トヨタ エスティマはトヨタが挑んだ“ミニバンの革新”から生まれた「天才タマゴ」【愛すべき日本の珍車と珍技術】

トヨタ エスティマはトヨタが挑んだ“ミニバンの革新”から生まれた「天才タマゴ」【愛すべき日本の珍車と珍技術】

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、ミニバンとしての能力を革新し続けることでカテゴリー全体を牽引した初代エスティマを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/トヨタ

【画像ギャラリー】機能と上質感を融合した多用途に対応するくつろぎの移動空間を持つ初代エスティマの写真をもっと見る!(6枚)画像ギャラリー

ミニバンでありながら乗用車に匹敵する“走る楽しさ”が存分に味わえた

 1990年5月、「90年代にふさわしい、豊かで快適な移動空間の創造」をコンセプトに掲げたエポックメイキングなクルマがトヨタから発売された。スポーティカーなどに求められる「走る楽しさ」と、ワンボックスカーに代表される「使い勝手のよさ」を高度に融合した、新世代モノスペース・ビークル「エスティマ」である。

 エスティマの登場によって、今ではお馴染みとなったミニバンというジャンルが日本国内に広く普及することになるが、エスティマ登場以前から北米では、「ミニバン=多人数乗車の快適性と荷物積載の柔軟性を兼ね備えた多機能車」の需要が拡大していた。

 こうした北米市場におけるミニバンの急成長をいち早く捉え、トヨタは独自のアプローチで対応を図り、従来の商用バンをベースにした派生モデルではなく新たな乗用ミニバンの企画・開発に着手する。

 トヨタが初代エスティマで目指したのは、ミニバンにおける理想的なパッケージングの再定義であった。「最大限に広く快適なキャビンスペース」と「乗用車並みの動的性能」の両立することを開発の中核としていたが、その鍵を握っていたのが、独自開発されたアンダーフロア型ミッドシップレイアウトである。

1990年に登場すると、その形状や構造から新世代ミニバンとしてスマッシュヒットとなった初代エスティマ。キャッチコピーは「天才タマゴ」だった
1990年に登場すると、その形状や構造から新世代ミニバンとしてスマッシュヒットとなった初代エスティマ。キャッチコピーは「天才タマゴ」だった

 走りと室内空間の両立という難題を解決するため、開発陣は従来の概念を覆すエンジン配置に挑戦し、前例のないアンダーフロア型ミッドシップレイアウトという発想を生み出す。

 エンジンはセカンドシート直下に搭載され、床下に横置きで75度傾斜(スラント)させて搭載。これによってエンジン高を大幅に抑え、室内に段差のない完全なフラットフロアを実現できた。この搭載方法は乗降性、居住性、積載性すべてにおいて大きなアドバンテージをもたらすことになる。

 エンジンを車両重心近くに配置することによって前後重量配分が最適化され、ヨーイング慣性モーメントも最小限に抑制することができた。これがエスティマの特徴のひとつでもあるミニバンとは思えぬ俊敏かつ安定した操縦性の実現に貢献しているのだ。

 また、エンジンの搭載方法だけでなく補機類にも工夫が施されている。冷却ファンやオルタネーターといったパーツは、エンジン本体から独立させフロントフード内に別体配置された。こうした工夫によってエンジンユニット全体のコンパクト化とサービス性の飛躍的な向上が両立され、整備性や日常点検のしやすさにも配慮されている。

 この革新的なパッケージングを採用したエスティマは、商用車の延長ではない真に乗用車的なミニバンの新基準を提示し、エスティマ以降に登場する多目的車開発における新たな技術的基準となったのである。

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