■家族をキーワードに展開される物語
もうひとつ、本作の核になっているのは「家族」の在り方である。前作のふたり、海兵隊のジェイク(サム・ワーシントン)とナヴィ族の族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)は結婚して3人の子どもが生まれ、さらにはグレース(前作でシガーニー・ウィーバーが演じていた植物学者)の忘れ形見である14歳の娘、そして人間が撤退するときにパンドラに残された少年を養子のように育てているという設定だ。
ハーフがいて養子がいてと、このサリー一家もいまどきのアメリカ的家族の縮図になっていて、人間とナヴィ族のハーフになる3人の子どもは海の種族にバカにされるし、人間の少年も彼らと馴染まない。夫婦は夫婦で、バックグラウンドがまるで違うわけだから、あらゆる側面でぶつかり合いと、たくさんの問題を抱えている。
が、それでも、重大な事件、みんなで超えなくてはいけな大きな問題が起きたときには一致団結して、その解決にあらゆる手を尽くす。まさに「家族は最大の弱点であり、最大の強み」であることを描き出しているのだ。
キャメロンはSFというジャンルのもつ強みのひとつ、架空の世界、架空のキャラクター、架空の時代を借りて、私たちが抱える現実を映し出している、その問題に気づかせようとしている。深い、と感じるのは、そのためだ。
上映時間は3時間12分にも及び、前作に引き続き3Dなのだが、目の疲れはなく、スクリーンの暗さも見事に解消されている。ディテールが重要なアクションシーンでも、隅々までちゃんと見えるのが嬉しい。
しかも、この長尺な時間でも足らなかったのかだろうと思わせるほど、その内容は盛りだくさん。だから退屈なんてしている暇はない! というか、ここが本作でもっとも凄いところ。やっぱりキャメロンは、自分で自分を超えて行こうとして、実際に超えてしまう、世界最強の監督なのかもしれない。
●解説●
人間の身体を捨てナヴィ族となった元海兵隊のジェイク・サリーは族長の娘ネイティリと結婚し3人の子どもをもうける。美しい森で幸せに暮らしていた一家だが、そこに再び人間がやって来る。
しかも、そのなかには、ジェイクの海兵隊時代の上司だったクオリッチ大佐がいた。ナヴィ族の姿になっていた彼は、ジェイクに復讐しようとする。
いつの間にかキャメロンのライフワークになったかのような『アバター』シリーズの第2弾。前作から実に13年の歳月が流れているが、実際に撮影に費やした時間は5年間。残りの8年間は技術の開発やパンドラの世界観作りに使い、すでに『アバター5』までの脚本が完成しているという。
これをすべて撮影するととんでもなく時間がかかりそうだが、キャメロンは「準備は出来ているから2年おきに公開するつもり」と自信満々。果たしてその言葉通りにいくかは神のみぞ知る?
キャメロンの共同製作者であるジョン・ランド―は「ジムはパンドラの設定を綿密に創り上げているので、いくらでも物語を作ることは出来る。劇場公開作のほかに『スター・ウォーズ』シリーズのように配信でやる作品を作るのもいいかもしれない」と、配信にも前向き。
このままいけば、『スター・ウォーズ』に続くSFシリーズになる可能性もありそうだ。
ちなみに、前作でナヴィ族の乗り物だった大きな鳥と言うか飛竜のイクランに代わる存在が、大きな魚のイル―なのだが、これがトビウオのようなヒレがあり、水面を走るのだ。
キャメロン自身はそのデザインについて「複葉機仕様のマンタレイ(巨大エイ)に恐竜の長い首とヨーロッパのジェット戦闘機の先尾翼をつけたような感じ」と表現しているが、長年のキャメロン・ファンに言わせると、彼の長編監督デビュー作『殺人魚フライングキラー』(82)のトビウオのよう。
この作品はキャメロンにとって、触れてもらいたくない黒歴史でありトラウマなのだが、ここで似たものを出してきたところをみると、さすがに克服できたのかもと思ってしまった。
なお、この『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、メルセデスの100%電気自動車、メルセデス-EQとタイアップ。東京・六本木のメルセデス・ベンツのブランド情報発信拠点“メルセデス・ミー”で『アバター2』をイメージしたコラボレーション企画を展示している(2022年12月27日まで)。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
12月16日(金)全国劇場にて公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2
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