開発当初はFFだったがRRに変更した理由とは?
そこで開発されたのがホンダeだ。前述の通りボディはコンパクトで、リチウムイオン電池は床下に配置した。
モーターはボディの後部に搭載して後輪を駆動する。このRRレイアウトを採用した理由を開発者に尋ねると、以下のようにコメントした。
「開発を開始した当初は、モーターを車両の前側に搭載して、前輪を駆動するFFの一般的なレイアウトでした。
しかしこの方式では、前輪の舵角を大きく取れず、小回り性能をあまり向上させられない。フロントオーバーハング(ボディが前輪よりも前側へ張り出した部分)も長くなってしまう。
そこでモーターを後部に搭載する方式を採用しました。最小回転半径は4.3mだから小回り性能は抜群で、オーバーハングも短く抑えることができました」。
以上のようにホンダeは、街中の短距離移動を重視した。そこで駆動用リチウムイオン電池の容量を35.5kWhに抑え、航続可能距離もさほど長くない。
その代わり運転のしやすさにこだわった。全長を3895mmに抑え、後輪駆動方式を採用して、最小回転半径も軽自動車と同等かそれより小さい。
外観は水平基調だから、前後左右ともに視界が優れ、ボディの四隅も分かりやすい。
全幅は1752mmだから3ナンバー車になるが、サイドカメラミラーシステムを全車に標準装着して、後方の様子はインパネの両端に装着された液晶モニター画面に表示する。
ボディサイドには従来のミラーではなくカメラが装着されるため、ミラーの外側で計測した実質的な車幅は、5ナンバー車と同等かそれよりも狭い。
全高も1512mmだから、立体駐車場を利用しやすく、さまざまな機能を街中での使用に絞り込んだ。
ホンダらしいスポーティな走りのEV!
そしてホンダeは、スポーティなホンダ車の特徴も備える。ボディの前側には充電機能、後部にはモーターを搭載したことで、前後輪の重量配分も50:50でバランスが良好だ。
リチウムイオン電池は、前輪と後輪の間に設置したので、カーブを曲がったり車線変更する時に慣性の影響を受けにくい。しかも床下に位置するから、重心も下がり、走行安定性でますます有利になった。
このようにホンダeを見ると、デザインはまったく異なるが、かつて生産していたハイブリッドクーペのCR-Zにも似ている。
CR-Zもコンパクトで軽ければ、燃費/環境性能が向上して、運転感覚も楽しくなる考え方に基づいていた。初代インサイトもクーペであった。
ホンダeには、市街地向けで、なおかつ運転の楽しいホンダのモーター駆動車の持ち味が継承されているのだ。
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