先駆車:スズキワゴンR(1993年)
■後出し車:ダイハツムーヴ(1995年)
ワゴンRが登場したのは1993年。全長3400mm、全幅1480mmというサイズが厳しく制限されている軽自動車枠の中で、全高は2000mmと余裕があることに着目、セルボをベースに全高を 1640~1695mmと高く取り、フロアを二重構造にしてフラット化することで、広々とした居住空間を実現した。
当初スズキはニッチ商品のつもりだったが、広さに飢えていた軽ユーザーに大いに受けて大ヒットし、以後このタイプが軽のメインストリームとなった。
ダイハツが対抗馬のムーヴを発売したのは2年後の1995年。サイズもコンセプトもほとんど同じで、あまりにも典型的すぎる後出しジャンケンだった。
実は、この後出しジャンケンには裏話がある。ダイハツは1990年にトールワゴン計画をスタートしており、1993年デビューのはずが、経営判断でプロジェクトが中断。プロジェクト再開後、1995年に販売スタートするというオチがあった。
発売1ヵ月で4万5000台の受注で人気となったが、そのプロジェクトが中断しなければムーヴの方が先にこの世に出ていたかもしれないのだ。
ただ、軽自動車の世界は昔も今も後出しジャンケン合戦。ダイハツが先に出したタントはスズキがパレット(スペーシアに続く)で後追いし、スズキのハスラーは今回ダイハツがタフトで後追いする。
お互い、ヒットすれば後追いされるのは覚悟の上という、不思議なフェアプレイ? が続いている。
とにもかくにも、ワゴンRとムーヴの戦いは現在も続いている。ここ数年はムーヴの勝ちだが、累計ではワゴンRの勝ちで、どっちが勝ったと言えるほどの差で付いておらず、引き分けだろうか?
それよりこの2台にとっては、タントに始まったスーパーハイトワゴンが目の上のタンコブ。そのタントはN-BOXにとって代わられた。
軽自動車業界は、食うか食われるかの商品開発合戦と後出しジャンケン合戦が繰り返されており、どこか壮大な出来レースにも思えてくる。
★結果:引き分け
先駆車:日産エルグランド(1997年)
■後出し車:トヨタアルファード(2002年)
トヨタはLサイズミニバンのグランビアを1995年に発売したが、売れ行きは伸び悩んだ。
初代エルグランド(キャラバン&ホーミー)は1997年に発売され、国内唯一のL型ミニバンとして市場を独占、月間1万台売れるほどのヒットとなった。
対するグランビアは、エルグランドに比べると外観が大人しく貧弱で、エンジンも直4、2.7Lのガソリンと、3Lのディーゼルターボだから、動力性能のインパクトでも見劣りした。
この後、グランビアの姉妹車としてグランドハイエース、ボディを5ナンバーサイズに抑えたハイエースレジアスと姉妹車のツーリングハイエースなどを加えたが、エルグランドには勝てなかった。
そのエルグランドが2代目に切り替わった2002年5月、トヨタはほとんど同時期に後出しのアルファードを発売した。
コンセプトもイバリの強い顔つきも完全にパクリだったが、エルグランドがFRベースなのに対してアルファードはFFベース。室内空間を広く取るためにはFFベースのほうが有利だ。
しかもアルファードは、エンジンラインナップに直4の2.4Lを用意した。対するエルグランドは当初V6、3Lのみで、価格設定がアルファードよりぐっと高くなった。
この差は決定的で、後出しのアルファードはエルグランドに完全勝利。エルグランドも後にV6、2.5Lモデルを追加したが、時すでに遅かった。
勝利したアルファードは6年後、2代目にバトンタッチし、畳みかけるようにヴェルファイアという兄弟車を出し、独走態勢を築く。
もはやエルグランドには追撃する力もなく、2010年、北米向けのクエストやプレサージュとプラットフォームを統合され、全高低めのFFベースに方向転換。
従来のエルグランドファンからも見放され、ライバルとも言えない状態に転落したのでした。
★結果:後出しアルファードの勝ち
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