トヨタへ供給のライズ&ルーミーも大人気! ダイハツの小型車作りとヒット車の秘策


ルーミーはなぜ売れたのか?

トヨタルーミーカスタム。2020年9月15日のマイナーチェンジモデル
2020年9月15日のマイナーチェンジで廃止されたルーミーの兄弟車、トヨタタンク
本家のダイハツトール。2020年9月15日のマイナーチェンジモデル

 一方、ルーミーの高人気は、事情が少し異なる。発売は2016年11月だから、現行ブーン&パッソが登場した約半年後だ。DNGAに基づく設計ではない。

 ルーミーの開発を開始したのは、開発者によると2014年だ。この年には先代ハスラーが好調に売れて、スズキとダイハツの販売合戦が活発化した。

 ホンダN-BOXも売れ行きを伸ばし、スズキとダイハツは脅威を感じ始めていた。その結果、軽自動車市場は激しい販売競争に至り、2014年には、国内の新車市場における軽自動車比率が40%を超えている(2019年は37%)。販売会社が在庫車を大量に届け出して、販売台数を粉飾することにも力を入れた。

 軽自動車が好調に売れると、小型車からの乗り替えも進む。小型車を中心に扱うトヨタは、急増する軽自動車販売を抑制することも視野に入れ、新たなコンパクトカーを企画した。それがルーミー系姉妹車であった。

 当時から軽自動車の売れ筋は、N-BOX、タント、スペーシアだったから、これらに対抗するルーミー系姉妹車も、全高が1700mmを上回り、席のドアをスライド式にしている。

 問題は開発期間だ。急増する軽自動車に対抗するには、迅速に開発せねばならない。DNGAの完成を待つ余裕はなく、ホイールベースも含めて、現行ブーン&パッソから流用した。

 エンジンも同様で、ダイハツは1.3Lも用意するが設計は古い。そこでブーン&パッソの1Lを使ってターボを加えた。

 開発の開始が2014年で、発売は2016年だから、単純に計算すると開発期間はわずか2年間だ。

 ブーン&パッソの車両重量は、2WDが910kgだが、ルーミー系姉妹車は最も軽いグレードでも1080kgになる。170kg重く、全高も210mm高いから、ルーミー系姉妹車は開発期間の短さもあって走行安定性や乗り心地に無理が生じた。

 動力性能も不足気味で、新開発のターボは2000回転前後のノイズが目立った。開発者は「ターボはノイズを抑えるために手を尽くしたが、最終的に時間切れになった」と語っている。

 この慌ただしい開発事情は、ロッキー&ライズと大きく異なるが、全長が3700mm前後で後席にスライドドアを備えた背の高いコンパクトカーは貴重な存在だ。

 ライバル車は、スズキソリオとOEM車の三菱デリカD:2のみになる。同じトヨタのポルテ&スペイドも背の高いコンパクトカーだが、左側は1枚のスライドドア、右側は2枚の横開きドアだから使い勝手とボディスタイルが違う。

 そしてルーミー系姉妹車は、荷室と収納設備を工夫した。荷室は広く、汚れ防止シートも装着したので、自転車を運ぶ時も汚れを簡単に落とせる。インパネには大型カップホルダー、脱着式ダストボックスなどを採用した。

 走りと乗り心地はいま一歩だったが、運転のしやすさと日常的な使いやすさを両立させて、特にルーミーは人気車になった。

 この商品開発は、3代目ブーン&パッソの広報資料に見られた「国内ユーザーの声に耳を傾け、ダイハツが培ってきた(軽自動車の)ノウハウを小型車に展開する」手法そのものだ。

 ちなみにロッキー&ライズも、全長が4m以下のコンパクトSUVでありながら、後席と荷室は相応に広い。軽自動車作りのノウハウが生かされ、大人4名が窮屈に感じることなく乗車できる。

競争の激しい軽自動車作りのノウハウを小型車に展開したのが成功した理由

本家ダイハツロッキー。販売台数はライズの2分の1から3分の1程度

 以上のようにトヨタのダイハツ製OEM車が好調に売れる理由は、「軽自動車のノウハウを小型車に展開する」という、ダイハツならではのクルマ作りを行ったからだ。

 背景には競争の激しい軽自動車の開発を通じて、ダイハツが小さなクルマ作りを磨いてきた実績もある。

 トヨタとの共同開発では、ダイハツの良さを十分に発揮できなかったが、OEM車になったことで商品力が向上した。

 特に2016年にダイハツがトヨタの100%出資に基づく完全子会社になってからは、価格帯を含めて、トヨタ製とダイハツ製で明確に線引きされるようになった。

 コンパクトカーの場合、1Lエンジンを搭載するパッソの売れ筋価格帯は130万~150万円だ。トヨタ製のヤリスは1Lエンジンも用意するが、主力は1.5Lで、160万~190万円が売れ筋になる。ハイブリッドは200万~230万円だから、パッソとヤリスでは価格帯がほとんど重複しない。

 コンパクトSUVも同様だ。2WDの場合、ダイハツが製造するライズの売れ筋価格帯は190万~206万円だ。トヨタ製ヤリスクロスは202万~221万円。ハイブリッドは240万~260万円に高まる。これもライズが安く、ヤリスクロスはその上の価格帯に位置する。

 軽自動車を中心に手がけてきたダイハツは、コスト低減が得意だから、コンパクトカーのなかでも価格の安い車種を扱う。トヨタとの役割分担が明確になり、合理性を高めた。

 今後のダイハツは、DNGAをベースに、トヨタとは視点の異なる割安なコンパクトカーを開発するだろう。まずはDNGAを使った次期型のルーミー系姉妹車やブーン&パッソが登場して、その後に空間効率の優れたSUVなども加わるに違いない。

 かつてモータースポーツ向けに、小排気量ターボのストーリア/ブーンX4があったが、とても楽しいクルマであった。

 クルマ好きとしては、ロッキーのみに設定されるプレミアムのような、OEMのトヨタ車とは違うダイハツならではのバリエーションも欲しい。

【画像ギャラリー】どこが違う?ライズとロッキー、ルーミーとトールを写真でチェック!