■10月中旬段階では現場の混乱はあまりなかった
日産販売店の現場はどのように受け止め、どうなっているのか。10月中旬、首都圏の東京、千葉、埼玉地区の日産系列店を回り取材した。
東京地区のプリンス店では「ニュースが流れてから、問い合わせが多くなっていますが、まだ応対で困っている状況ではありません。
答えるのに時間を取られますが、新車販売に影響が出るのは、実際にリコール車が入庫する今月末からだと思います。
ただ、ノートe-POWERやセレナの販売への影響はまだありませんが、リーフは多少出始めているような気がします。
航続距離が延び、スタイリッシュで性能もよくなっているので人気が高いのですが、リコール対応で納期が遅れ気味ですので、スタートダッシュの勢いを多少そがれた感じもします」と不安顔だ。
千葉地区の日産店では「お客さんのもとにDMが届くのは今月(10月)末からなので、それまでは嵐の前の静けさという感じですね。
問い合わせや商談時にリコール問題で時間を取られることはあっても、キャンセルはまだ発生していません。整備士達は怒りを秘めています。まだ作業がスタートしていないので、なんともいえませんが、静かに構えている状況だと思います」。
埼玉地区の日産店では「既納ユーザーは愛車がどうなっているのか問い合わせるケースが確かに増えています。まだ明確になっていないのでお客さまからの苦情はあまりきていません。
ただ、対象台数があまりにも多いので引き取り納車で不満が出るのは覚悟しています」と来るべき嵐に気持ちを引き締めているといった状況だった。
国交省は日産に対して過去の運用状況や再発防止策の報告を求めているが、単なるリコール対応ではなく、組織的な偽装が行われていた場合、大がかりな処分が行われる可能性もありうる。
その結果次第では、今後のニューモデル投入スケジュールに支障を来す可能性もある。
注目すべきは2018年最大のヒット車になるのでは……と目されている、セレナe-POWERの発売だ。東京モーターショーに出品された段階では、「2018年春に発売」とアナウンスされていた。
はたしてスケジュールどおり発表できるのか。すでに多くのユーザーが購入に前向きな問い合わせをしているという。
今回の発覚を受けて、国交省は各自動車メーカーに完成検査の入念な調査と報告を命じた。
その結果、スバルの群馬工場で同様の「無資格者による完成検査と捺印」が発覚。同社もトップが会見、謝罪、リコールとなった。
本件を取材して実感するのは、むろんメーカー側のコンプライアンス(法令遵守)に対する考えの甘さと、完成検査制度の曖昧さだった。
本件がもたらしたのは、「これまでコツコツと積み上げてきた、国産自動車メーカーに対するなんとなく感じていた信頼感」が揺らいだという結果だった。
これを挽回するためには、また再びコツコツと信頼を積み上げていくしかない。そしてそれは自動車メーカーだけでなく、検査側である国交省も一体となって進めていくべきだ。
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