ミニバンとは思えぬ走行性能と快適性を高い水準で両立
走りのよさを標榜することもあり、走行性能に影響する領域についても強いこだわりが散見される。パワートレーンはミニバンのエンジンという枠を超え、静粛性や走行性能、燃費効率といった能力を高度に調和させることを狙って開発された。特にミッドシップレイアウトを前提とした設計思想は、トヨタの技術的チャレンジ精神を如実に物語っている。
特徴はいくつかあるが、なかでもハイメカツインカム機構の採用は大きなトピックだ。この機構によって、市街地走行で多用する常用回転域での高トルク特性と優れた燃費性能を両立しつつ、各部の剛性向上により、低振動・低騒音化を高い水準で達成している。
静粛性が重視されるミニバンというジャンルにおいて、メカニカルな精度と静粛性の両立は極めて高い評価を獲得した。トランスミッションには、全車にECT(電子制御オートマチックトランスミッション)を採用。ドライバーの嗜好や走行状況に応じて、「ノーマル」モードと「パワー」モードを切り替え可能とし、街乗りから高速走行まで幅広く対応する柔軟性を備えている。
操縦性、乗り心地、安定性といった走行性能の根幹を成すシャシー構成においても、高度な技術力と乗用車開発のノウハウが注ぎ込まれている。フロントには、剛性と軽量性を兼ね備えた新ジオメトリーのマクファーソンストラット式サスペンションを採用。リアには、床面の低床化と完全なフラット化を可能にするロープロファイル設計のダブルウィッシュボーン式を搭載した。
これにより、室内空間の最大化と高い操縦安定性の両立が図られている。加えて、ワイドトレッドと2860mmのロングホイールベース、そしてエンジンのミッドシップ搭載による理想的な前後重量配分が、操舵時の安定感とコーナリング性能、さらには直進時の快適な乗り味に大きく寄与している。
効率のいいパワートレインや、快適性と操縦安定性を両立したシャシー/サスペンション設計は、エスティマを移動の道具ではなく、操る歓びと乗る快適さを兼ね備えた“走るミニバン”へと昇華させた重要なファクターと言える。
革新的な技術を多数採用して、スタイリング、走行性能、空間効率の三位一体を成す意欲作として登場したが、その先進性とは裏腹に、販売実績は当初の期待を下まわるものとなった。
初代エスティマがデビューした1990年代初頭の日本市場では、高性能なスポーツカー、スタイリッシュで実用的なステーションワゴンやタフなクロスカントリー4WDといったモデルにユーザーの興味が集中しており、ミニバンはあくまで「商用バンの派生車」で、一般的な選択肢として認知されていなかった。
また、全幅1.7mを超える大柄なボディは、日本の道路事情や駐車スペースに不向きだったことも敬遠される要因だった。トヨタはこうした市場の反応を受け、即座に商品戦略の修正を図る。
1992年1月には、5ナンバー規格に適合した「エスティマ・ルシーダ/エミーナ」を投入。取りまわしのしづらさだけでなく、価格帯も見直すことで訴求力を高めた。
1994年8月には、標準仕様のマイナーチェンジを実施。動力性能向上を狙ってスーパーチャージャー搭載モデルを導入することで、走りの物足りなさを補完する。さらに、1998年1月には再び商品改良を行い、スタイリングの刷新に加えて、よりスポーティな魅力を加味した新グレード「アエラス」を設定した。
こうした絶え間ない進化とテコ入れを通じて、エスティマは市場との距離を徐々に縮め、その存在が広く認知されるようになっていく。
アンダーフロア型ミッドシップのパッケージングは、設計の自由度や生産性、コスト面での制約が大きかったことから、2代目ではFFプラットフォームへと移行する。しかし、初代エスティマが打ち出した革新性は、最終型となる3代目まで受け継がれた。
どの世代においても先進技術が積極的に採用された結果、エスティマはトヨタのミニバン戦略におけるフラッグシップとして重要なモデルに位置づけられ、生産終了となる2019年までミニバンクラスにおいて売れ筋であり続けた。

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