走行性能向上のキーデバイスに再注目され始めた4WS
日本車では前述の日産スカイライン/フーガに2006年に採用されたのをはじめ、2012年にレクサスが2代目GS(一部グレード)にも導入し、新たな操安性向上のキーデバイスへと注目されはじめている。
レクサスのLCやRC、LS、GS、ISなどに搭載されるこのLDHとは(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)の略。
アンダーステア時はフロントタイヤと反対方向にリアタイヤを操舵し、より曲がるように、オーバーステア時は、フロントタイヤと同じ方向にリアタイヤを操舵することでオーバーステアを抑制するように制御している。
なおトヨタでは小型トラックのタウンエースや軍用車両として開発されたメガクルーザーにも、小回り性向上のために4WSを採用した実績がある。
BMWは先代の7シリーズから採用し始めた。これによって大柄な高級車であってもBMWらしいハンドリング性能と、小回り性を実現し、今では5シリーズにも採用されている。将来的には3シリーズにも採用されるかもしれない。
ポルシェが先代の911GT3から量産車向けの4WS(ポルシェ初の4WS搭載は918スパイダー)、アクティブリアホイールステアリングを導入したのも、ボディサイズが拡大してもクルマの動きは俊敏でスポーツカーとしてのフィールを保つための対策だ。現在では911シリーズのほか、カイエンやパナメーラにも設定されている。
アウディも最上級セダンのA8やA7スポーツバック、A6などにダイナミックオールホールステアリングと呼ばれる4WSを用意している。
低速では前輪と逆位相に最大5度、中速から高速では同位相で最大2度、後輪を自動的に動かすというこのシステムは、サスペンションや4WDとの協調制御された最も複雑な4WSといっていいだろう。
ルノーはボディが大きな高級車ではなく、ミドルクラスのメガーヌに4コントロールという4WSを採用している。
これは完成度の高いクルマが集まるCDセグメントにあって、ハンドリング性能を強化し、路面状況に応じたコントロール性と、理想のサーキット性能を与えることに成功している。
4WSを持たないメガーヌと比べて、最大40%のステアリング操舵角の削減が可能だという。
そしていよいよメルセデスベンツもSクラスに4WSを搭載した、という訳なのである。
ショーファードリブンとしても高い評価を受けるSクラスだが、今度の新型はボディを大型化しても、先代以上のハンドリング性能も実現しているだろう。そうだとすれば、その実現には4WSが貢献していることは間違いない。
ボディサイズの肥大化は、快適性や安全性を考えると避けることが難しい要素であるが、運動性能が低下してしまうのは、クルマとしての魅力を大きく損なう。
それを解決するための手段が4WSであれば、今後採用する車種はますます増えるだろう。
道路交通に使える国土が限られる日本では、小回り性も大事。技術革新によって、クルマの取り回し性が高まるのは歓迎すべきことだ。
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