国ごとに操舵力のセッティングを変えることも
EPSの登場によってチューニング代が増えた今、「操舵力特性の味付け」は、各メーカーの開発ドライバーの腕の見せ所となっています。特性を決めるため、開発ドライバーはライバル車に乗って何時間も走り、開発チームと話し合いながら、目標とする特性を決めていきます。
高速道路移動が日常的な欧州、まだまだ未舗装路が多いインド、整備された都会から山奥の道まである中国、など、国によって要件が異なるため、国ごとに操舵力のセッティングを変えることも当然あります。欧州ではよいと感じた操舵力特性が、日本ではよく感じない、といったこともあります。
速度レンジの違いだけでなく、道路のアスファルトの微妙な違いや、路面起伏の大きさ、周囲のクルマの状況など、場所が違えば「理想」も変わってくるためです。
日本市場では、低中速で走行する極良路面が多いため、街中での運転のしやすさを追求した特性が主流(高速走行ももちろん見ている)でしたが、一部区間ではあるものの、高速道路の最高速度120km/hとなったことで、今後の操舵力セッティングには、多少違いが出てくると思われます。
これらEPSのセッティングを変更する作業自体は、とてもカンタンです(PCから制御ロジックを変更すればよい)。しかし、低速から高速まで、操舵力の変化が滑らかにつながるよう、微調整をするのが大変。
「60km/hはOKだけれど、80km/hではもうちょっと重たくしたい、そうするとその上の100km/hも変えたくなる――」といった感じで、セッティングを変えては乗り、変えては乗り、を幾度も繰り返して決められていきます。
車速による操舵感の違いをじっくり味わってみて
EPSの登場当初は、EPSの操舵感について、いろいろな意見が聞かれましたが、EPSの進化により、油圧PSのフィーリングを越える特性や、油圧PSでは出来なかった、レーンキープ制御中のハンドル支援などもできるようになりました。
普段、何気なく操作しているハンドルですが、このハンドルの操舵感には、練りに練った自動車メーカーのこだわりが込められています。いろいろなクルマを乗り比べるのは難しいかもしれませんが、まずはご自身のクルマで、車速による操舵感の違いをじっくり味わってみてください。また違ったクルマの楽しみ方ができるようになるかもしれません。
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