2020年は新型コロナウイルス禍による影響が大きかった1年ではあったが、日本の自動車業界は平成の元号の開始とバブル期が重なった1989年、1990年を思い起こされる、新型車が豊作となった年だった。
ザっと見渡しただけでも、ハスラー、タフト、ロッキー/ライズ、ハリアー、ヤリス、フィット、ホンダe…と、「え、この大ヒット車も2020年デビューなの??」と驚くような大物モデルが並ぶ。
日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021にノミネートされた新型車(2019年10月~2020年11月に国内で発売された新型車が対象)だけでも33モデルにのぼる。
そのなかには、新技術やパフォーマンスで「このクルマから時代が変わるのでは?」と驚かされたニューモデルが数多くある。
そこで、「時代を変えた日本車たち」と銘打ち、2020年にデビューした凄すぎる魅力を持ったクルマたちを紹介していきたい。
文/永田恵一
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ スバル
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時代を変えた日本車1:トヨタヤリス&GRヤリス
2020年2月に登場したヤリス三兄弟の前身となったヴィッツは、2代目モデルまでは魅力を感じさせるコンパクトカーだったものの、2010年登場の先代型となる3代目モデルは可もなく不可もなく、存在感が薄れていたのは否めなかった。
しかし、フルモデルチェンジと、ヴィッツから海外で使われていたヤリスに車名を改めたのを期に、基本となる5ドアコンパクトのヤリス、コンパクトSUVのヤリスクロス、3ドアのスポーツモデルとなるGRヤリスという三兄弟が登場した。
三兄弟においてヤリスクロスはよくまとまったクルマではあるものの、強烈と言えるほどのインパクトは持たないため、ここではヤリスとGRヤリスをクローズアップしていく。
まずベースとなるヤリスは「誰もが買いたくなる、クラスレスなコンパクトカー」というコンセプトで開発され、リアシートやラゲッジスペースこそ広くないものの、明るい雰囲気の内外装、日本車トップクラスの自動ブレーキ、スポーティなハンドリングといった魅力を持つ。
また中心となる1.5Lエンジンは、躍動感ある新開発の3気筒と、思い切ったチャレンジを行ったといえる。特にハイブリッドは全開走行を続けない限り、ガソリン車以上の動力性能を確保。
しかもハイブリッドの実用燃費は細かな改良の積み重ねもあり、リッター30km(WLTCモード燃費は36.0km/L)も夢ではないほどに向上しており、ベストカー本誌で行った実燃費テストでは一部区間で40.0km/Lを記録した。(編注:ベストカー2020年4月26日号にて燃費テストを実施。市街地、高速、郊外を含む新基準のWLTCモードに準拠したコースで計測した燃費の結果は表のとおり)
このヤリスハイブリッドは、EVシフトの声が大きくなっているなか、内燃機関の可能性、発展性を感じさせてくれた。
GRヤリスは一見ヤリスの3ドアワイドボディ版にも感じてしまうが、「ラリーに代表されるモータースポーツで有利に戦える要素を多数盛り込んだ市販車」というコンセプトで、豊田章男社長肝煎りのもと開発されたピュアなスポーツモデルである。
そんなコンセプトを持つだけにプラットホームはボディ前半こそヤリスにも使われるTNGA-Bながら、ボディ後半は1クラス上のプリウスなどから拝借したTNGA-Cを組み合わせたもの。
パワートレーンは1.5LガソリンNA+FFのCVTと、トヨタとして20年ぶりのスポーツ4WDとなる1.6L、3気筒ターボを搭載。
3ドアボディはモータースポーツで大型リアスポイラーを装着した際により強いダウンフォースが出るよう、後方にいくにしたがってルーフラインが下がるものとなっている。
ボディを構成する素材も軽量化のためボンネット、左右ドア、バックドアはアルミ、ルーフは比較的安価なカーボンを使う。
そんなクルマが、1.6Lターボ+4WDの標準車で約400万円という内容を考えれば激安価格といえるだろう。
筆者はすでに購入し、約2ヵ月が経ち約4000kmを走行。細かな不満はいくつかあるものの、スポーツ性の高さに加え、普段使いもしやすく大満足している。
さらに一時は「取得しない」方向になったホモロゲーション(国際競技に出場するために必要な連続した1年間に2万5000台を生産したという証明)も取得することになり、ホモロゲーションを取得できればラリーを中心としたモータースポーツ参戦ベース車のバリエーション拡充も期待できる。
これだけ夢のあるクルマが販売され、今後純エンジンのスポーツモデルの新型車の登場がいろいろな面で難しいことを考えると、興味ある人はトヨタへの応援も兼ね、ぜひ購入を検討してほしい。時代が変わった、と感じるはずだ。
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