より強まったメルセデスとのつながり
その後AMGは、1990年にはメルセデスとの協力関係を結び、スポーツバージョンを手がけるようになった。
転機となったのは2005年。メルセデスAMGをダイムラー(クライスラー)が完全子会社化したことで、標準モデルにAMG仕様を加えるなど、メーカー直結の“スペシャルモデルメーカー”としての地位を固めることになった。
2009年にはAMGが初めて完全独自開発したSLS AMG(後継車はAMG GT)を発表。その後はAMG単独の生産量は増え続け、2017年には年間10万台のメルセデスAMGモデルを送り出すに至っている。
日本でのAMGのビジネス拡大を見ると、2017年1月に世界初の専売店、「AMG東京世田谷」をオープン。加えてAMGモデルのサービスなどを実施する「AMGパフォーマンスセンターが日本全国の40ヵ所以上のメルセデスディーラーに設けている。
同センターは、モータースポーツの世界観を表現する特別な展示スペースを常設しており、試乗車を常時用意するとともに、AMGモデルに関する専門知識をもった「AMGエキスパート(セールスおよびサービス)」が顧客に対応する。
AMGが日本人に好まれる理由とは?
それではAMGが日本人(に限らないが)に好まれる理由を考えてみる。大まかにいって、1:スポーツ、2:ステイタス性、3:信頼という、ブランドとして重要な3つの要素が見事に融合していることにある。
過去の日本のマーケットでは、前述のように派手なエアロパーツを纏ったメルセデスとして、「ワル」のイメージがあったことは否めなかった。
ユーザーが望むステイタス性への憧れとして、メルセデスの“上級”モデルとして、標準仕様のオーナーより優越感に浸れるという下世話な話になってしまう。
が、メルセデスというプレミアムメーカーが直接手がけた、あえて言えば“公認”のチューニングモデルとしての信頼感や中古車価格の高値安定感が、AMGの特別なイメージを生み出してきた。
それでも、AMGのイメージを醸成してきたのはあくまでモータースポーツでの活躍から得られた、高い開発技術に違いない。
AMGが自ら仕立てた高性能エンジンに関して、選ばれた一人の熟練作業者による“手組み”によって高精度の組み立てを実現する「ワンマン・ワンエンジン」のコンセプトに基づいて、エンジンには担当した“匠”の名が刻まれたシリアルナンバープレートを装着するといった手法はよく知られた話だ。
もとより、外装の特別仕立てのカーボンファイバー強化樹脂(CFRP)製品や、内装品でもAMGのレーシングマシンのイメージを与えたシートやステアリングホイールなどをAMG独自のこだわりが見える演出によって、オーナーの所有する喜びを満たす要素には事欠かないこともAMGのステイタスの高さを生み出しているといえる。
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