こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 リッター当たり100馬力! 能ある鷹は爪を隠す スポーツセダン「トルネオユーロR」の矜持

■通なスポーツカーを求めるニーズに最適な選択

 ローダウンサスで車高が15mm下げられ、足もとは専用デザインの16インチアルミホイールで飾り、大型のロアスカートを装着。専用エンブレムを含め、ユーロRとして与えられたエクステリアアイテムはわずかにこれだけ。

 やたらと大きなリアウイングとか、リアビューに威圧感を与えるディフューザーといった類の空力アイテムは備わらず、そのルックスはいかにもスポーツモデル然とした佇まいではなく、少しだけ特別感を増すようなモディファイにとどめている。

 それでもスポーツモデルらしい雰囲気は十分に醸しており、そのうえ専用ボディカラー(ミラノレッド)の設定やエンジンヘッドカバーを赤く塗装するといったユーロRならではの要素が、通なスポーツカーを求める大人のユーザーの琴線に触れた要因だった。

ボディサイズは全長4680mm、全幅1720mm、前高1405mm、ホイールベースは2665mm。専用ローダウンサスペンションの装着で15mmダウンし、最低地上高は140mmに設定された
ボディサイズは全長4680mm、全幅1720mm、前高1405mm、ホイールベースは2665mm。専用ローダウンサスペンションの装着で15mmダウンし、最低地上高は140mmに設定された

 車内は基本的な造形をベース車から継承しながら、レカロ社製バケットシート、MOMO社製革巻ステアリングホイール、アルミ製シフトノブ、ホワイトメーターパネルを専用アイテムとして標準装備。走りの機能を高めるこれらのアイテムは、スポーツドライブを支えるとともに、乗り込むたびに特別なクルマに乗っている気分を味わわせてくれた。

車内はレカロ社製バケットシートやMOMO社製革巻ステアリングホイールといったアイテムが奢られ、スポーツカーとして見た目も機能性もバージョンアップされていた
車内はレカロ社製バケットシートやMOMO社製革巻ステアリングホイールといったアイテムが奢られ、スポーツカーとして見た目も機能性もバージョンアップされていた

 ホンダのスポーツモデルといえば、シビックやNSXに設定されていた「タイプR」が筆頭に挙げられる。これらはホンダスポーツモデルの最上位グレードとして単純な速さを求めた、まさに走りに先鋭化した特殊なクルマである。

 ユーロRは、走りを極めるという点においてはタイプRと同様だが、同じRでも「タイプ」ではなく「ユーロ」としたのは、走りだけに特化せずセダンとしての扱いやすさとスポーツ性の両立をコンセプトに掲げていたからであり、決してタイプRの下位互換などではない。

 現行型シビックタイプRは、スポーツカーとしての速さ楽しさはもちろん、だれもが安心して快適に走り続けられるという二軸を実現し、これこそ「羊の皮を被った狼」だと言われているが、あのスポーツ性を主張しすぎたルックスを“羊”と形容するのは少々違和感を覚える。

 やはり、ユーロRのようにジェントルな佇まいを残しつつ、走り出せば「これはスポーツカーだ」と思わせるような、奥ゆかしさを持っていてこそ真の羊を被った狼なのではないだろうか。そんなクルマが凋落著しいセダンクラスに登場し、ジャンルを活性化させてくれることを切に願う。

【画像ギャラリー】アコードとともにホンダ製セダンの一翼を担ったトルネオのスポーティ版、ユーロRの写真をもっと見る!(7枚)画像ギャラリー

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