というよりも自動車部品の保証が手厚すぎるのが問題。

 今回のタカタ問題、ボク個人としては将来的にエアバッグが10年保証となった際の〝礎〟になってくれるものだと問題提起しておきたいね」

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