軽自動車のワゴンRはどうか?
次はワゴンRの装備と価格推移を見る。1993年に発売された初代ワゴンRの価格は、上級のRXが108万3000円であった。消費税10%に換算すると119万1300円だ。
装備はシンプルで、安全装備の4輪ABSやエアバッグはオプションでも装着できない。電動格納式ドアミラー、キーレスエントリーシステムなども付いていない。
そして現行ワゴンRのハイブリッドFXは、マイルドハイブリッドシステム、歩行者も検知できる衝突被害軽減ブレーキ、4輪ABS、横滑り防止装置、キーレスプッシュスタートなどを加えて128万400円だ。
初代ワゴンRの消費税10%想定額に比べて、9万円高い程度に収まる。買い得感の違いは明らかだ。
2代目ワゴンRは1998年に登場した。この時には軽自動車規格が今日と内容に変更され、衝突安全性の向上を目的に、全長が100mm、全幅は80mm拡大された。規格変更に合わせて、ほぼ同時期に16車種の新型軽自動車が発売され、空前絶後の新型車ラッシュとなった。
2代目ワゴンR・FXは複数のエンジンを用意したが、今日のタイプに最も近いDOHC・VVTのCVT仕様は税抜き価格が108万5000円だ。消費税10%とすれば119万3500円になる。
3代目ワゴンRは2003年に発売された。この時は実質的に値下げされ、FXの税抜き価格が96万5000円になった。10%の消費税を想定しても106万1500円だ。安全装備は4輪ABSもオプションで貧弱だったが、CDオーディオやキーレスエントリーなどは標準装着している。
今のFXに比べて、消費税の条件を合わせても約22万円安い。衝突被害軽減ブレーキの採用などを考えると、現行型の方が割安ではあるが、3代目ワゴンRはベーシックな軽自動車として幅広いユーザーに愛用された。
ちなみにこの時代のワゴンRは販売が絶好調で、1993年に登場してからN-BOXが発売される2011年まで、ほぼ一貫して軽自動車の販売1位を守り続けた。国内販売の総合1位になることもあった。
4代目ワゴンRは2008年に発売された。FXの価格は5%の消費税を含んで104万4750円とされ、消費税10%に換算すると109万5000円だ。
運転席と助手席のエアバッグは標準装着されるが、4輪ABSはオプションで、横滑り防止装置の設定はない。
キーレスプッシュスタートも用意されず、キーレスエントリーシステムであった。それでも現行FXに比べて消費税10%として18万5400円安く、装備はシンプルながら、価格とのバランスは取れている。
5代目ワゴンRは2012年に発売され、減速時に発電してリチウムイオン電池に充電を行い、電装品の作動に使うエネチャージを採用した。
FXの価格は消費税5%で110万9850円とされ、10%に換算すると116万2700円だ。現行型との差額は11万7700円に縮まった。
消費税を10%に換算したワゴンR・FXの価格推移を振り返ると、以下のようになる。
●1993年9月 初代ワゴンR(RX):119万1300円
●1998年10月 2代目ワゴンR:119万3500円
●2003年9月 3代目ワゴンR:106万1500円
●2008年9月 4代目ワゴンR:109万5000円
●2012年9月 5代目ワゴンR:116万2700円
●2017年2月 6代目現行ワゴンR:128万400円
※税抜き価格に現行の消費税10%加算した場合の比較
こうしてみるとワゴンRは価格を慎重に設定しているのがわかる。初代から3代目はほぼ横這いだ。
そして安全装備や環境性能の向上により、5代目の価格上昇率は6%、6代目は10%になったが、加わった装備と値上げのバランスは守られている。
フィットとワゴンRの足跡を振り返ると「商品の価値は広義の機能と価格のバランスで決まる」という鉄則を守り抜いてきたことが分かる。
そのためにいつの時代でも、厚い支持を得てきた。この2車種に限らず、好調に売れるクルマは、いずれも「良品廉価」と言えるのでないだろうか。
ユーザーはそこを見抜いて的確に選んでいる。割高に感じさせるのは、消費増税によるところが大きいのだ。
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