自動車が最も“旬”なのは発売から間もない時期。最新モデルは、その時点で新しい技術や装備が揃えられ、世間の関心や注目も大きく集まる。
しかし、ユーザー目線に立てば「新しい車かどうか」より「良い車かどうか」が重要だろう。
良い車でありながら、最新車でも旧車でもない第三の選択肢。――「手放すべきではない車」は、いま所有していないユーザーにとっても、長く乗り続けられる良い選択肢のひとつといえるだろう。
文:松田秀士
写真:編集部、HONDA
新車で買える “本格派” フェアレディZ
いまや本当に売れなくなってしまった名車がある。その名はフェアレディZ。筆者にとっては、青春時代イチバン欲しかった車だ。
時代は変わったね、当たり前だけど。スポーツカーに憧れる人は少なくなってしまった。しかし、現行フェアレディZサイズのスポーツカーは、ロードスターなどのライトウェイト系とは一線を画し、シートを含めてラグジュアリーさもプラスされている。
しかも、エンジンはV型6気筒3.7Lで最高出力336psを発生。できれば6速MT車がお勧めで、ヒール&トゥーなどできなくとも、「シンクロレブコントロール」をオンにすれば、車のほうで勝手にエンジン回転を合わせてくれる機構も付く。
そして、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式というサスペンション型式の本当のハンドリングを味わってほしい。
フロントをストラット式とせず、F1マシンと同じダブルウィッシュボーン式を採用。こうすることで、前後のロール軸の変化をデザインすることができるのだ。サスペンションの動きは重心とロール軸とがテコの原理で作用しあっている。
現行のZ34型でショートホイールベースを採用し、機敏なハンドリングを目指しながらしっかりと路面を掴む感覚も持ち合わせている。助手席のパートナーなしで、一人で楽しむのも良い大人のスポーツカーに仕上がっている。
クラウンらしさ光る先代「ロイヤル」
そして、先代クラウンロイヤル。クラウンはユーザー層の若年化を図っていて、いまやとにかくスポーツ嗜好。車としての運動性能は素晴らしい!
しかし、運動性能だけが車の魅力ではないはず……と、レーシングドライバーの筆者はあえて言いたい。速くなくても良いから個性的な車に乗りたい、というニーズに応える魅力的なモデル。例えば、新型ジムニーのハンドリングなどもそれに当てはまる。
そこで、なぜ先代クラウンなのかというと、クラウンの走りの味、質感とは何か? を真剣に開発陣が考えて開発した車なんだよね、先代は。
アスリートは現行路線を突っ走ったけどロイヤルは回帰した。ステアリングスピード(ステアリングを1回転させた時に前輪が切れる速さ)はアスリートよりも遅い。
こちらは共通だが、リアサスペンションアームを“コの字型”(=開断面構造)とすることで、ねじり方向のみの剛性を下げ、振動をそこで吸収。これにより、クラウンらしい乗り心地を目指している。
しかし、走りに振った現行モデルではこの機構は廃止されている。
先代クラウンは平成生まれだけれど、「昭和の歌はいい歌が多いね」と嘆くおじさんたちにとって、今では味わえなくなった歴史観に触れることができる希少な1台なのだ。
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