ガソリン逆噴射!!? シートが破れた!?? いま蘇る 中高年カーマニアたちの故障自慢 7選

■お尻の下から温泉噴出? 水蒸気がモックモク(ダイハツデルタワイド)

 人と同じクルマはイヤだ、と考えるクルマ好きは少なくないと思いますが、ワタクシもご多分に漏れず、その一人であります。

 しかし、世界に数台しかないようなスーパーカーを買える立場ではないため、人と違うクルマを選ぶとなると、必然的に誰も見向きもしないような、ヘンテコ車に舵を切るしかありません。

 今回ご紹介するデルタワイドワゴンも、そんな理由でチョイスしたクルマでして、デルタと言えば誰もが、あのラリーウェポンであるランチアを思い浮かべるところ、実はダイハツ車だったという出オチのために購入したといっても過言ではありません。

 一部では「モテないほうのデルタ」とも言われております。

ランチアじゃないデルタこと、ダイハツデルタは1970年にトヨタダイナトラックのOEM車として誕生したモデル。1976年には初代タウンエースのOEM車としてワンボックスタイプのワゴンとバンが登場。ダイハツ初の3列シート乗用車だったため、当時はそれなりに売れたらしい
ランチアじゃないデルタこと、ダイハツデルタは1970年にトヨタダイナトラックのOEM車として誕生したモデル。1976年には初代タウンエースのOEM車としてワンボックスタイプのワゴンとバンが登場。ダイハツ初の3列シート乗用車だったため、当時はそれなりに売れたらしい

 そもそも購入した時からトラブルを抱えており、真っ直ぐ走っているのに、まるでドリフのコントの如くステアリングが遊びまくるという、かなり恐怖のクルマでした。

 お次はエンジンのオイル下がりが発生し、高い負荷をかけると、蒸気機関車のように、マフラーから白煙がもくもくと噴出するようになりました。

 本来であればエンジンを開けての修理となるところですが、残念ながらすでに修理に必要な部品の供給が途絶えており、添加剤を入れて、だましだまし乗っておりました。

 そんな満身創痍のデルタワイドながら、酷使を重ねた結果、最終的に冷却系にまで不具合が発生する羽目になりました。

 ある初夏の日、街中をウロウロしていると、普段はビクともしない水温計が、H方面に向かっているではありませんか。

 そういえばなんだか室内も暑く、湿度も上がっているような……?

 慌てて安全なところに停止させると、シートの下からシュー、ゴボゴボ! と大層な音とともに、温泉みたいに水蒸気が立ち込めてくるではありませんか!

 これは間違いなくラジエターのパンク。エンジンの上に運転席があるデルタワイドゆえ、高温の冷却水でお尻の穴を洗浄しながら、蒸しシューマイ(クーラント風味なので、あんまりおいしくなさそう)になるところでした。

(証人/小鮒康一(フナタン)さん)

●故障驚愕度:70点…キャブオーバー車がオーバーヒートすると、水蒸気が車内に噴出するとは灯台下暗し! これが温泉なら大喜び間違いナシなんだけど

■ホーンを鳴らした瞬間に全電源喪失、エンジン死亡!(マセラティ スパイダー・ザガート)

 あれは20年ほど前。ウチの店(マイクロ・デポ)が開店してまだ4~5年の頃でした。仕入れたばかりのスパイダー・ザガート(1991年式だったかな)のスモールランプを点けたら、エンジンがストンと停止。思えばそれが喜劇の前兆でしたねぇ。

 ビトゥルボに代表されるデ・トマソ時代のマセラティは、故障の帝王とも言われていますが、その多くが電気系から発生します。

 それもこれも品質管理の悪さが根源ですが(笑)、元をたどれば、経営難の零細企業の悲哀そのもの。当時のマセラティは、ライン生産をあきらめて、1台ずつのハンドメイドに逆戻りしていたくらいですからねぇ。

ビトゥルボ・マセラティの美しいエンジンルームの奥の奥、非常に手の届きづらい場所にメインヒューズボックスがあり、そこで無間地獄の如き電気系トラブルが発生する。勝手にライトが点いたり消えたりという心霊現象は序の口、何が起きるかわからないビックリ箱である
ビトゥルボ・マセラティの美しいエンジンルームの奥の奥、非常に手の届きづらい場所にメインヒューズボックスがあり、そこで無間地獄の如き電気系トラブルが発生する。勝手にライトが点いたり消えたりという心霊現象は序の口、何が起きるかわからないビックリ箱である

 それでもマエストロたちは、ワイングラス片手に? 歌を歌いながら楽しくクルマを作っていましたが、そんなクルマを25年間、直して直して故障しないようにして販売し続けているのは、私たちが真正のヘンタイだからかもしれません。

 で、弊社に入庫したスパイダー・ザガートですが、スモールランプ点灯→エンジン停止はすぐに復活したので、移動のため環八に乗り入れました。

  ところが、車線変更のお礼にホーンを「プッ」と鳴らした瞬間に再びエンジン停止! 今度はヒューズボックス内で重大な短絡事故が発生したらしく、全電源を喪失。ウンともスンとも言わなくなりました。

(やっちゃった……)

 ビトゥルボ・マセラティ最大の弱点は、メインヒューズボックスです。品質管理の悪さにより(笑)、形状からして少し歪んでいてしっかり閉まらず水が入ったりする上に、田舎のオバチャンが内職でやったみたいな、いーかげんなハンダ付けで、何をしたらどこがどう飛ぶか、順列組み合わせは無限大。

 新品に交換しても(これまた涙なしには語れないほどタイヘンな作業)、直るとはかぎらない。多発する故障に備えて、1個12万円するメインヒューズボックスを5個イタリアから取り寄せたら、5個とも不良品だったこともありました。

1987年から1993年まで生産された、いかにもマセラティらしい伊達なスパイダー。2.8LのV6ツインターボエンジン搭載
1987年から1993年まで生産された、いかにもマセラティらしい伊達なスパイダー。2.8LのV6ツインターボエンジン搭載

 最終的に弊社では、国産建機用を流用し、ヒューズボックスをワンオフ製作するという高みに到達して、このテの故障をほぼ根絶させることに成功しました!

 ビトゥルボ・マセラティには、「窓は全部開けずに必ず3センチ残せ、そうしないと手で掴んで引っ張り上げられなくなる」という掟がありますが、弊社の扱うクルマは、パワーウィンドウの開閉速度もたぶん世界一(笑)! ピューっと淀みなく動きます。

 それもこれも、数多くの困難に打ち勝ってきたからこその偉業であると自負しております……。

(証人/岡本和久さん『マイクロ・デポ』代表)

●故障驚愕度:120点…マンガでもありえない奇想天外すぎる故障に、ただただ脱帽! いつかこれを超える故障が発生して、世界珍記録の更新に期待しよう!

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