■オフィスビルだけでなく高層マンションにも
この仕組みの最大の利点は、電気自動車とオフィスビルやマンションを繋ぐことで三相200Vでの給電が可能な巨大バッテリーを大量に用意できる可能性があること。今回の実験はエレベーターだったが、マンションの給排水ポンプや照明、オフィス用空調の電源にも利用できる。
東日本大震災の時に高層マンションの上階に住んでいる住民が、給排水ポンプが止まったことで階段を何度も往復して水を汲みに行くことになった苦労を覚えている読者諸兄も多いのではないか。
この仕組みが一般化すれば、EVが都心部で増えれば増えるほど、(この仕組みが入った)EV用充電器が設置されればされるほど、停電時の備えが増えることになる。
現時点ではまだ社会実験中の段階だが、上述のとおり、日産と日立は「2023年中の実用化」を目指している。「充電器とエレベーターの内部プログラムを変更する必要があるため比較的最近設置されたものに限るが、すでに設置されている充電器とエレベーターでも(この仕組みを入れるよう)改良可能」とのこと。
今回の実験は日産サクラで実施されたが、給電(放電)を許可していて、かつCHAdeMO(チャデモ)規格の充電が可能なEVであればどれでも接続可能というのも嬉しい(つまりトヨタやホンダのEVでも接続可能だが、テスラ車は放電を許可してないので現時点では接続できない)。
日本における電気事情は「特に都心部において、昼間(夕方)は使う人が多くて社会全体で逼迫するけど、夜間や早朝は使う人が少ないので余裕がある」という状況。
もしこの仕組みが広まれば、(緊急停電時だけでなく)たとえば「電力が逼迫している時間帯はEVに貯めておいた電気で生活して、あまり使わない時間帯にEVへ充電する」なんて使い方もできる。
「EVが普及する」ということは「巨大なバッテリーが街中に増える」ということで、その社会的なポテンシャルは計り知れない。
2022年中の日本新車市場におけるEVの販売比率は2%に届かなかったが、中国市場では新車販売のうちEV比率は約20%、欧州市場では約10%、アメリカでも5%程度まで広がっている。
2023年初頭時点、社会全体にEVが普及してゆくか(どれぐらい普及するか)はまだまだ分からないし、普及にどれくらい時間がかかるかも分かっていないが、こうした「災害時に生活を支えるために大いに役立つ仕組み」が広がることで、社会的心理的環境的なシフトは速度を上げて進んでゆくだろう。
何よりこの仕組み、実現化したらぜひ弊社のビルと自宅のマンションに入れてほしい。
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