洗車の時にパタっと倒すのはもう古い? 目からウロコの最新アンテナ事情

シャークフィンアンテナがなぜ主流になったのか?

新型フィットはベーシック、ホーム、クロスターはポールアンテナが標準設定
ネスとリュクス、そしてHonda CONNECT for Gathers+ナビ装着用スペシャルパッケージ」を装着した場合、ルーフレールを装着した場合、シャークフィンアンテナが装備される
軽で初採用となったN-WGNカスタムのシャークフィンアンテナ。グレードによりポールアンテナ(ホンダではマイクロアンテナと呼ぶ)となる
軽で初採用となったN-WGNカスタムのシャークフィンアンテナ。グレードによりポールアンテナ(ホンダではマイクロアンテナと呼ぶ)となる

 さて、イルカのヒレのようなアンテナをドルフィンアンテナまたはシャークフィンアンテナとも呼ばれているが、今ではこのフィンタイプのアンテナが主流だ。

 2000年頃から衛星ラジオとナビゲーション、テレマティクスの普及から、これらに対応するアンテナとして開発され、2010年代に入ると、アナログラジオをはじめ、デジタルラジオ、GPS等衛星システム、移動通信システムなどさまざまなメディアとの複合が可能となった。

 自動車用アンテナメーカーの最大手、原田工業へそのあたりの事情を聞いてみたところ、「メーカーから、ボディデザインを損なわないアンテナの要望があり、現在はその要望に沿ったタイプのアンテナが選ばれるようになっています。フィンタイプですとデザインに支障をきたすことなく、機能も発揮するように設計されています」(原田工業・担当)とのこと。

魂動デザインとシャークフィン

デザインを重視するマツダは積極的にシャークフィンアンテナを採用している
どんな形状のシャークフィンにするのかディスカッションしたという(マツダ公式ブログより)

 シャークフィンアンテナはクルマのデザインを損なわないデザインと言われているが、マツダでは2012年に発売されたCX-5から魂動デザインに溶け込むシャークフィンをメーカー自ら開発している。

 シャークフィンアンテナの利点は、スッキリとした外観でクルマのデザインに違和感を与えないこと、走行時に風切り音を発生しないこと、そして外したり畳んだりする必要がないこと。

 さらに、アンテナの複合化(複数の受信装置を一つに組み込むこと)にも対応しやすくなるが、実はそんないいことばかりではなかったという。

 アンテナとしてきちんと機能させるためには、技術的なハードルがいくつもあったという。

 まずは受信感度を確保しながら、高さを低くすることが最初のハードル。シャークフィンアンテナは取り外しができないため、クルマの全高がアンテナの高さで決まってしまうからだ。

 そこで打開策として、従来は棒形状だった部品を渦巻きコイルに変え、電子基板で受信部を構成することを思いつき、受信信号は、アンプと呼ばれる部品で増幅してラジオ本体に送ることで解決したという。

 魂動デザインと溶け込ませることにも苦労したという。重要なのは、今にも動き出しそうな生命感や躍動感を感じさせる「魂動デザイン」にマッチしていること。

 アンテナ単体が目立つのではなく、クルマに取り付けた状態で全体のシルエットに馴染んでいるかどうか。そのため、取り付ける位置も慎重に吟味されたという。

 アンテナはボディから飛び出した機能部品だから、デザイナーからの要求はとにかく低く、そして小さくが至上命題だったという。

スポイラー埋め込みアンテナとガラス埋め込みアンテナは?

 話題性でいえばスポイラーに内蔵したタイプやガラスに埋め込むタイプのアンテナだろう。スポイラーにアンテナを内蔵することで、見た目にもスタイリッシュになる。

ルーフスポイラーに埋め込まれるタイプのアンテナ。ルーフやトランクリッド、スポイラー、バンパーなどに搭載可能
ルーフスポイラーに埋め込まれるタイプのアンテナ。ルーフやトランクリッド、スポイラー、バンパーなどに搭載可能
現行セレナのガラスに埋め込むタイプのアンテナ
現行セレナのガラスに埋め込むタイプのアンテナ
CX-30の全高は一般的な立体駐車場に納まる1540mmで実はCX-3よりも10mm低い。シャークフィンアンテナではなく、マツダ3ファストバックと同様にガラスプリントタイプを採用したことによるもの
GT-Rもガラス埋め込みタイプのアンテナを装着している
GT-Rもガラス埋め込みタイプのアンテナを装着している

 一方、ガラスに組み込むタイプのアンテナもある。フロントやリア、サイドガラスなどに設定されており、デザイン性やもちろん耐久性に優れているのが特徴。

 実は車両ごとにチューニングを行なっており、しかもガラスに後付けで貼り付けているワケではない。

 ガラスに埋め込む必要があるのでガラスメーカーのほうで製造から請け負うことで、自動車メーカーへ納入しているという。

 ただし、注意しなければいけないポイントもある。アンテナ線部にミラータイプのフィルムを取り付けると受信感度が低下し、ノイズが入る恐れがある。

 また手荷物などで傷付ける可能性もあり。清掃する時もアンテナ線を切らないように丁寧に軽く拭く必要がある。

 というわけで最近は、デザインとマッチしたタイプのアンテナが主流になっている。

 原田工業の担当者はドルフィンアンテナについて、

 「メディア(ラジオやTVなど)は、デジタルラジオにも対応しております。また、カーナビで使われるGPSのほか、ETC車載器のアンテナまで内蔵するケースもあります。最近ではLTE(Lomg Term Evolution。携帯電話に使われる通信規格)といったデータ通信用モジュールを内蔵する場合もあり、小さいながらも数多くの機能を求められるようになっています」とコメント。

 クルマと通信端末をセットしたシステムと言えば、その元祖とも言うべきサービスがある。トヨタが2002年頃に自社のモデルで搭載したG-BOOKだ。

 クルマを中心とした情報ネットワークサービスで、ニュースや天気予報はもちろん、ナビゲーションと連動したタウン情報などを提供。

 そのほか、運転中にトラブルが発生した場合、車両位置をいち早く把握し、救援車両を手配するなどさまざまサービスを提供するものだ。今ではさらに進んでスマホと連動した機能も搭載するなど進化を遂げているのだ。

 それらの進化を支える、小さいながらも働きモノ。それがアンテナなのだ。今後は、シャークフィンアンテナやガラスプリントタイプの普及とともに、さらに小型化&高性能が進み、スポイラー埋め込みアンテナも増えていくだろう。

【画像ギャラリー】シャークフィンアンテナを採用している主な最新車はこれだ!

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