販売の軸はやはりSUV系
改めて振り返ると、米国市場では2008年9月のリーマンショックの影響などを受け、GMが2009年6月に経営破綻したことをきっかけとして、2010年代にはキャデラックも従来のコンセプトの方向性を変化させて、SUVの商品開発に力を入れることで復活を遂げようとしてきた。
具体的には2010年代後半から、欧州生まれのライバルたちが世界的なブームに乗ってSUVカテゴリーのラインナップの拡充を図るなかで、北米市場を含めたキャデラックのラインアップもSUV中心に構成されるようになった。
メルセデスベンツやBMW、レクサスと比べて、いわゆる流行のスタイリング重視といえるSUVの数は控えめでも、北米市場では際だったブランドイメージが成立していることがキャデラックの強みといえる。
日本市場でもエスカレードへの高い注目度合いが一段落した後も、輸入車における生粋の高級ブランドとしてのキャデラックが、現在どのような車種で構成しているのか確認してみよう。
前述のように、アルファベットと数字で組み合わせたネーミングで区別されるモデルへの移行が進み、ビッグセダンのCT6に続き、前述のように新世代SUVとしてXT5、XT6が投入。
そして頂点のエスカレードでラインナップを構成され、輸入車マーケットでは販売台数の上ではニッチ的な立場にある。
日本における2019年度のブランドとしての販売台数は512台。輸入車市場でのシェアとしては0.15%と小規模といえ(2018年度:569台、シェア:0.16%)、トップセリングモデルはSUVのXT5となっている。
セダンの反転攻勢は実現できるか?
少々時代を辿ってみると、コンセプトカーの「エヴォーク」からキャデラックが生み出した数少ないオープンスポーツである1999年登場のXLRから、「アート&サイエンス」のデザインコンセプトを打ち出してキャデラックの“新時代”が始まり、第4世代のエスカレードもこのコンセプトに沿って登場した。
GMが前述の2008年のリーマンショックでの経営破綻を経験した後も、欧州の高級モデルを意識した中小型セダンであるATSやCTSなどは、ドイツのニュルブルクリンクサーキットでのテストで鍛え上げた足回りを仕立て、ドイツ勢と変わらぬコンセプトと上級な作りを目指して生み出されたことで、エッジの効いたスタイリングとしっかりとした感触をもたらすサスペンションなど、「新世代」といえる印象をもたらした。
話を2019年に戻せば、米本国では先代と言えるCTS同様に、最新のCT4/5/6にも高性能仕様のVシリーズを追加設定した。
Vシリーズはこれまで欧州高級ブランドのハイパフォーマンス仕様(メルセデスではAMG、BMWのM、アウディのRSなど)に対抗すべく、ATS/CTSの世代からスポーティかつパワフルでマッチョなイメージを加えることで、積極的なモデル展開を図ってきた。
新たに登場したCT4-Vは、2.8L、直4ターボ(320ps、500Nm)を搭載。CT5-Vには335ps/ 542Nmの3L、V6ツインターボを与え、CT6-Vに550psと850Nmを発生する4.2L、V8ツインターボを搭載。それぞれ10段ATを組み合わせている。
キャデラックは従来から最新技術の採用を積極的に進めてきたブランドだが、装備面ではこのCT5やCT4でも、高速道路における半自動運転を実現した先進運転支援システムである、「スーパークルーズ」が2020年から設定される予定だ。
このシステムは、最新の地図情報データベースや高精度GPS、3次元スキャナーを備えたLiDAR機構や最新のドライバーの注意喚起システムなど、カメラとレーダーセンサーのネットワークを組み合わせた機能によって、運転者が介在する余地を残した段階での自律運転機能を備えている。
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