■日産スカイライン(日本を見限った瞬間:11代目/2001年発売)
スカイラインはスポーティカーの代表車種。1964年に2代目スカイラインに直列6気筒エンジンを搭載するボンネットの長い2000GTが用意され、注目を浴びた。1969年には、3代目にDOHC24バルブエンジンを搭載した2000GT-Rが加わり、1972年に発売された4代目はケン・メリの愛称で親しまれた。1973年には、4代目の1か月の平均登録台数が1万3133台に達している。2017年のスカイラインは1か月平均で243台だから、45年前のスカイラインは今の54倍も売れていた。
日産は2018年7月5日、2018年上半期の国内販売で、ノートが48年ぶりに登録車(小型/普通車)の1位を獲得したと発表した。この1か月平均は1万2230台だから、当時のスカイラインは、さらに売れていたことになる。
スカイラインは1993年に登場した9代目で3ナンバー車になり、人気を下げたが、この時点では国内向けに開発されていた。そのために9代目でホイールベース(前輪と後輪の間隔)を2720mmに伸ばしながら、1998年発売の10代目では2665mmに短くしている。「肥大化した」という国内の批判に耳を傾ける気構えがあった。
しかし2001年発売の11代目が、北米でインフィニティG35として扱われるようになると流れが変わった。北米指向を強め、2014年に発売された現行型の13代目は、全幅が1800mmを超えて外観は鋭角的な北米好みだ。
しかもエンブレムは日産ではなくインフィニティが装着され「日産のスカイラインであること」を自ら否定している。同時に「日本を見限ったこと」も宣言しており、もはや従来型スカイラインのファンと所有者に喧嘩を売っているとしか思えない。
■ホンダシビック(日本を見限った瞬間:8代目/2005年発売)
シビックは初代モデルから海外で高い評価を得た。コンパクトな割に車内の広い独創的なボディ、希薄燃焼方式を使った環境性能の優れたCVCCエンジンなどが人気を呼んだ。
それでもシビックは、国内市場を重視する5ナンバー車として発展を続けた。6代目に追加されたタイプRは1.6LのVTECエンジンながらも高回転域の吹き上がりが鋭く、1.8LのインテグラタイプRとは違うテクニックが重視されるスポーツモデルだった。
ところが2000年に発売された7代目では、国内仕様から3ドアハッチバックがはずされ、2001年に登場した割安な初代フィットに需要を奪われ始めた。2005年発売の8代目では、3ナンバーサイズに拡大されたセダンのみになってしまう。イギリス製のタイプRユーロやタイプRも輸入したが、限られた台数で終わった。そして9代目は日本で売られていない。
ところが10代目の現行型は、セダンを国内の寄居工場で生産することになり、5ドアハッチバックとタイプRもイギリス製を輸入して2017年9月から販売している。1か月の登録台数は1500台前後だが、ホンダは「予想を超える売れ行き」という。多くの顧客に支えられた自社商品の供給を停止させ、さらに唐突に再開させて「予想を超える売れ行き」はないだろう。見限られてもなお、シビックを愛するユーザーは多く、そのことにホンダ自身が気付かないようでは困る。
■トヨタRAV4(日本を見限った瞬間:3代目/2005年発売)
1994年に発売された初代RAV4は、新鮮なクルマだった。当時のSUVは、トヨタハイラックスサーフ、日産テラノとミストラル、いすゞビッグホーンなど、後輪駆動ベースの4WDを備えるオフロードモデルが中心だ。ホンダCR-Vが発売されたのは1995年だから、前輪駆動をベースにするのは三菱RVR程度で、RAV4には注目が集まった。
発売時点では3ドアボディのみで、全長は3695mmと短く、全幅も1695mmで5ナンバーサイズに収まる。駆動方式はエンジンを横向きに搭載する前輪駆動ベースのフルタイム4WDのみで、車両重量が1180kgのボディに2Lエンジンだから、運転感覚は軽快で楽しかった。1995年には全長を4105mmに伸ばした5ドアボディのRAV4・V(ファイブ)が加わり、ファミリーユーザーも獲得した。
ところが2000年に発売された2代目は、後席の居住空間などが広がったものの、全幅も1735mmに拡大されて3ナンバー車になり、初代モデルの持ち味だった軽快感が薄れた。今にして思えば、日本を見限る過渡期に位置付けられる。
そして2005年登場の3代目は、全幅を1815mmまで拡大した外観、排気量を2.4Lに増やしたエンジンで、さらに大味になってしまう。その割に後席は狭く、2007年にはロング版のトヨタヴァンガードを発売した。
つまりRAV4は3代目で日本を見限り、支持を失った。改めて新型を発売する予定だが、売れ行きは未知数だ。前述のシビックは少なくとも20年間は人気車で、思い出を持つユーザーも多いが、RAV4が人気を得ていた期間は約5年と短い。しかも今のトヨタにはハリアーやC-HRも用意されるから、高い人気を得るのは難しい。
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